猫と切り身と下剋上 8
激しく興奮し威嚇するクロ。
「フシャー! フシャー!」
「へえ、あなたってそんな声してたの。ずっと一緒にいたけど初めて聞いたわ」
「フシャー!」
「なに? わたしとやろうって訳?」
「フシャー!」
鋭い爪を煌めかせて飛び掛かるクロ。
「なめるなよ! 根性腐ったドラ猫風情が!!」
神様はひらりと躱すとクロの首根っこを掴み地面に押さえつけます。
「わたしはあなたの全てを理解した上でここに来た」
神様は興奮が収まらないクロに一枚の写真を見せます。
そこに写っているのは純白色のメス猫。
「あなた、この子に恋をしているわね」
若干の戸惑いを見せるクロ。
「隠したって無駄よ。あなたは何度もこの子をチラ見していた。そしていつしか、負けるところを見られるのが怖くなった。違う?」
神様は大きく空気を吸うと――。
「てめえ、すかしてんじゃねーよ!!」
クロの顔面を思いっきり殴ります。
「そりゃあ、好きな人に負けるところを見られるのは怖いわよ! 恥ずかしくてカッコ悪くてたまんないわよ! 必死に頑張った分だけ尚更ね! でもね、すかした態度で逃げ続けている今のあなたは底辺のクズ以下よ!!」
神様の目から涙が零れます。
「頑張っても負け続けたからって何? 好きな子に醜態を晒したからって何? モテるオスってのはね、常に勝負に対して貪欲なの!!」
そして涙はクロにも伝わります。
「もしあなたが再び勝負に戻るというのなら、わたしは再びあなたを応援する。神であるこのわたしがあなたの全てを肯定する! だから……」
神様はクロを抱きしめます。
「クロ! もうこれ以上自分を否定するな!!」
神様は優しい目で語り掛けます。
「ねえ、クロ……もう一度がんばろう? ね?」
「ニャオーン!! ニャオーン!!」
再び決意に満ちた黒猫は、力強い鳴き声で雄たけびを上げるのでした。




