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猫と切り身と下剋上 5
しばらくの間、毎朝港に赴いては敗北して帰ってくるクロ。
「今日も負けたの? じゃあはい、参加賞の煮干し」
神様はいつも変わらない笑顔で出迎えます。
それはクロが勝負に手を抜かないことを知っているからです。
しかし、ある日を境にクロが港に行くことは無くなりました。
それどころか神様の元へ帰って来ることも無くなってしまったのです。
神様はモニターを確認します。
それはクロが戦いに赴いた記録です。使い魔に撮影させていたのです。
「この日は特に変わった様子はないわね。相変わらず気持ちが良い程の負けっぷり……あら? この日からなんか様子がおかしい」
ある日からクロが手を抜いた走りを始めたのです。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も……。
明らかにわざと最後尾を走っているような走り方です。
「で、この日からはとうとうクロの姿が無い訳か……」
神様は何度も巻き戻しては映像を見返します。
「きっとこの中に答えがあるはず」
どうしてクロが手を抜くようになったのか。
それを探すために……。




