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猫と切り身と下剋上 2
黒猫が元気に走り回れるようになった頃、神様は言いました。
「クロ、いい? 人間の世界には働かざる者食うべからずって言葉があるの。それは猫の世界にだって通ずるわ」
「…………」
クロと名付けられたその猫は黙って聞きます。
「最近、早朝ランニングで見かけたの。港の漁師さんが賄いの余り物を野良猫にあげている光景をね」
そのあまり物とは魚の切り身のことです。
日によって鮪だったり鮭だったり……種類はまちまちですが、どれも野良猫界隈では極上の一品とされる切り身なのです。
「つまり……あなたは明日からそこへ行って、自分が食べる朝ごはんは自力で調達してくること! それが野良猫の定めよ!」
クロは黙ったままコクリと頷きました。




