神様にシュウマイを食べさせたい
央川桜子が神様を訪ねたのはお昼になる少し前の事でした。
「先生、今から私と一緒にシュウマイを食べに行きませんか?」
「シュウマイ?」
首を傾げる神様。
「そう、シュウマイです」
先日、テレビで超特大ジャンボシュウマイを見たという桜子。
どうしても食べたくなって仕方なくなったそうなのです。
「折角のお誘いだけど遠慮する。一人で勝手に食べに行ったらいいじゃない」
でも神様は乗り気ではないようです。
「一人だと食べきれないから先生を誘っているんですよ。とにかく大きいんです。その名もバケツシュウマイ」
「バケツプリンだったら一緒に行ってあげても良かったけど、シュウマイじゃなあ……」
「あら、先生ってシュウマイお嫌いでしたっけ?」
「別に嫌いじゃないけど好きでもない。言っちゃあ悪いけど、わたし今まであ~シュウマイ食いてえなあ……。って思ったこと一度たりとも無いのよね」
やっぱり乗り気ではない神様。
「では良い機会です。是非行きましょう。先生もきっと気に入るはずです」
そして桜子も折れる様子はありません。
「えー、なに桜子ー、あんたいつの間にシュウマイのこと好きになった訳ー?」
神様が探るように言います。
「私だって信じられないんです。まさかこんな寝ても覚めてもシュウマイさんのことしか考えれなくなるなんて……」
頬をを赤く染め、人差し指で床に『の』をいっぱい書く桜子。
「まあ、あなたがそこまで思ってるなら止めはしないけど……。わたしは巻き込まないでよ」
「先生も変な所で頑固ですね」
因みに桜子には他人の確率を操作する能力があります。
なぜこれを使って神様にシュウマイを食べさせないのかと言うと……。
「ああ、それはですね。私はゼロ%の確率は操作できないからなんです」
とのこと。
つまり今の神様がシュウマイを食べたいと思う確率はゼロ%という訳です。
◇ ◇ ◇
次の日。
お昼前に神様を訪ねたのはやっぱり桜子でした。
「先生、今日は良い物を買ってきました」
そう言って差し出したのはケーキの箱です。
「あら、あなた気が利くじゃない。丁度甘いものが食べたかったの」
箱を開ける神様。
中身はシュウマイでした。
「って、シュウマイじゃんこれ!」
神様はムキになって怒ります。
「信じられない! わたしはケーキが食べたかったのに!」
そんな神様に向かって桜子は冷静に言います。
「先生、これはただのシュウマイじゃないんですよ」
「まさかお金取るの? 賽銭箱に3円しか入ってない幼気な神からお金を取ろうって言うの?」
「そういう意味ではありませんよ。これはお菓子のシュウマイなんです。はい、あーん……」
桜子は中身のシュウマイをひょいとつまむと、神様の口へ入れました。
「ああ! 桜子ちゃん、何を……!?」
神様は驚愕します。
「やだ、これおいしい」
「そっくりスイーツっていうらしいですよ、これ」
桜子も一つ摘まんで自身の口へ放ります。
「ねえ桜子ちゃん。もう一個もらっても良い?」
「どうぞ。先生がシュウマイを好きになってくれて何よりです」
「何言ってるの? わたしはこのケーキを気に入ったのであって、あくまでシュウマイは好きでも嫌いでもどっちでもないんだからね」
「はいはい」
口いっぱいにスイーツを頬張る神様の姿に、桜子は思わず微笑むのでした。




