【番外編】桜子さんは負け知らず 後編
あれからずっと眠り続ける青年。
幸いにも電車が急ブレーキを掛けたことで即死は免れたものの……私が能力を使ったことによる犠牲者だ。
あの時、私が彼に引かせたカードはこうだ。
『少年を突き飛ばす。少年は無傷で助かる。自分は電車に跳ねられ眠り続ける。3週間後、美少女にキスをされたら目覚める』
そう……美少女にキスをされたら目覚める!!
「そして3週間後の今、美少女こと央川桜子がここにやって来ました!」
もう、美少女だなんて照れちゃうぜー、まったくー。
え? いつもとキャラが違うって?
チッチッチ。分析が甘いですね。コンデンスミルク増し増し苺よりも甘ちゃんですよ。
人とは常に多面性の生き物。表面だけが全てとは限らないのだよ!
さて、話を戻しましょう。
よく見たら彼、童顔で結構可愛い顔しているのよね。
年上男子に童顔で可愛いって言うのも失礼かもしれないけれど、とにかく私好みというのもこれまた事実。
私が彼にキスをして、目覚めたら物怖じしない態度でこう言うの。
「ふふ、まるで白雪姫の逆バージョンですね」
キャー! 思わず言っちゃった!
まだキスもしてないのに気が早いって私―!!
先生には悪いけど、今後も主役の座は私が頂くわ。
さらにこのままラブコメ路線に変更よ!
「ごくり……」
ではではさっそくいきますか。
「美少女こと央川桜子! いっきまーす!!」
彼の唇に私の唇をゆっくり近づける……。
その時――。
扉がガラガラっと開いた。
「あ! 桜子お姉さん来てたんだ。こんにちは」
「リコちゃん!?」
彼女はリコちゃん。彼の妹で過度のブラコン気質な所がある。
でもそれは特に問題ない。誤差の範囲だ。
私はすでに彼女のカードを見透かし、彼が目覚めたら私と彼の仲を取り持つというカードをいつでも引かせることが出来るのだから。
「どうしたの? なんか慌てた感じで……あ、もしかしてお兄ちゃん目覚めたの?」
「いえ、目覚めるかなーって思ったけど勘違いだった」
「あ! そうだ。今日はわたし、とっておきの秘策を考えてきたんだ!」
リコちゃんはそう言うと……。
「ちゅ!」
あろうことか彼の頬にキスをした。
「な! なんてことしているのリコちゃん!?」
私が思わず取り乱していると。
「……ん? あれ? リコ? どうしたんだ?」
あろうことか妹のキスで目覚める兄。
「あ! お兄ちゃん目が覚めた! やったー!!」
喜ぶ妹。
私はおもむろに病院を出ると……すぐさま大きく息を吸い込んだ。
そして……。
「妹のチューで目覚めてんじゃねーよこのシスコン野郎ーーーー!!」
私は生まれて初めて、運命に負けたような気がした。




