【番外編】桜子さんは負け知らず 前編
私、央川桜子は病室にいる。
と言っても私自身は至って健康だ。
今日はある人物のお見舞いに来た。
「今日はいよいよあなたが目覚める日ですよ」
ずっと寝たきりで目覚めない青年に話しかける。
彼は私のせいでこうなった。
それは3週間前の事だ――。
登校中、私はクラスメイトと踏切の前で遮断機が上がるのを待っていた。
「相変わらずここの踏切は長いよね。桜子ー、もう渡っちゃわない? 冗談だけどさ」
「死にたいならどうぞ。骨は拾ってあげるから」
私は冷静に返答する。
「だから冗談だって」
一応クラスメイトのカードを覗き込む。
彼女が手に掛けた運命の選択肢を……。
選択肢A 『遮断機が上がるまで絶対に渡らない』
選択肢B 『遮断機が上がるまで待ち続ける』
選択肢C 『遮断機が上がってから渡る』
どのカードも同じことが書かれていた。
そして表の結果も全て同じである。
私は安心した。
ふと、横をランドセルを背負った少年が通り過ぎていくのが見えた。
気付いたら少年は遮断機を潜って踏切の中にいた。
特急電車が猛スピードでやって来る。
踏切内の少年の姿が見えたのか、電車は急ブレーキをかけ始める。
向かってくる電車を見て腰を抜かす少年。
私には見える。
少年がカードに手を掛けているのが……。死神のカードが……。
「キャー!!」
周囲にいた人が悲鳴をあげる。
私は咄嗟に周囲にあり得る全てのカードを見透かした。
それは何千枚あっただろう。
でも形振り構ってはいられない。
ベターで良い……もうこの際、誰も死ななきゃそれでいい。
時間が無い、そのカードを探すんだ。
誰も死なない未来を導く運命のカードを……。
「…………あった!!」
私は近くにいた青年にカードを引かせた。
青年はすぐさま踏み切内に飛び込むと、少年を突き飛ばし……
代わりに跳ねられた――。




