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 異世界アルヴェキラ。


 魔物と呼ばれる異形が跋扈し、人々は魔法という異能で対抗して互いに生存を懸けて日々を競う異質なる世界。


 しかし近年拮抗する魔物と人間の情勢を覆す魔物が突如として出現した。


 魔物の中から魔王を呼称する強大な力を持つ存在が現れて人間勢を劣勢に陥れた。


 これに危機感を抱いた人間勢は、古より伝わる異界渡りの秘術「勇者召喚の儀」を執り行った。


 そうして異界から召喚されたのが「オレ」だった。


 しかし自分で言うのもなんだが、超美少女だ。


 確かに美少女だ。ヤバイくらいに綺麗だ。オレの面影をバッチリ残しつつもな。


 視線で人を殺すとか噂されていた鋭い眼光もそのままに。


 何故オレの気にしている目付きの悪さそのままにした。


 あと何故かこのデカ過ぎる胸。ま、まあ爆乳好きだが?大好きだが?でも自分に備え付けられるとめちゃくちゃ大変さが理解出来た。ありがとうございます。大変勉強になりました。


 だけど何故、「男」のオレが「女」として召喚されたのか異世界の住人にも判らないらしい。


 過去にも古い伝記には異世界より勇者が召喚された記録はあったが、詳しいことは記されていない。


 だが魔王を倒せば役目を終え、元の世界に帰れるらしく、元の身体に戻るだろうと曖昧なことしか判らなかかった。


 オレは仕方なく勇者としての役目を全うするべく魔王を倒すために旅に出るしかなかった。


 幸い異世界に召喚されたときにチートスキルを授かって魔法を自在に使えて剣の腕も一流だった。


 元男だったが今の女の身の上を案じ、何人かの仲間でパーティを組まされた。


 気難しい真面目眼鏡イケメン聖職者。


 ワイルドな頼れる兄貴肌のイケメン戦士。


 クールでニヒルなぶっきらぼうイケメン魔法使い。


 ちょっと待て。


 全員男なんだが?イケメン過ぎるんだが?パーティで女(元男)はオレひとりだけなんだが?


 どこの乙女ゲーかな?イケメンは爆発四散すればいい。


 というかこの世界何処を見ても美男美女ばかりだ。


 一般のモブな人々もそこそこイケてるのは、デフォなのか?


 逆に魔物は普通にクリーチャーテイストなグロテスクなやつらばっかりだった。


 こうしてオレたちは魔物を討伐しながら魔王を討ち果たすべく旅を続けた。


 途中で案の定オレが女だからか、ラッキースケベなイベントが起き、イケメンどもの好感度を遺憾ながら上げながら。


 新たな仲間の女誑しなイケメン盗賊に貞操を四六時中狙われて仲間関係がギスギスして仲裁に四苦八苦し、お約束な触手魔物に拘束されて痴態を披露し、魔王の幹部を名乗るイケメン魔族に拉致され辱めを受けて洗脳されかかり危機一髪救出されたり、オレの精神ポイントをガリガリ削りまくるイベントが盛り沢山だった。


 だけどもそんなクソッタレなイベントの中でも癒し系イベントもあった。


 旅の途中で訪れた魔物に占領されかかったある小国を救った時に、九歳ぐらいのショタッ子王子様がとても印象に残った。


 サラサラ金髪、蒼い瞳、健気で素直でオレを実の姉のように慕ってくれた。


 オレはひとりっ子だったから弟が出来たようで日々のクソイベの所為もあってかその男の子を可愛がりまくった。


 街の復興を手伝ったり、剣の修行や魔法の訓練をしたり、一緒に風呂に入って洗いっこもした。


 真っ赤な顔して俯いてカチコチ(意味深)になっていたのは、なんかオレの琴線に触れそうだった。


 今にして思えば女体化していたから悪ノリしていたのだろう。うん。そうに違いない。


 そんな弟みたいな小さな王子様にある時、驚愕する言葉を告げられた。


「貴女が好きです。僕と結婚してください」


 これには流石にオレも驚いた。


 旅の最中この手の告白は女体化したオレに数え切れないほど野郎どもに嫌ってほど浴びせられた。


 だけどこれくらいの歳の男の子には初めてだった。


 下半身一直線なクソ野郎どもの邪な気持ちが一切ない純真な素直な感情にオレの心は心底潤された。


 オレが身も心も本当に本物の女性だったら彼の気持ちを受け止めただろう。


 だけどもオレは男だ。


 それに魔王を倒せばこの世界とはお別れだ。


 男の身体に戻るし、もうこの世界には来れないだろう。


 勇者召喚の儀は同じ人物を再召喚した例は無いらしい。


 だから彼とはもう二度と逢えないだろう。


 オレは小さながら一国をこれから統べる将来の国王様の目線に屈み、緊張と気恥ずかしさと精一杯の誠意を込めて告白してくれた大きな愛らしい意志が強そうな瞳の彼に返事をする。


「貴方が大きくなって、まだ私のことを好いてくれていたら、いいですよ」


 優しく微笑んで。


 そしてオレたちは再び旅立ち、遂に魔王を倒し、オレは異世界から無事帰還したのだ。


 元の世界に、元の日常に、元の身体に戻って。













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