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1.5話 「天然な友人」

「昨日は散々だったな。」


学校に、向かって歩きながら昨日の出来事を思い出す。

結局あの後、路地裏を探し回ったが見つからず、最初にカバンを置いた場所に戻ると見事俺のカバンは置きっぱなしになっていた。


高光の天然っぷりには飽き飽きした。

正直あそこまでとは、、、。


「そういえば俺の知り合いにもあんな奴がいたな。」


俺がまだ「ダジル」として魔王を倒すために日々奮闘していた頃。

行きつけの酒場にゼッパーという青年がいた。


ゼッパーは俺と一つ違いで実家の酒場を手伝っている。高光同様、天然な部分があるやつだ。

よく酒を溢して親父に怒られていた。


年が近いせいもあって、俺とゼッパーは幼少期から仲が良い。

一時期は一緒に冒険しようと誘ったが、街に一つしかない実家の酒場を継がなければいけないため断られた。


だが、酒場にはよく顔を出していたためあまり寂しくはなかった。

むしろ酒場に行くためにクエストを頑張っていたと思う。


今更ながらあいつの天然っぷりは高光といい勝負である。

あれは俺がまだ駆け出しの冒険者だった頃、一度だけゼッパーと二人でクエストに行った時がある。


クエストの内容はある動物の卵を運ぶというものであった。

初心者が最初にぶつかる壁と言っても過言ではない。


しかし、二人でやれば成功率は格段に上がると聞いたので、冒険の仲間がいない俺はゼッパーに頼み込んでついてきてもらった。


「晴れてよかったな~。」

「そうだな、雲もないし今日は一日中晴れるだろう。」


ある日、目的の卵を探すために森に入った俺たちはさっそくその卵を産む動物の群れを見つけた。

巣の場所がわからなかったため群れについていき数時間してやっと巣を見つけることができた。


「おい、あまり音を立てるなよ。」


俺は口に手を当てゼッパーに音を立てないよう注意をする。

そもそも声をかけたのが間違いだった。


ゼッパーは酒場で働いていたせいか返事は大きい声でしろといつも叱られていたため、つい条件反射で、


「わかった!」


と叫んでしまった。

その声に気づいた動物たちは卵を守るために一斉に俺たちに向かって走ってきた。


「くそっ!逃げるぞ!」

「わりぃ!ついいつもの癖で。」


装備が不十分で戦うには少し無茶だと感じた俺はとりあえず逃げることにした。

このままではすぐにやられてしまう。


俺はゼッパーがちゃんとついて来れているか後ろを振り返る。

するとそこにゼッパーの姿はなかった。


「おい!ゼッパー!!どこだ!」


辺りを見渡してもゼッパーの姿は見当たらない。

すると上の方から声が聞こえた。


「お~い!ダジル~!」

「お前は何をしてるんだよ!!」


ゼッパーが登っている木にはいくつかの実がなっていた。


「これさ!つまみにいたら人気でそうじゃないか!!」

「今はそれどころじゃない!はやく逃げるぞ!!」


俺は今までにない大声を出してゼッパーに呼びかける。

しかし、ゼッパーはそれを拒む。


「だめだ!降りられない!」

「はあ!?逆にどうやって登ったんだよ!」


木の下にはすでに何匹か動物が集まっており、ゼッパーが落ちるのを待っている。

俺のスタミナも尽き始めそうでこのままだと二人とも全滅だ。


「やるしかないな、、、。」


俺は走るのを止めて追ってくる動物たちの方に体を向ける。

そして剣を抜く。


「ゼッパー!そのままじっとしてろよ!」

「お前、勝てるのか!?」


俺が無理やり連れてきたんだ。ゼッパーに怪我なんかさせたらもう酒場に顔を出せない。

一か八かやってみるしかない。


そのあとは無我夢中で剣を振るいまくった。




どれくらいの時間が経っただろうか。

やっと全部を倒した時には俺はボロボロになっていた。


「お、おい、大丈夫か?俺のせいで無茶させちまったな。」

「い、いや、元々は俺が頼んだんだ。とりあえず無事でよかった。」


卵は持って帰れなかったが、ゼッパーが採った果実は新種のもので俺らはそれで得た報酬でその晩は二人で飲み明かした。

もちろんまだ酒は飲めなかったのでジュースではあったが。




「おはようーっ!」

「お、高光か。おはよう。」

「なんか考えことでもしてた?」


高光は俺の顔を覗き込んで口を丸める。


「いや、ちょっと昔のことを思い出してな。」

「そっかー、そういえば今日もよろしくお願いします!」

「昨日も見せただろ。」


高光はすぐに笑って今度は手を合わせて祈るように俺に頭を下げる。


「ほら。昨日はあのあと気持ち悪くてすぐ寝ちゃたんだよ。お願い!」

「しょうがないな。教室についてからな。」

「ありがとーっ!」


そんなに嬉しいのか。

両手を挙げて喜ぶのを見て俺もつい笑ってしまう。


「お前は勝手にどこかに行くなよ。」

「ん?行かないよ。拓斗じゃないんだから!」

「それもそうだな、、、。」


この状況だとあいつからしたら俺がどっかに行ったことになるな。


ああ、今頃何をしているんだろうな。

俺が帰ってこなくて心配してないだろうか。

またいつかお前と飲み合えるが来るといいな。



空はあの日と同じで雲一つない晴天である。

まだまだ俺の高校生としての生活は続きそうだ。









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