4話 「ステルス」 ③
「違うっていったい何のことだ、、、。」
司の放った言葉は俺も胸を貫いた。
頭の中は言い訳を考えることでいっぱいだった。
もしここでばれてしまったら俺はどうすれば。
焦っている俺をよそに司は笑った。
「そりゃただの高校生が不審者をどうにかしようとなんて思わないだろ?それにあの時お前が俺に言ってくれたこともなんか変に大人びていたしな。」
「ああ、そういうことか。」
思っていたほどのことではなかったと知り、俺は胸をなでおろす。
しかし、いつまでも隠し通せるのは難しい。
いつかは俺の秘密を話す日が来るのだろうか。
その時、司や高光は俺を受け入れてくれるのだろうか。
いや、今はそんなことを考えている暇はない。
不審者を捕まえることを最優先に行動しなければ。
それでもし秘密がバレてしまってもそん時はそん時だ。
言い訳せず素直に全てを打ち明けよう。
「拓斗、急に渋い顔してどうした?」
「い、いや何でもない。とりあえず帰って詳しい話はまたあとでしよう。」
こうして俺たちは昨日よりも早めに学校をあとにし、家路についた。
今日も町は静かで事件のにおいは一切しなかった。
そして家に着いた俺は司から電話がかかってくるのを待っていた。
一応司に話しておくこともあるがどうにかして俺一人で行動できるように説得しなくては。
やはり今考えても司を巻き込むことはできない。
あんな状態じゃ素直に聞いてくれるかどうか怪しいが。
プルルルルッ。
「もしもし、ああ司か。もう家には着いたのか?」
「うん、それでこれからどうするんだ。今は外に出るのも難しいし、そもそも不審者がどんな奴かも知らないんだろ?」
そういわれると司の言う通りだ。
学校も休みになり子供だけで外に出るのは難しい。
ましてや犯行時刻も不審者の特徴も知らない。
これでは捕まえるどころか見つけることも厳しい。
「やっぱりバレないように外に出て調べるしかないよな。調査は俺一人でするから司は家でじっとしてろよ。」
「なっ、結局俺は仲間外れかよ。」
「そうじゃないさ。司はもしかしたらの時の秘密兵器ってことさ。」
「なるほど、秘密兵器か。悪くない響きだ。」
あれ?意外とちょろいぞ。
よくよく考えると高光と張り合ってる時点でこいつも天然なのか。
まあ、勉強ができるだけ司の方が何倍もマシか。
とりあえずこれで司に危険が及ぶこともないだろう。
「でも拓斗は大丈夫なのか?もし一回でもバレたりでもしたらもう一度外に出るのは難しくないか。」
「それに関しては問題ないよ。俺にはとっておきの作戦があるからな。」
そう、俺は元勇者。
それにあっちで得たものは全て受け継いでいる。
俺には「ステルス」のスキルがある。
これを使えばこの世界の人間が気づくことはないだろう。
「それならいいんだが。気をつけろよ。」
「ああ、ありがとう。」
俺は電話を切り、外へ出る準備を始めた。
親が帰ってくるにはまだ時間はある。
いくら外の人間にバレなかったからと言って俺が家にいないことを知られてしまったら元も子もない。
両親が帰ってくる前にある程度調べておかなくては、、、。
そして俺はこの町に出没している不審者を捕まえるために外へ出た。