3.5話 「一生の相棒」
「あーあ、誰かさんのせいで花火見られなかったなー。」
「だからごめんって。」
今日は前に祭りに行った三人で高光が買ってきた手持ち花火で遊んでいる。
俺は二人が遊んでいるのを見て、それを真似するように花火に火をつける。
「大体、高校生にもなって手持ち花火とか、、、。」
「なんだよ、俺が買ってきたのに文句言うなよ。」
そう言い合いをしながらも二人は楽しんでいる。
そして花火はあっという間になくなり最後の一種類になってしまった。
「よし!やっぱり最後は線香花火だよな!誰が一番長く続くか勝負な!」
「お前ってほんと勝負が好きだな。」
三人で一斉に火をつける。
花火は徐々に光を放ち、玉は大きくなる。
「やっと終わった、、、。」
今日もクエストを終え、報酬をもらうために集会場へ向かう。
まだ簡単なクエストしかできないが着実に資金はたまっている。
初めて買った剣はすでに刃がボロボロになっており、今にも崩れそうになっている。
今日まで節約のために武器は初期ので我慢していたがそろそろ変えないと敵を倒すのに時間がかかってしまう。
「はい。今日の報酬でーす。」
「ありがとうございます。」
俺は報酬を受け取り、所持金を確認する。
今使っているのよりも2、3ランク上の武器が買えるほど持っていた。
「まあ、貯金はたくさんあるから全部使っちゃおうかな。」
俺は武器屋に入り、自分が使っている剣と似たようなものを探した。
しかし、どれも高いのばかりで手が出せない。
「なあ、これより安くできないか?」
「残念だけどうちもギリギリでね、それ以上は値引きできないよ。」
武器屋に断られてしまい、諦めて店を出ようとすると、
「君、武器が欲しいんだろ?そういえば最近、新しいクエストで武器が手に入るやつがあったような。」
「ほ、ほんとか?それはどういうクエストなんだ!?」
俺はすぐに踵を返し武器屋に詰め寄る。
武器屋は少し驚いたのか数歩後ろに下がる。
「確か、イベントみたいなものだから戦いではないよ。森の中にいくつか宝箱があるからそれを一つ選ぶだけ。中にはSランクの武器もあるらしい。参加費は高いがやってみるといい。」
「なるほど、ありがとう!明日行ってみるよ!」
そして次の日、俺はさっそくそのクエストを受けに行った。
そして参加費の額に俺はすかさず財布の中を見る。
まさかの所持金だけでは足りず、俺は貯金していたお金も参加費に充て、クエストに参加した。
Sランクの武器でさえ確率が低いのに、俺が使っているのと同じ種類の武器となると天文学的数字になる。
俺は悩んでても意味はないと思い、直感で宝箱を持ち、街に戻った。
そして冒険者が集まっている中心で俺は宝箱を開いた。
その瞬間、宝箱からは光が漏れ、中に入っている武器を手にすると、あまりにもしっくりきたためそのまま上に持ち上げた。
すると周りからはどよめきがあがった。
「お、おい。あれって、、、。」
「SSSランクの剣じゃねえか!」
え、なになに。
俺何を手に入れたの?
「このクエストで手に入れられる武器ってSランクまでじゃないのか?」
「いや、確か一つだけSSSが混じってるって聞いたぞ。だから今回の参加費はあんなに高いんだよ。」
どうやら俺は相当やばいものを手に入れたらしい。
そしてこの時手に入れた武器は魔王との戦いまで相棒として活躍することになるのを俺はまだ知らない。
「あー。また拓斗の勝ちかよ。」
「お前ほんとに運がいいな。」
二人は怪しそうに俺の顔を覗く。
「別にいかさまなんかしてないからな。」
「わかってるよ。」
全ての花火を使い終わり、片付けを終え俺らは各々の自宅に向かって歩き始める。
何歩か歩いたところで高光がこちらに向かって、
「じゃあ、また明日な~!」
と大声で叫ぶ。
「近所迷惑だろ!そんな大声出さなくても聞こえるわ!」
司が高光に注意をする。
お前も十分でかいぞ。
「二人ともまたな。」
俺は小さくつぶやいた。
今日も楽しい一日が終わる。
そしてこのあと近所のおじさんに俺ら三人が怒られることをまだ誰も知らない。