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2.5話 「一人目の仲間」

あの出来事から俺と菅原は仲良くなり、休日に遊ぶようになった。

今日は河原で高光も一緒にキャッチボールをしている。


「おーい。山本、ちゃんととれよー。」

「無理無理!司の球速くて取れねーよ!」


菅原の球を取り損ねた高光は後ろに飛んで行った球を追いかける。

俺は横で見ているだけだが。


「お前、休日も野球なんて飽きないのか。」

「こんなので飽きてたらとっくにやめてるよ。」

「それもそうだな。」


高光が球を拾い、こちらに向かって投げる。


「お前っ!どこに投げてるんだよ!それにちょー遅いし。」

「しょうがないだろー!俺野球は苦手なんだよ!」


「ほら、木下も投げろよ。」

「え、いいよ別に。」


菅原は俺に球を渡す。

しょうがない。一回だけ投げるか。


「手加減してくれよー。」

「ああ、行くぞー。」


俺は高光に向かって球を投げる。


「あっ。やば。」

「おい!お前山本よりノーコンかよっ!」


俺が投げた球は高光の頭上のはるか上に飛んで行った。


あいつにいつも魔法の精度を高めろと言っていたが俺も人のこと言えないな、、、。




俺が冒険を始めて半年が経った頃、そろそろ遠距離攻撃の仲間が欲しいと思い、魔法を使えるやつを探すことにした。

そこで魔法を得意とするやつらが多く住む街に行くと、俺よりも年下の一人の少年が声をかけてきた。


「ねえねえ!あんた、冒険者だろっ!俺を仲間にしてくれよ!!」

「なんだお前、見るからに俺より年下だろ。その年で魔法が使えるのか?」


少年は不機嫌に俺の顔を睨む。

生意気なガキだ、、、。


「当たり前だろ。なんたって俺は天才だからな!」

「なるほど、それは悪いことを言ったな。」


そこに少年と同じくらいの年のやつが数人でこちらを見ていた。

そして一人のガタイの良い子供が笑いながら、


「そんなやつが天才だって~?火の玉もまともにつくれないくせに嘘をつくなよ!」

「なんだと~!俺をばかにしやがって!」


はあ、なんで俺はこんな奴らを相手にしなきゃいけないんだ。

とりあえず無視して今日泊まる宿でも探そう、、。



俺は少年たちが言い争っている間にその場から離れた。

夜になり宿屋で夕食を食べていると、昼間の少年が現れた。


「やっとみつけたぞ!」

「なんだ嘘つき少年か、、、。」


そういうと少年は顔を真っ赤にして叫ぶ。


「う、嘘じゃない!今はまだへたくそでもすぐにこの街一番の魔法使いになってやる!」

「あっそ。じゃあ、ガキは今すぐおうちに帰りな。」


「なあ、お願いだから仲間に入れてくれよ!!」

「はあ、わかったよ、話ぐらいは聞いてやる。」


あまりのしつこさに俺は少年の話を聞くことにした。

少年は席に座り話し始める。


「俺の名前はカルダ。魔法使いに憧がれてこの街に来たんだ。」

「来たってお前の親は魔法使いではないのか?」


「う、うん。父さんと母さんはただの商人さ。でもおじいちゃんが昔すごい魔法使いで今はおじいちゃんが住んでいた家に一人で暮らしてる。」

「両親はそれを許したのか?それに生活費はどうしてる。」


「最初は反対してたけど今は黙認って感じかな。生活費も自分で働いて稼いでる。」

「なるほど。覚悟だけは一人前ってことか。」


カルダは少しムッと顔をしかめるが、テーブルに頭をつけて俺に懇願する。


「だからお願い!はやく一人前の魔法使いになるために俺は冒険をしたいんだ!でも今の俺じゃあ一人で冒険に行くことはできない。仲間に入れてくれ!」

「事情はわかった。とりあえずお前の実力を見たい。話はそれからだ。」


カルダは頭を勢いよくあげて笑う。

年相応の顔だな、、、。


「本当か!やった!」

「じゃあ、近くの森に行くぞ。」


こうして俺らは被害がでないように森の中へ行き、カルダの魔法を見ることにした。


カルダは呪文を唱え、火の玉を出す。

火の玉は木の実くらいの大きさですぐ下に落ちてしまった。


「お前。よくこれで魔法使いになろうと思ったな。さすがにここまでとは思わなかったぞ。」

「う、うるさいなっ!今のはたまたまだよ!もう一回やるからちゃんと見ろよ!」


もう一度呪文を唱えるが結果は同じだった。

帰るか、、、。俺は森をあとにしようと歩こうとすると、


「待ってくれ!俺、このまま馬鹿にされ続けるのは嫌なんだ!みんなを見返したいんだよ!」


さすがにかわいそうになった俺は一週間の猶予をあげた。それまでに火の玉が顔の大きさまでにならないと仲間にしないという条件をだして。


その間、だめだった時のことを考えて俺は他の魔法使いを探し、ある程度候補を絞ったところで約束の一週間が経った。

俺は前と同じ場所にカルダを呼び、魔法を唱えるように指示する。


心なしかカルダは余裕そうな顔をしている。

これは期待できるかもな。


「ちゃんと見ておけよ!これが俺の本当の実力だー!」


カルダ呪文を唱えると一週間前までは木の実ほどの大きさだった火の玉が顔どころか家一戸分の大きさにまでなっていた。


「おいおい。嘘だろ、、、。今までに見てきた魔法使いの誰よりも力が強いんじゃないか。」

「だろっ!これで仲間にしてくれるよな!」


「まあ、威力は申し分ないが攻撃は当てられなきゃ意味ないからな。その火の玉をあそこの岩に当ててみろ。」

「そんなの簡単だよ。こんだけ大きければ外すわけないって!」


カルダはその大きな火の玉を思いっきり前に飛ばした。

しかし、その火の玉は岩のはるか上に行き、少し遠くの木に当たる。


すぐに火は燃え移りたちまち辺りは火の海になる。


「おい!なにやってるんだよ!とりあえず逃げるぞ!」


カルダの方を向くとうつ伏せになって倒れていた。


「大丈夫か!?」

「今ので力を使い果たしちゃった、、、。」


はあ、そりゃあれだけの魔力を使えばそうなるさ。

俺はカルダを抱えて森から無事に逃げだすことができた。



こうしてカルダは俺にとって一人目の冒険仲間となり、共に旅をすることになった。




「お前、どこまで投げてるんだよ、、、。」

「悪い、悪い。力の入れ方を間違えた。」

「拓斗も実は野球苦手だったんだな。」


千里眼のおかげで球はすぐ見つかったが思ったよりも遠くに飛んで行ってしまった。

俺らは帰りにコンビニに寄り、高光とは先に別れて菅原と二人で帰っていた。


「じゃあ、俺こっちだから。」

「ああ。今日はありがとな。あのさ、俺ら下の名前で呼び合わね?」


菅原は頬をかきながら俺を見る。

俺はクスっと笑いうなずく。


「じゃ、また学校でな司。」

「おう、またな、拓斗。」


司の顔は夕日に照らされていたせいか赤く染まっていた。



















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