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第7話(クズな報酬と欲しい報酬)

 俺が馬車に戻ると、勇者様達御一行が月を見ながらアホ面を晒していた。俺は何事もなかったかのように荷台に乗り込むと、質素な椅子に横になって寝る。下手に喋ると碌な事にならなそうだからだ。疲れていた俺はそのままンゴゴゴゴゴッッッ!と地を揺るがすような鼾を立てながら寝る。

 しばらくすると我に返って、金髪イケメンが荷台に上がってくる。


「あれは、どういう事だと思う?」

「ンゴゴゴゴゴッッ!」


「あんな天変地異が急に起こるとは考えづらい。またキミが何かしたのではないか?」

「ンゴゴヌルペッチョキュリキュキュイボゲルゲチョンッッ!!」


「いや、何言っているかわからないから」

「ンゴゴンゴゴンンゴゴメラッチョゴゴンゴンゴゴッッッ!!」


 ウルサイやつだな。俺が鼾で寝ている事をアピールしているのに、無視して話しかけてきやがる。まぁ面倒くさいから無視して狸寝入りを決め込むけど。

 そんな事を続けてると、やっと諦めたのか自分達の椅子に座ると馬車が動き始める。もうかなり遅くなったので、最寄の宿で1泊しながら俺らは王都に戻るのだった。


 王都に戻ると俺は大目的を果たすために冒険者ギルドへ掛け戻り、許可も得ずにギルドマスタの部屋を蹴り開ける。


「さぁ!獣人娘専門出会い系サロンに行こう!今すぐに行こう!!」

 俺は最大限の笑みを浮かべながら、部屋で何事かと固まっている片目マッチョに話しかける。片目マッチョは俺の姿を見るなり頭を押さえて、ウンウン唸り始める。何か怒りそうな雰囲気を感じる。俺の後ろではギルドマスターの部屋の扉の蝶番(ちょうつがい)が一部外れてプランプランしているけど、こんなことで怒るはずもない。なぜなら俺は魔王討伐の一番の功労者だからだ!


「普通に入ってこんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 部屋を揺るがすような大音量で怒られた。あまりの大きな声に吃驚(びっくり)する。このクソ片目マッチョ、吃驚心臓発作を起こしたらどうしてくれるんだ!!


「よし、それはいいから。早く行こう!!」

 俺はぶれない漢なので、この程度の大音量での叱咤など物の数に入らないのだ。片目マッチョの怒りを完全に無視して話を進めようとするのだが、コイツ首を縦に振りやがらねぇ。


「まずは王への報告が先だ。報酬をもらえんぞ?」

「よし報告に行くぞ!!」

 片目マッチョが片目マッチョの癖に建設的な提案をしてきたので0.2秒で許諾する。即決即断も俺の数多い美点の一つだ。片目マッチョは凄く疲れた表情で辛気臭く立ち上がると俺についてくる。俺はウキウキな気分で王城への道を急ぐ。


 王城への道はごった返していて……何かそればっかだな。まぁ月に星砕き(メテオストライク)していたら不安にもなるか。王城の門へ住民が詰め掛けて不安な事をアピールしている。またもや入場規制だよコレ。とか思っていると片目マッチョが別の小道を歩いていく。そっちは違う方向じゃないかと思ったが、面倒くさいので仕方なく付いて行く。

 小道の突き当りには扉があり、片目マッチョがその扉をコンコンと叩くと壁の向こうから声がする。

「神秘の連峰といえば?」

「おっぱい」

「よし!」

 おい、ちょっと待てお前ら!今すぐそこに直れ!!何がよし!だ。最悪な合言葉を聞かされた俺は、つい片目マッチョに目突きを食らわして無目マッチョにするところだった。

 合言葉はともかく無事に入場できた俺と片目マッチョはそのまま謁見の間に向かい、すんなり王様の前に案内される。


「依頼、やってきた。報酬、くれ」

「もう少し何とかならんのか、その態度」

 片目マッチョがいちいち文句を言う。俺の態度よりお前のマッチョの方が失礼だと思うがな!!

「魔王城の様子に関しては、後ほど報告はもらうとするのじゃが、まずはそなたへの報酬じゃな。そうじゃな先の魔王討伐の功績も踏まえて、爵位と領地を進呈しよう」

 椅子にはまった王様が戯けた事を言ってくる

「いらない。爵位なんてもらったら面倒事がついてまわるからそんなクズ報酬お断りだ。くれるならそこそこ広い屋敷とメイドさんと国王のお墨付きをくれ。当然屋敷の維持費とメイドさんの雇用費はそっち持ちで」

 国王の褒美発言を無視して自分のもらいたいものを要求する。

「わかった。金一封の他に、広い屋敷セットを進呈しよう。で国王のお墨付きとは何じゃ?」

「物を買うにも、どこか出かけるにも、国王の認定証みたいのがあれば、かなり自由にできるからありがたい」

「ふむ。じゃぁ、国印が刻まれている短剣を授けよう。何かあった時、その短剣の柄の紋章を見せれば、融通してくれるじゃろうて」

 とんとん拍子に話が進み、俺はそこそこ広い屋敷とメイドさん一式と国王のお墨付きをもらうことが出来た。隣で片目マッチョが俺の傍若無人振りをみてビクンビクンと痙攣していて気持ち悪いんだが。


 そうして俺は応接間に案内されると、いつも通りのでかい態度でソファーに腰掛ける。しばらくすると、切れ長眼鏡のメイドさんが書類を持って現れる。


「こちらが王家の短剣。こちらが屋敷の委譲書になりますので、下の方にサインをお願いします。面倒な手続きは全てこちらでやっておきますので、サインだけで結構です」

 凄いできる秘書風の雰囲気を十二分に醸し出しているメイドさんの、その態度と冷たい眼差しで俺はノックアウトされそうになる。短剣を受け取り言われたとおり書類にサラサラとサインをして書類を返すと、クルクルと書類を丸めて手に持つ。そして「引渡しは7日後になると思いますので、7日後にまた王宮にいらしてください」とクールに告げると、部屋を後にした。


 王宮での用事が終わった俺は片目マッチョをせかすように、「獣人娘専門出会い系サロン」と連呼するのであった。


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