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ŪNDER WΦRLD  作者: 赤神裕
Scene 10:ENDER WΦRLD ―終焉の世界―
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Episode 73:小さくて強くてあたたかい光

みなさんおはこんにちばんわ

第73話になります


それでは続きをお楽しみください!!

 カオスが男の子を取り込もうとしたその時、傍らで何かが光った。その光はとても小さかった。小さかったが辺りを照らすには十分すぎる光だった。


「何故ダ! 諦メた方が楽ニなレルというノに。闇を渡セば良いダけナノニ、何故お前はソコまでシテみンなヲ守ろウトするんダ!」


 男の子は動かなかった。ファイは左手を離して光に向かって黒い光線を放つ。光を包み込み消そうとする。だが、その光は消えなかった。


 次いでマクロンが右手を突き出して黒い光線を放つ。光は黒い光線に包まれ消え去ったかのように見えた。


 しかし、その光は黒い光線の中で輝き続けた。小さかったが力強い光だった。カオスは発狂したように黒い光線を放ち続けている。


「黙レ! 人間ナンカ嫌イダ、大人ナンカ嫌イダ、皆嫌イダ、全部全部大嫌イダ!」


 カオスは次から次へと黒い光線を放ち続けた。


「痛い」


「苦シイ」


「止めロ」


「ボクハ……」


「わたしは……」


 カオスの身体から様々な声が漏れた。カオスは男の子を手放して、大きく開けていた口を塞いで頭を掻き毟った。掻き毟っては黒い光線を放ち続けていた。


 もうメチャクチャだった。放った光線は混沌の空間に消えていく。一つとして光に当たっていなかった。先にファイが膝から崩れ落ちる。マクロンはあらぬ方向に光線を放ちまくっている。ファイは両膝を地について涙を流した。


「な、何だこれは……。わたしが、泣いている……?」


 ファイは顔を覆った。絶えず溢れてくる涙。ファイは理解ができなかった。何故泣いているのか理解できなかった。ファイの胸が締め付けられていた。


「全テヲ破壊シ、全テヲ再生スル……。ボクガ……。ヤッテヤル!!」


 マクロンは光に向かって黒い光線を放つ。外れる。また放つ。外れる。光に直撃してもその光は輝きを失わない。ずっと輝き続けてそこに浮遊している。


「消エロ、キエロ、キエロオォォォォォ!」


 マクロンは狙いも定めず手当たり次第に黒い光線を放つ。ファイはその姿を見て先ほどよりも胸が締め付けられた。涙が止まらない。


 マクロンは男の子に黒い光線を放とうと手を向けた。その途端、ファイの心が動いた。いつの間にか男の子とマクロンの間に入って両手を広げていた。マクロンが吃驚する。ファイは男の子を守ろうとしているように見えた。マクロンが手をファイに向ける。ファイもまた手をマクロンに向けた。


「ナゼダ……。ナゼカバウ?」


「解らない」


 マクロンとファイが話をしている。その間も絶えず苦悩に満ちた声が両者の身体から聞こえている。マクロンが手を下げた。


「ドうシて、こンなニ悲しイの。ドうシてこンなニ苦しイの?」


 カオスは男の子に問うた。もう動かなくなってしまった男の子に問うた。当然答えるはずもない。カオスは嘆いた。それはオオカミの悲しみに満ちた遠吠えのようだった。


「わたしは、ただ、人間と化物が仲良くなって欲しいだけだった。なのに、人間は化物を拒絶した。わたしは悲しい」


「ボクハ約束シタンダ。化物ヲ迫害シナイデ欲シイッテ。ナノニ、人間ハ裏切ッテ天災ヲ化物ノセイニシタ。ボクハ憎イ」


 ファイとマクロンが言った。カオスは男の子を見ている。


「戦ワナイ勇気……カ」


 マクロンが呟くと身体から器が落ちた。それは村の引っ込み思案な男の子だった。


「希望を持っているんだね……」


 ファイが呟くと身体から器が落ちた。それは村の元気な女の子だった。


「ドンナ者ニモ変ワラナイ優シサ……カ」


 マクロンが呟くと身体から器が落ちた。それは村の優しい男の子だった。


「何度でも立ち上がるんだ……」


 ファイが呟くと身体から器が落ちた。それは村のやんちゃな男の子だった。


「人間ト化物……」


「どちらも愛しているんだね……」


 マクロンとファイが呟くとそれぞれの身体から上半身と下半身の器が落ちた。それは徐々にくっついていき、一つの形を成す。その姿は村一番弟のことを愛している男性だった。


 混沌の空間が薄くなっていく。小さくなった光が辺りを漂っていた。カオスは黙ってそれを見つめている。


 光はふわりと男の子の上に飛んでくると男の子の身体に入っていった。男の子の身体が光る。その光が広がった。あたたかく周辺に広がる。それはまるで春の息吹のように闇を吸い取られた化物たちを目覚めさせ、男の子の周りに自然と集まるように誘導した。


 ルフェルが、アストロが、ドリウスが、ロヴェが、山の頂上にいた。カオスの姿を見てただならぬ雰囲気を感じ取って構える。


 一方でカオスは構えなかった。ただただお互いに手を取り合って俯いていた。カオスはこうなることが解っていたのだ。もう自分は殺されても構わない。カオスはそう思っていた。


「やめて、マトハは悪い人じゃないの!」


 男の子が叫んでいた。怪我も治り、しっかりと地に足をついて叫んでいた。外れていた左肩もすっかり元通りになっている。その声に皆は構えを解いた。誰一匹としてカオスに敵意を示す者はいなかった。


 カオスは驚いていた。まさか男の子がカオス自身に向けられた敵意を一瞬で収めてしまうとは思いもしなかったからだ。


「ナンデ……」


「殺さないの……?」


 カオスが男の子の方を向いて問うた。すると男の子は首を横に振ってずいずいと前に出る。お互いに取り合った手の上に男の子が手を重ね、にっこりと微笑んだ。


「みんなは、なかよしなの。ケンカしても、怒っていても、捕まえにきても、それでもなかよしなの。だから、えっと……。だからね。仲直り!!」


 男の子は無邪気に笑った。カオスがお互いの顔を見合わせる。男の子からは光を感じた。小さい身体で、小さい手だが、しかし大きな光を感じた。太陽に近いような、いいや、もっと大きくて明るい『あたたかい光』だ。その光はカオスの心をも穏やかにした。


「ボクハ、わたしは、間違っテいタ。ゼロス王が正しカった。何よリ、君が正シかっタ」


 カオスは暫らく俯いて、男の子の後ろにいる皆の顔を見渡した。そして男の子を見る。ずっとにこにこと笑っていた。つられて笑顔になる。ファイもマクロンも、笑顔になる。その顔はとても穏やかな笑顔だった。

読了お疲れ様でした。

いかがでしたでしょうか。


男の子は諦めなかった。

その小さくて強くてあたたかい光はカオスの心をも動かした。

だが――

続きは74話で!!


それではまた次回お会いしましょう!!

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