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ŪNDER WΦRLD  作者: 赤神裕
Scene 09:Despair ―絶望―
76/85

Episode 69:お兄ちゃんとの再会

みなさん、おはこんにちばんわ

第69話になります


それでは続きをお楽しみください!!

 ようやくお兄ちゃんに会える。男の子がそう思った時だった。


「うぐっ!?」


 突然大きな唸り声が響き渡る。男の子を囲んでいたアストロもドリウスもロヴェも、フレウ解放のために部屋から出ようとしていた騎士も、その後ろに続こうとしていたルフェルも、影に隠れていたアルバも。その場にいる皆が声の方向を見た。


 そこには腹部を鋭利なもので刺され、血を流し、片膝を突く王の姿があった。


「王様ァ! おのれェ! 誰がやったのだァァァ!」


 騎士団総長が叫ぶと王が開け放った扉の向こうから声が聞こえた。


「……甘い。甘すぎる。ダメだダメだ。ダメダメだ。それではダメだ……」


 そこに立っていたのは白黒ボーダーのセーターを着た男の子そっくりの人間の子供とお兄ちゃんだった。お兄ちゃんは俯いたまま笑っている。男の子はそちらに走り出そうとしたがその腕を掴まれる。ルフェルだった。


 男の子は拒んだが、ルフェルは手を離そうとしなかった。白黒ボーダーのセーターを着た人間の子供が手にナタを持って歩いてくる。


「マトハ!」


 ドリウスは叫んだ。その声を聞いて白黒ボーダーのセーターを着た人間の子供はにやりと唇の端を引き上げて笑った。


「マトハ……。そう呼ばれていた時期もあった気がするよ。でも、今は違う」


 白黒ボーダーのセーターを着た人間の子供が笑いながら言う。その声にルフェルは聞き覚えがあった。


「その声、アンタまさか……王の側近の奴か!」


 ルフェルが問うと白黒ボーダーのセーターを着た人間の子供は更に笑った。


「アハハ。側近を演じていた。の方が正しいかな。ぼくはね。オビリオンに辿りついた最初の人間マトハであり、最後の化物カオスだよ」


 カオスは笑っている。大きなナタを一振り、風が巻き起こる。その風に騎士たちは吹き飛んだ。アストロは後ろを振り返る。


「アハハ。安心してよ。君たちを狙ったんじゃないからさ。ぼくはずっと待っていたんだよ。器ができて、デドロが生まれて、全てが破壊される。それを発動するキッカケをね」


 カオスが笑いながら言った。王がカオスの方を横目で見ながら口を開く。


「戻ってきたのでは、無かったのか」


 カオスは王の質問に大笑いした。


「戻るわけないじゃん。だってぼくは自由になったんだよ。人間と化物の両方を手に入れたからね。まだ少し馴染んでいないけどさ。でも、もう十分に動けるんだ。何だってできる」


 王はそれを聞いて背筋が凍るような感覚に捕らわれた。流れ出る血を片手で押さえながら首を横に振って力いっぱい声を出す。


「そなたも、望んでいたではないか。理想郷計画を。人間の器を作ることで我々は人間として暮らすことができると、化物と人間が共存できる国を作るのだと……」


 突然カオスが笑うのを止めた。


「いいや。ぼくは初めから人間と共存するつもりはないよ。理想郷計画を持ちかけたのは器を作るため。この器に入るのは人間を心から嫌うぼくの仲間だよ。人間界に侵攻するためにね」


「なん……だと!?」


 王は目を見開いた。


「精神と肉体を分離させる必要があったのは器を作るためでもあるけど、同時に人間の闇をデドロとして召喚するため。十分なデドロが集まったら人間界へ送るだけ。あとはデドロが勝手に終末喰滅を起こし、人間界は破壊される」


 カオスはニヤリと笑いナタを高々と掲げた。息を大きく吸い込んで、はく。気持ちよさそうに吸い込んでまたはくと、彼は続けた。


「そしてね。破壊された人間界に、ぼくと、ぼくに選ばれた器だけが住めるの。それが、ぼくの望む理想郷。誰も邪魔は入らない。邪魔する者は斬り捨てちゃう。ぼくだけの特別な場所。人間は、ぼく一人でいい。他には要らない。そんな夢と希望が詰まった場所だよ」


 カオスは言い終わると、片膝をついて肩で息をしている状態の王を得意げに見下ろした。王が口を開く。


「何故だ。何故そなたは人間界を破壊するのだ……。そなたも、元々人間ではないか!」


 カオスがその言葉に反応する。カオスはナタを振り上げて王の横腹を掻き切った。王が唸る。相当深く抉られたのか王はもう喋れる状況ではなかった。


「ぼくを人間なんかと一緒にするなあぁぁ!」


 カオスが叫ぶ。空気が震えてミシミシと部屋が音を立てている。屋根が崩れて落ちてきた。ルフェルが思わず手を離してしまった。男の子はその場に倒れこむ。ルフェルが手を伸ばそうとした。だが、男の子とルフェルたちの間に瓦礫が落ち、男の子はルフェルたちと分断されてしまった。


 ルフェルたちが男の子を心配して口々に叫んでいる。瓦礫を崩す音が聞こえる。男の子は瓦礫の方を見て絶望の前に突っ立っていた。カオスが笑う。その声に男の子が振り向くと、相変わらずお兄ちゃんはカオスの横でにやりと笑いながら立っていた。


「お兄ちゃん!」


 男の子が駆け寄る。カオスは右手を突き出した。男の子が何かにぶつかり尻餅をつく。透明な板のようなものが目の前にあるようだ。カオスが笑う。


「お兄ちゃんも相当な闇を抱えているみたいだよ。お前に対する恨み、呆れ、妬み、悲しみもある……。ハハハハ。これだけ強い闇があれば終末喰滅を早まらせるかもね。ほら、あの山の天辺にある黒いの。何だか解る?」


 男の子は崩れた屋根から空を見上げた。城のすぐ後ろの山の頂で黒いものが渦巻いていた。どす黒い気味の悪いものだった。黒いものは無数の小さなもので構成されていた。一つ一つの小さな黒いものが動いていたのだ。


 瓦礫の向こうから皆の苦しむ声が聞こえた。男の子は瓦礫ごしに何があったのか問いかけた。だが、聞こえるのはただ苦しむ唸り声。


「始まったんだよ。デドロの暴走がね。人間たちには闇が宿ると言われてきたけれどね。人間だけじゃないんだよ。化物たちにも闇が宿るんだ。その闇が、あの山に集まったデドロに共鳴しているのさ。終末喰滅の時は近い。お前がその起爆剤になるんだ」


 カオスはそう言うと男の子に右手を向けて黒い光線を放った。光線は男の子を包むと球体になり宙に浮いた。カオスもその隣にいたお兄ちゃんもふわりと浮くと球体と共に山の方へ飛んでいった。その球体の中で男の子は気を失っていた。

読了お疲れ様でした

いかがでしたでしょうか


お兄ちゃんとの再会で感動のフィナーレ……とはなりません

男の子の冒険はまだまだ続きます。

ここから先は勇気のある人だけが読み進めて行ってください。

ようこそ、Dルート《Despair Route》へ……。


それではまた次回お会いできることを心よりお待ちしております。

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