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ŪNDER WΦRLD  作者: 赤神裕
Scene 09:Despair ―絶望―
68/85

Episode 61:おかえりとただいま

みなさんおはこんにちばんわ


第61話となります

それでは続きをお楽しみください。

 男の子は言われたとおり扉を出てすぐ右手にある階段を上っていた。パタパタと走る音がする。その音は上から聞こえた。誰かがいるようだ。男の子が慎重に階段を上って行くと話し声が聞こえた。聞いたことのある声だ。


「それではお願いしんす」


 アルバの声だった。男の子は出て行こうか迷った。アルバは悪い化物ではない気がしていた。だが、正体が解らない。男の子は階段の影に隠れてこっそりとその様子を見た。階段の影から覗こうとする。


「何をしていんす?」


 アルバがニッコリと微笑みながら男の子を見ていた。男の子は吃驚して階段から転げ落ちそうになる。アルバは焦って男の子を受け止めた。


「そそっかしいでありんすね。大丈夫でありんすか?」


「ありがとう……」


 男の子がもじもじしながら言うと、アルバは特に気にする様子もなくその頭を撫でた。マトハの行方を問うとアルバは表情を曇らせた。居るにはいるらしいが、とても合える状況ではないという。


「……?」


 アルバは何かに気付いて首をかしげた後、顔をしかめた。


「イルバに逢ったでありんすか。わっちの父でありんす。マトハさんのことを頼まれたでありんしょう?」


 アルバはイルバに逢ったことを見抜いた。男の子から発せられる熱で解るそうだ。アルバが苦笑する。そして男の子の頭を撫でた。


「ムリはしないでくんなまし」


 男の子は首を横に振った。


「ううん、だいじょうぶ。ぼくが助けるって約束したから」


 アルバはため息をついた。男の子に微笑みかけて顔を近づける。そのまま頬にキスをした。アルバは頬を赤らめていた。


「主の勇気、ちゃんと伝わりんした。わっちらではどうにもなりんせん。見守っていんす」


 アルバはそう言ってぎゅっと男の子を抱きしめるとどこかへ行ってしまった。男の子はぼーっとしていた。何が起きたのかさっぱり解らなかった。目の前に誰かの姿が見えてハッとする。黒ローブだった。さっきアルバと話していたのはこの黒ローブだった。


「お前さん、随分と気に入られたみたいだな。で、どうするんだ?」


 黒ローブが問いかける。男の子が口を開いた。


「ぼくを殺すの?」


 真直ぐ黒ローブを見て問う。男の子は俯かなかった。突然の質問に黙る黒ローブ。そして笑い出した。男の子は黒ローブの顔を見た。真剣な表情で真っ直ぐ、黒ローブの顔を見た。ちょっと恐怖をしているが決心を固めている顔だった。


「暫く見ないうちに成長したな。俺はお前さんを殺しはしないさ。後片付けが面倒くさい」


 男の子はパッと笑顔になり黒ローブに抱きつく。黒ローブは男の子の頭を撫でた。とても懐かしい感じがした。男の子は顔を黒ローブに埋めた。少し困ったように笑う声。


「ちょっとは手加減してくれよ。せっかくの新しいローブがしわくちゃになっちまう」


 黒ローブがそういうと男の子は慌てて顔を離した。


「ごめんね、アストロ……」


 黒ローブは、アストロは笑う。男の子をギュッと抱きしめた。男の子は吃驚していた。ローブがしわくちゃになるとか言っておきながら、自分から抱きしめてきたからだ。


「俺の方こそ、すまなかった。怖い思いをさせてしまったよな。お前さんがどこかへ行ってしまう。そんな気がして焦っていた。つまり……」


 アストロは上手く言うことができなかった。こういうのは苦手だった。でも、男の子はそんなことは気にしていない様子で微笑んだ。


「ただいま。それと、おかえり。アストロ!」


「……あぁ、そうだな。おかえり。それから、ただいま」


 アストロは相変わらず硬くて冷たかったがとてもあたたかかった。男の子はそんな彼に抱きしめられてとても心地が良かった。幸せだった。


 アストロが思う存分抱きしめた後、男の子の目を見て真剣な口調で話し始めた。


「これから王に会いに行く。その意味は理解できているね?」


 男の子はこくりと頷いた。


「面倒なことは早く終わらせてお前さんのお兄さんを助けよう」


「お兄ちゃんだけじゃないよ。ドリウスもルフェルお姉ちゃんも、みんなも助けるの」


 男の子はハッキリと言った。もう迷いはない。男の子はすでに決心している。アストロは笑って頭を撫でる。男の子は嬉しそうにした。


 ふと廊下の先から騎士団が向かってくるのが見えた。男の子が指を差して声を上げると、アストロは男の子を階段の方へ優しくトンと押す。


「全く。せっかくちゃんと話ができると思ったのに、空気の読めない奴らだ。ここは俺が抑える。お前さんは早くお兄さんの元に行ってやれ」


 アストロは笑うと光の槍を出現させ、そこから放たれた青い光線を騎士団に浴びせた。騎士団は来た道を引き返す。そこに容赦なく浴びせられる青い光線。アストロは最高の気分だった。


「クカカカ。お前さんたち恐怖しているな! お前さんたちには俺がどう見えている!」


 恐ろしい悪魔だった。だが、優しい悪魔だった。男の子はそんな悪魔の後姿を目の奥に焼付けて、階段を上っていった。ドリウスを救うために。ルフェルを救うために。マトハを救うために。お兄ちゃんを救うために。みんなを救うために……。

読了お疲れ様です。

いかがでしたでしょうか。


アストロとの再会を果たした男の子は遂に王の間へ!!

男の子はお兄ちゃんを見つけることはできるのか!!

続きは62話で!!


それではまた次回お会いしましょう!!

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