Episode 51:その姿は勇者パーティ
みなさん、おはこんにちばんわ
第51話になります
続きをお楽しみください!!
ドリウスがレイラのベッドの横で男の子と一緒に様子を見ていたときだ。ドリウスはレイラの手を握っていた。レイラは目を開けてドリウスの方を見てニッコリと微笑む。
「お主だったか。わしの手を握っていてくれたのは……」
レイラは目に涙を溜めていた。レイラは鼻をクスンクスンと鳴らしていた。ドリウスがレイラの頭を撫でる。レイラは涙を拭い上半身を起こした。
「わしは、弱かった。全く歯が立たんかった。わしが弱かったから、レフォル兄を、皆を危険に晒すことになてしまったのじゃ……」
レイラが俯く。ドリウスは撫でる手を止めレイラの手を再度握った。
「弱かったならこれから強くなればいいじゃないか。オレ様が稽古をつけてやるぞ!」
ドリウスは得意げに言った。レイラは唖然としてドリウスの顔をジトッと睨みつける。
「お主につけてもらう稽古なぞないわ。どうなるか解らんからの」
「な、何だと!」
レイラが言うとドリウスは子供のように地団太を踏んだ。レイラがくすりと笑う。
「しかし、お主の暖かな想いは十分伝わったからの。ありがとう!」
レイラは微笑んで飛びつき、尻尾をブンブンと振りながらドリウスの顔面をぺろぺろと舐めた。ドリウスは何が起こったのか全く理解できずされるがままレイラとその場に倒れこんだ。
「な、何してるんだっ! ちょっとくすぐったいぞ!」
レイラがハッとする。周りの化物たちが笑っていた。レイラは赤面して両手で顔を覆う。そして上半身を起こしたドリウスをドンと片手で押して上から退いた。
「うぎゃああああ頭がぁぁぁぁ!」
押されたドリウスは後頭部を地面に打ち付け唸った。その顔はレイラの唾液でベトベトになっていた。それを見てルフェルが不機嫌そうな顔をする。レイラは両手で顔を覆ったまま笑っていたが、すぐに咳払いをして腰に手を当てた。
「な、何でもない。ともかく、皆心配かけてすまぬ……」
フォラスがコクリと頷いた。レフォルが近づきレイラの頭を撫でる。レイラは申し訳なさそうに尻尾とともにシュンと俯いた。
「……大丈夫、気にすることないよ」
レフォルは小さな声で優しく言った。男の子が城の方を見ている。ドリウスが男の子の肩をポンと叩いて頷いた。
「オレ様のやることは終わった。そろそろ行くか!」
ドリウスがそう言うと男の子は頷いた。決心を胸に抱き、力強く頷いた。医療団とシャラボラたちはルタナスとダリオンを心配し、全員ここに残るようだ。城に向かって歩みだすのは男の子とドリウス、そしてルフェルだ。
別れを告げるとレイラは少し寂しそうな顔をしていた。ドリウスは右手の親指を立ててグッと拳を握った。
「あの子がいない……」
男の子が辺りをキョロキョロと見渡した。ドリウスもルフェルも周りを見渡した。何を探しているのかは解っているが見当たらなかった。ルフェルが男の子の頭を撫でる。
「今はお兄さんのことに集中しな。やっと見つけた手がかりなんだろう?」
男の子は頷いた。首飾りを自分の首にかけて、テステ・ペルテを見た。先ほどと変わることなく、テステ・ペルテは黒いものに覆われていた。男の子は身震いしたが、前へ進む決心は揺るがなかった。
「行こ!」
男の子はそう言って歩き出す。その右斜め後ろをドリウスが赤いケープをたなびかせて歩いていく。男の子の左斜め後ろには長い髪を風にそよがせたルフェルが歩いていく。その姿はまるで3人パーティの勇者一行。勇ましく凛々しく強く。3人はそれぞれの思いを抱いて歩いていく。
しばらく道なりに歩いて行くとようやくテステ・ペルテの入口にたどり着いた。湖からここまでは意外と遠かった。男の子の脚は今までの冒険の事もあり棒になりかけていたが、男の子自身は全く気にしていなかった。いや、気にしていないというよりも決心がそれを上回っていたために感じていないのかもしれない。
「デドロが道を塞いでいるが、どうするのだ?」
ドリウスは顔をしかめてルフェルに問う。
「アタシに言うんじゃないよ。どうするかはこの子が決める。アタシはこの子の意見を尊重するよ」
ルフェルは男の子の頭を撫でて言った。男の子は頷いて塞がれた入口を見る。デドロが結合して黒い膜が張っていた。男の子がその膜に触れると反発するようにその場で突っ張っていた。男の子が負けじと強く押していくと、まるでゴムのように内側へと窪んでいったが、中に入ることは許されなかった。
「どいて!」
男の子が叫ぶ。その声を聞いてデドロが一斉に男の子へと注目した。男の子はたじろいた。だが、ここで止まっているわけにはいかない。
「お、おまえ、なかま?」
デドロが男の子に問う。男の子は首を横に振った。
「な、なかまじゃない。と、通れない。通さない」
「お城に行くの。だから、どいて」
「お城……。し、しらない。どけない。どかない」
デドロは絶対に通すまいとしていた。男の子はムスッとして無理やり中に入ろうとした。だが、ゴムのように弾力のある膜は男の子を弾いてしまう。ドリウスがランスを構えて押し通ろうとした。
「ドリウス、ダメ。傷つけちゃダメだよ」
「一体どうするのだ。入れなければどうすることもできないぞ」
男の子が止めるとドリウスは難しい顔をして、どうしたら良いのか男の子に問う。これに対して男の子は少し考える。男の子も男の子で何か良い案があるわけではない。ただ、相手がデドロであっても傷つけることだけはしたくなかったのだ。
「はぁ、じれったいねぇ。アンタたち、早く退きな。アタシたちはこの先に用があるんだよ。でも、アンタたちがこのまま町を呑み込んじまったままじゃ行きたくても行けないじゃないか」
ルフェルが足をパタパタさせてデドロに言った。デドロたちは顔を見合わせて首を傾げている。男の子は補足するように言葉を続ける。
「お兄ちゃんがあのお城にいるの。行かなきゃいけないの。お願い、どいて!」
「ここ、ご、ご飯いっぱい。お気に入り。と、通さない!」
デドロたちはそう言うとウニウニと集まっていき姿を変えた。黒く巨大な騎士が立ちふさがる。ルフェルはその姿を見て驚きを隠せなかった。
「く、黒騎士……。こいつら、王の姿を真似てるよ!」
その姿はルフェルが拘束されていた時のモニタに映っていた王と瓜二つだった。その黒騎士の後ろから騎士たちが走ってくる。テステ・ペルテにて命を落としたパトロール兵や遊撃部隊の騎士たちだった。皆デドロに蝕まれているようで、身体からはどす黒い煙が立ち上っている。
「こうなったらもう戦うしかないね。危ないからアンタは下がりな!」
ルフェルは短剣を構えて男の子を守るように前へ出た。ドリウスは男の子を守るために手を引いて後ろへ下がった。
読了お疲れ様です
いかがでしたでしょうか。
大きな決心をした男の子はドリウス、ルフェルと共に城へ向かおうとする。
だが、その前にテステ・ペルテをどうにかしなければならない。
入口はデドロによって塞がれているようだが…
続きは52話で!!
それではまた次回お会いしましょう!!