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ŪNDER WΦRLD  作者: 赤神裕
Scene 06:Φmen ―前兆―
54/85

Episode 47:お兄ちゃんの手がかり

みなさん、おはこんにちばんわ

第47話になります


続きをお楽しみください!!

 男の子は黒い塊を地面に降ろし、首飾りをシャラボラから受け取って抱きしめた。そして荷車の後を追う。


 だが、荷車はどんどん遠ざかっていく。男の子は走ることを止めない。それでも荷車はどんどん遠ざかっていった。


 突き出た石に躓き前のめりにずっこける。顔面を強打して鼻から血が出た。男の子は鼻を押さえて泣いた。膝もすりむいた。腕も地面に打ちつけた。全ての痛さが男の子に涙を流させた。


 シャラボラが男の子を支えて心配する。後ろからフォラスが走ってきた。手には薄緑色の液体が入ったビンを持っていた。


「大丈夫ですか。こちらに見せて下さい」


 男の子は首を横に振り荷車の方を指差した。走っていく荷車が遠くの方に見える。もう追いつけそうもない。フォラスが薄緑色の液体をガーゼにつけて男の子の鼻をつまんだ。男の子が首を横に振ってそれを払おうとする。


「まずは止血しないといけません」


 そう言ってフォラスは再度男の子の鼻をつまんだ。


「うー……」


 男の子がムスッとして唸った。シャラボラは男の子がしてくれたように頭を撫でた。


 フォラスは男の子の鼻にガーゼを当てて押さえるようシャラボラに指示すると、もう一つガーゼを取り出し薄緑色の液体をつけてすりむいた膝に当てた。それが沁みたのか男の子は足をばたつかせ手で触れようとする。


「傷口を触ってはいけませんよ」


 フォラスはそう言うと男の子の手を押さえ込んだ。男の子がふえぇと情けない声をあげる。


 暫くして男の子の鼻血が止まった。シャラボラは手を離して男の子が拾ったものについて尋ねると男の子は俯いた。


「これ、お兄ちゃんのなの……。お兄ちゃん、連れて行かれちゃった……」


 男の子は涙を流した。シャラボラが頭を撫でる。そして支えながら皆がいるところへ連れて行く。皆は男の子を察してか言葉を発しなかった。イポだけは違った。


「ヘッ、情けねぇ。男なら泣くじゃねぇってんだ」


 男の子以外の全員がイポを睨みつける。


「んだよ! ったりめーのこと言っただけじゃねぇか」


 イポはそっぽを向いた。シャラボラは男の子を気にかけて男の子を抱きしめた。それでも男の子の涙は一向に止まらなかった。どんどん溢れてくる。胸が苦しくて涙が止まらなくて疲れが限界まで達していた。身体が重い。


 今までの冒険は男の子にとって過酷なものだった。休む暇など殆どなかった。男の子を疲弊させるのには十二分かそれ以上の過酷さだった。お腹も減っている。瞼が重くなる。男の子は涙を流して泣きながらクラクラする頭を振り城の方を見た。


 テステ・ペルテを抜けて暫く坂を上れば城へたどり着ける。だが、テステ・ペルテは危険な状態だ。荷車を追って大きく迂回していくしかない。それに男の子はもう走れなかった。走る元気どころか立ち上がる勇気もなかった。腰から地面にぺたんと崩れる。


 ふとイアノスが作ってくれた、たまごサンドがあることを思い出した。ショルダーバックを開けてみるとそこには、形が崩れケチャップは飛び出してパンに染み込み、たまごはスクランブルエッグよりもグチャグチャで、ボロボロになってはいるが辛うじて包みからはみ出ていない、()()()()()()()()()()()が入っていた。


 男の子はそれを見て肩を落とし泣いた。衝撃を与えすぎたせいで見た目はかなり不味そうだった。たまごサンドを見てもう一つ、イアノスから貰ったものを思い出す。男の子はポケットに手を突っ込むと黄色いパズルのピースのようなものが入っていた。所々が折れてしまっている。


 イアノスは心を示すピースで、離れていても私と坊やは繋がっていると言っていた。イアノスを思い出し、お母さんを思い出す。また涙を流す。男の子は泣きながらたまごサンドの包みを開けて一口かじった。完全に冷めきっていた。それでも男の子は一口、また一口とかじる。


 レフォルがローブの袖口から赤い実を取り出して男の子に差し出したが、男の子は俯きながらゆっくりと首を横に振った。俯いたまま黙々とたまごサンドをかじっていた。黒い塊が不思議そうに男の子を見ている。


「……たべる?」


 男の子が問うと黒い塊は嬉しそうに歯を鳴らした。男の子は一欠片ちぎって黒い塊のほうへ差し出したが食べようとしない。男の子は大きい方を差し出した。だが黒い塊は頭を横に振り食べなかった。


 黒い塊はニュッと腕を伸ばして男の子からたまごサンドを取ると器用に小さくちぎって男の子の口元へと運んだ。男の子が吃驚して黒い塊を見る。食べろと言っているかのように歯をカチリと鳴らした。


 男の子は目の前に出されたたまごサンドの欠片を食べた。少し元気が出てきた。そんな気がした。男の子は無理をしつつぎこちなく黒い塊に微笑みかける。


 黒い塊は右斜め下を向いてショボンとした。男の子の気持ちを読み取っているようだった。何とか励まそうとしているようにも見えた。黒い塊がまたたまごサンドをちぎって渡そうとすると男の子がふらりと横に倒れた。


「えぇ!? ちょっと! どうしたのさ」


 シャラボラが吃驚して男の子を抱きかかえユラユラとゆすった。起きる様子はない。シャラボラが黒い塊を睨んで口を開いた。


「まさかコイツが!」


 その声に黒い塊に向かって構えだす面々。黒い塊がガルルと唸った。戦闘態勢に入っているようだ。レフォルが男の子の脈を取り頭に触れた。少し熱かった。レフォルはすぐにローブの袖口からタオルと透明の液体が入ったビンを取り出してその液体をタオルにかけた。


 シュオッ!


 音と煙を立ててタオルが固まる。そのタオルはひんやりとしていた。凍っているようだ。そのタオルを男の子の頭に乗せて口を開いた。


「……大丈夫。熱はあったけど気を失っているだけ」


 レフォルがボソリと呟くとブルエが男の子の方を見る。別段苦しそうにしているわけでもなく男の子はスゥスゥと寝息を立てていた。


「疲れただけですかな?」


 フォラスは構えを解き、黒い塊の方を見据えた。襲ってこないと理解したのかカチリと歯を鳴らすと手に持ったたまごサンドをジッと見つめていた。だが、やはり眺めるだけで食べる様子はなかった。

読了お疲れ様でした。

いかがでしたでしょうか。


馬面が落としていったものはお兄ちゃんの首飾りでした。

やっと手掛かりを見つけた男の子ですが、溜まった疲労は男の子の体力を確実に奪っていました。

倒れた男の子を心配そうに気遣う仲間たち。

これで男の子の冒険は終わってしまうのでしょうか……。

続きは48話で……。


それではまた次回お会いしましょう!

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