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第九話

「サマナンが逃亡しただと? ヤツは王城の牢獄にいたはずだろ?」


リーヴィス様の言った事を信じられないのか、ハルト王子が食って掛かった。


「ああ、間違いなく地下牢に収監されていた…… が、どうやら外部からの手引きがあったようだ。」


ヴェントール様がそう告げる。 つまりは協力者がいるのね。


「やはり帝国か?」


王子がそう言うがリーヴィス様が否定する。


「いや、国内に入り込んでいる帝国の手の者の動きはないそうだ。」


「なら南方の蛮族共か?」


さらに王子が疑わしい候補を挙げる。

南方の蛮族。 たしか先祖の霊を神として崇める部族で、我が国との長い闘いの歴史があるわ。

当然の事ながら交流は禁止されているわね。

リーヴィス様が王子の言葉に少し考えた後首を横に振った。


「いや、権力を失ったサマナンにヤツらは従わないだろう。」


彼らは金銀財宝を捧げる事こそが祖先の霊に報いる行為だとしているわ。

まあ簡単に言うと、盗賊の集団ね。 他の国も被害が出ているため敵対している国は多いわ。


「俺お手上げ。」


「僕もー!」 「ぼ、ぼくもわからないかな。」


ヴィヴィリオ様、サヴェリス様、、ラヴィリス様がさっぱり分からないと手を上げる。


しかし、権力を失った?

降格されたとはいえ子爵の地位にいるのでは?

私がその疑問を告げると、リーヴィス様が説明してくれたことによると。


花嫁の力を奪う術の存在を公表する訳にもいかない為、サマナンは南方の蛮族との繋がりを理由に降格。

のちに横領などの罪で、実際にやっていたそうだ。 当主の座を息子に渡し、本人は投獄された。

つまり、今のサマナン子爵は息子の方であると。


「供述の中に気になる単語がある。」


書類を見ていたリーヴィス様が、書類を指し示しながらそう言った。


「気になる…… ですか?」


アーネリオ様が怪訝な表情で聞き返す。

アーネリオ様も書類と格闘していたが、それを中断してリーヴィス様に向き直る。


「ああそれによると、予言によって花嫁の出現を知った。 とある。」


ああ、前世での続編の短編でそんな記述があったわね。

でもそれがどうしたのだろう?


「ふん、ヤーマ教か?」


ヴェントール様がリーヴィス様が口を開く前にそう言った。

リーヴィス様はそれに頷くと、続きを話し出す。


「ええ、予言という言葉を使うのは聖公国の国教であるヤーマ教ぐらいな物です。」


創生神ヤーマ・ヤーマ。 西方のザイン聖公国の国教であるヤーマ教の崇める神。

厳しい戒律と多大なる慈悲を教義の根本としており、他国にも信者が多い。

ちなみにアリシアが送られたザメラン修道院はヤーマ教の修道院よ。

たしか、何代か前の王の治世の折に友好の証として建造されたんだったかしら?

東の地に建てたのは聖公国と内応されずらくするためね。

その聖典において度々”予言”という言葉が出てくるそうだ。


「予言に曰く、ザインを信仰の地とする。 とか、予言にしたがって方針を決めることが度々あるらしいな。」


リーヴィス様はそう言って書類を机に置くと時間が経って冷めてしまった紅茶を飲み干す。


「フン、とは言え、だ。 現状我々には動きようがないのもまた事実だ。」


「それはそうなんですけどね。」


ヴェントール様の皮肉げな発言に、リーヴィス様は苦笑まじりで答える。


「ならむずかしー話はおしまいっ! でいいんでしょ?」


サヴィリス様がそう言ってあー退屈だった! と伸びをする。

ラヴィリス様が周りにペコペコ頭を下げるのがちょっと笑えた。



その後は時間までゆったりと雑談をして過ごす事になったわ。

なんというか、皆の私に対する好感度がかなり上がっているような気がするのだけれど……

すでにゲームとは違っている訳だけど、この展開は予想してなかったわ。

そして無くしたはずの死亡フラグだけど、なんだか形を変えて予想できない物がせまってくるのを感じるわね。

ゲームとは違う状況、ゲームでは出てこなかった勢力。

これらがどう影響するのかはまだ分からないけれど、私は乗り切ってみせるわよ!

そう決意を新たにしていると時間になったのでお茶会はお開きとなった。


しかしリーヴィス様がまた爆弾投下してくれましたとさ!


「ああ、ヴァネッサ嬢。 明後日王城に登城してもらいたいとのお達しなんだが大丈夫かな?」


なんですとー!?



続く


 

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