第十二話
「さて、次はヴァネッサちゃんの事を聞かせてほしいわ。 ……いえ、違うわね、偉大なる神祖たるヴラド=ツェペシ様。」
そう言うと、今までニコニコしていた王妃陛下が真剣な表情になりこちらを見つめる。
それだけで周りは緊張感に包まれる。 侍女の方達も身体がこわばっているわね。
「では、お話しいたしますわ。 まず……」
転生の記憶が戻ったのはつい最近、入学の一日前であった事。
死亡フラグ回避のために色々と(無駄だったが)計画を練った事。
そして、ホールでの事件。
なんかこうして見るとあんまり時間が経っていませんね?
そして、ホールでの事件、ヴラド覚醒はやはりお二人にとっても驚愕だったようですね。
「はあぁ。 まさかそんなことに、ねえ。 ヴァネッサちゃんが転生者だったケースは考えていたけどその予想のはるか上をぶっ飛んでいたわねぇ。 後、わたくしの知らないそんな事が前世にもあったなんてね。」
そう言って、私をマジマジと見つめる王妃殿下。
しかし、すぐにその顔は物憂げな表情になる。
「でも困ったわね。」
そう言ってため息一つこぼすと、国王陛下の方を見やる。
それを受けて国王陛下は懸念事項を話しだす。
「ヴァネッサ嬢がヴァンパイアになった、という事は非常に問題だ。 対外的にも国内的にもな。」
それは…… まあそうでしょうね。
王子達にも言った事ですが、花嫁が口づけの儀式もなく吸血鬼化したと言う事は、普通の感覚でいえば不貞を働いたと取られるようなものなのよね。
そもそも私が鮮血の花嫁である事は大々的に発表されているし、いまさら違いましたとも言えない。
「今はいいが、花嫁のお披露目をした時が問題だな。 すぐに他の吸血鬼は分かってしまうだろう。」
そして一斉に傅かれると……
それは避けたいですわね。 そんな事されて喜ぶ者なんて…… ああ、ヴラドは喜ぶか。
やれやれ。
「とりあえずこれからの事はこちらで考えておくわ。 ヴァネッサちゃんは気にせず学生生活を楽しんで!」
そう言っていただけると助かるんですが大丈夫なんですかね?
まあ色々考えておくからと、カラカラと陽気に笑う王妃陛下。
まあ、お任せしますかねえ。 悪い事にはならないと思うし。
最悪逃げてしまえばいいでしょう。 どうも前世よりも力が上がってるみたいだし?
冒険者になるのもいいかもしれない。
この世界の冒険者ってどんなのだったかしら?
そういえば誰かのシナリオでそんな説明があったような。
誰だったかしら?
その後は国王陛下は公務があるとかで退出なさり、王妃陛下と他愛もないおしゃべりが続きお時間となった。
「今日はありがとうね。 前世の話もできてうれしかったわ。」
「いえ私もお話しできて光栄でしたわ。」
またお茶会しましょうね。 と別れ際に言われ和やかに今回の非公式の謁見は終了したわ。
はあー、何事もなくてよかったわ。
帰りも王家の馬車に揺られ、ヴィヴィリオ様付きですが。 学校に到着する。
「うし、ここまでくれば襲撃なんかはないだろう。」
「警護ごくろうさまですわ。」
いやー緊張したーとか言いながら伸びをするヴィヴィリオ様。
え? 緊張してたのっ!?
始終ダラーとしてたような?
うーむ、やっぱりゲームのヴィヴィリオ様とは違っているわねえ。
まあ面倒がなくていいですけど。 女子寮まで送ってもらった後ヴィヴィリオ様と別れ、その背中を見ながらそう思った、のだけども。
そう思ったのは間違いである事を知るのはまだ先であった。
「おかえりなさいませ。 お嬢様。」
部屋に戻るとルカが出迎えてくれた。
「ただいまルカ。 問題はなかったかしら?」
ルカによると学園は特に変わりはなく、平穏そのものであったという。
「あの、お嬢様。」
ルカが入れてくれた紅茶を飲んでいると、家から連れて来た侍女のうちの一人、赤毛のマーベリットが声を掛けて来た。
「どうしたの、マーベリット?」
「はい実は、夕刻招待状を預かったんですが。」
「招待状?」
「はいルッキラス侯爵令嬢様からです。」
そう言って、まずルカに手渡す。
直接私に渡せるのは筆頭侍女であるルカだけなので、特におかしなことではない。
そうしてルカが確認し、ペーパーナイフと共に私に手渡す。
蝋印を確認するが、間違いなくルッキラス家の物ね。
私はナイフで封を開け、手紙を取り出す。
そこには明後日の午後、学院は休日ね、少数の知り合いでお茶会を開きたいのでご参加願うというものだった。
参加する令嬢の名前を見るとニンゲンの知り合いばかりね。
そうねえ。 知り合いとまったりお茶もいいかもね。
「ルカ、お茶会参加のお返事をお願いするわ。」
「畏まりました。」
明後日のお茶会楽しみね!
続く




