祭り
ジョン 「ふあぁ...ねみ。」
「もう、みんな朝ごはんを食べたよ。ほら、早く顔を洗って、朝ごはん食べて、さっさと支度しな!」
1番遅く起きたジョンは、顔を洗うべく洗面所にむかう。ダニエルは着替えが済んでいて、新聞を読んでいる。ジョンはドアノブに手をかけた。
「全く、あの子は朝に弱いんだから...ダニエル君はとっくに準備が終わって、クレアちゃんとエミリーちゃんとも着替えの途中...あっ!ジョン!今洗面所に行っちゃーーー」
ガチャ
ジョンがドアを開けると、そこにはクレアとエミリーが、下着姿になっていた。2人とも、白くてハリのある、綺麗な肌をさらけ出していた。
ジョン 「え...うわぁ!」
クレアは顔を真っ赤にして、エミリーも顔を赤くしながら、魔法を込めた手の平で、ジョンの頬を思いっきりぶった。
ーーー
馬車で私達4人と、別の馬車でジョンの家族はパレードが始まる場所を目指した。
と言っても、パレードが始まるのは3時頃、まだまだだ。それまでは屋台を巡って、楽しむとしよう。
クレア 「この国の屋台って、どんなのがあるの?」
ジョン 「カレンディアとあまり変わんねぇと思うぞ。大体が食い物を売ってるが、くじ引きとか、7色魚すくいとかいろいろある。」
顔を真っ赤に腫らしたジョンがそう言った。
まあ、いいか。祭りは見るだけでも楽しい。着いてから、何を買うかを考えよう。
馬車で目的地に移動してる途中に、準備中の屋台をいくつも見かけた。目的地までまだまだなのに、何度も見かける。それだけ大きな祭りなんだなぁ。
ーーー
目的地にはたくさんの人が溢れ返っていた。こういう雰囲気は大好きだ。なぜか、ワクワクする。感情が昂ぶる。
私達4人はバラバラに行動する事になった。ジョンの家族は、集団で行動するらしい。シドもスズも、1人で行動できる年齢じゃないから、当然だろう。
とりあえず私は、何か昼食を取る事にした。
ーーー
私は、パンに肉や野菜を挟んだ、シンプルな食べ物を買った。こういうのは、特に名前は無いのだろうか。
他にも、フライドポテトや、飴などを買いながら、祭りの雰囲気を楽しんだ。芸者さんが芸をしたり、酔っぱらいが喧嘩してたりと、とても賑やかだなぁ、と感じながら、一通り歩く事にした。
ーーー
途中、卵がたくさん並んでる屋台を見つけた。何だろう?と思いながら、興味があるので、少し見て見る事にした。
「いらっしゃい、お嬢ちゃん。卵が欲しいのか?」
「何の卵なんですか?それ。」
「これはなぁ、ドラゴンの卵さ!」
「ドラゴン...!?」
「そんなに驚くなよ。害のある種類じゃないドラゴンだ。成長して大人になっても、小型犬、大きくても、中型犬程度までしかならないんだ。性格は人懐っこくて、温厚なんだ。」
「ふぅん。」
「あんまり売れてないんたけどな...どうだ?買わないか?今なら半額!ほら、チャンスは今しか無いんだぞ?この機会を逃したら、絶対後悔するぞ?」
「う...」
ーーー
「毎度ありー」
鶏卵程の大きさの卵を専用のカゴにいれながら、再び歩いた。
こんなの使い道ないでしょ...盛大に失敗した...
いろいろ見ながら、そろそろパレードが始まる時間になるから、道を引き返した。
ーーー
エミリー 「クレア!やっと見つけた。」
エミリー達とジョンの家族は、みんな既に合流していた。
エミリー 「クレア...それ...」
クレア 「ああ、ドラゴンの卵らしいけど...」
エミリー 「いや、それは知ってるけど、何の為に買ったの?」
クレア 「店の人の迫力に負けちゃって...」
エミリー 「それは小型竜の卵ね。育てるのは簡単だから、そんなに苦労はしないと思うけど。」
ダニエル 「そんな事より、もう始まるぞ。」
午後3時丁度にパレードが始まった。音楽隊が楽器を演奏し、女の子達が踊りながら歩いていく。
パレードはこの街の周辺を回る。さっき、私が一通り歩いた場所を歩くという事だ。
パレードの途中、大きなフロート車が出てきた。その上には、中年の男の人がみんなに手を振っていた。あの人は私も知っている。この国の大統領だ。
ダマカ = ムラル大統領。名前以外はよく知らない。でも、とにかく偉い人だ。
クレア 「あの大統領って、どんな人なんですか?」
ジョン父 「ムラル大統領はな!労働党に所属していて、国民の為の政治を行ういい人さ。外交に関しては、タカ派なんだがな。だが、強いリーダーがいてくれた方が心強い。」
クレア 「国民もそれを望んでいるのでしょうか?」
ジョン父 「支持率もマスコミによってバラバラなんだが、偏向的な報道を行うマスコミ以外は、6割くらいはあるな。」
周りが騒がしいと思って見回すと、ムラル大統領に対する抗議デモが行われていた。多分、許可は取ってあるんだと思う。だって、警察官がデモ隊の周りにびっしりいるから。
この人誰がただ単に反対派なのか、左翼なのか私には全然分からないけど、まぁ、どうでもいいや。
この後、パレードは2時間近く続いた。
ーーー
ジョン 「いやぁ、面白かったなぁ。」
パレードが終了した後、私達はカフェで休憩した。内容はとても良かった。個人的には、満点だった。
ジョン父 「これにて解散!後は自由だ!」
エミリー 「ありがとうございました。いろいろと良くして下さって。」
ジョン母 「いいのよ。これからもジョンをよろしくね。」
ーーー
ジョンの家族と別れた後、私達は祭りを楽しむ事にした。空はすっかり暗くなってるけど、光があるおかげで周りは明るい。今度は4人で行動した。
ジョン 「おっ!射的かぁ。面白そうだから、やってみるか。ダニエル、お前もやろうぜ。」
「ああ、日頃の訓練の成果を見せてやろう。」
まず、ジョンが弓を構えた。
「矢は3本か。」
ジョンは、勢いよく弓を引き、なぜか大声を叫びながら、矢を発射し、見事に全部外した。
ジョン 「うわっ!もう矢が無くなった。」
「くそ!全然当たらない!矢が全部無くなった!」
ジョンの隣で、男の人が同じように全ての矢を外していた。やっぱり、普段から練習しないと当たらないよね。多分、私も全く当てられないと思う。
次に、ダニエルが弓を構えた。慎重に弓を引き、矢を放つ。放った矢は犬のぬいぐるみに当たり、落ちた。残りの2発も綺麗に当てた。犬のぬいぐるみと、犬のぬいぐるみ。他にも当てるべき景品があるでしょ!と思ったけど、口には出さなかった。普通にすごいなぁ。普段から練習してるだけはある。
「いやぁ、すごいねぇ。僕は弓なんか全然触らないから、全く当たらなかったよ。」
ジョンの隣にいた男の人が、ダニエルに話しかけた。
「何もしなければ、そりゃ当たらないだろう。」
その男の人の横顔を見た時、どこかで見たような気がした。
あれは確か...エミリーと一緒にいた...
クレア 「あっ。」
「ん?君はあの時の...エミリーも一緒じゃないか!奇遇だねぇ。」
エミリー 「う...」
「そう言えば、名前を言ってなかったね。僕の名前はルーカス。」
「クレアよ。」
ルーカス 「よろしく。」
クレア 「ルーカスは、誰かと一緒に来たの?」
「うん、友達とね。」
「ルーカス君!こっちいこ!」
声のした方を見ると、ルーカスの友達と思われる集団がいた。全員女の子だ。モテモテだなぁ。
「じゃあね。僕は他の屋台に行ってくるよ。」
そう言って、ルーカスは女の子達の集団の中に入って行った。
エミリー (ティアナ...!行かないで!ティアナ!)
ーーー
この辺りは、昼間は人通りが多かったが、この時間帯になると急に人が少なくなった。今は人が全く来ない。
「ふぅ。屋台を閉めるか。」
「そうだな。」
早めに屋台を引き上げる者もちらほら出てきた。そろそろこの祭りも終了する。屋台を閉じようとする男の前に人影が現れた。
「何だ?もう屋台は終了...」
ザシュッ!
男は何者かに攻撃されて、絶命した。男が倒れて、屋台に乗っていた調理器具が派手な音を響かせる。
「どうした?一体何の...ヒッ!」
男が血まみれで倒れている事に気付いた別の男は、尻もちをついた。
その男を見つめる者がいた。1人だけではない。男の周りを覆い尽くす程の数だ。
「あ...ああ...あああ...」
ーーー
今日はとても楽しかった。来年もまた来たい。
ジョン 「すっかり、暗くなっちまったな。そろそろ帰るか。」
ダニエル 「ああ、そうだな。」
現在23時。この近くの宿をあらかじめ予約してある。宿で早く寝たい。
私達が帰ろうと、来た道を引き返した、その時ーーー
「キャー!」
女性の叫び声がした。
ジョン 「何だ?」
エミリー 「さぁ。」
何かあったんだろうと思ったけど、あまり関心は持たなかった。でも、声の数はどんどん増えていき、様々な叫び声が聞こえた?
ダニエル 「っ!ただごとじゃない!」
確かに、騒ぎがどんどん大きくなっている。何か大きな出来事が起きたに違いない。
バッ!
エミリー 「クレア!後ろ!」
「!!」
後ろを振り向くと、武器を持ったゴブリンが私に襲いかかって来ていた。
エミリーが火の玉を発射し、ゴブリンに命中させた。ゴブリンは火を消そうと暴れまわっている。エミリーはさらに火の玉をゴブリンに当て、ゴブリンを焼き殺した。
ジョン 「何でこんな所にゴブリンが!?」
ガサッ!
突然、大量のゴブリンが私達の前に出てきた。全部の相手をするのは危険だ。
ダニエル 「逃げるぞ!この数は危険だ!」
ダニエルはゴブリンに向かって矢を放ち、ゴブリンが怯んだ隙に私達は逃げた。
ダニエル 「街の中心に行くぞ!そこなら、多少はマシになる。」
私達は街の中心部に向かって走った。途中、人がモンスター達に殺されていくのを見た。助けようとしたけど、手遅れだ。
ダニエル 「余計な事を考えるな。自分の命を優先しろ。」
しばらく走ると、コルニカ軍の兵士達が人を誘導していた。そこに行けば、大丈夫かもしれない。私達は兵士に誘導されながら、全速力で走った。




