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力戦奮闘の冒険者  作者: レモンパイ
12/15

奴隷市場

エミリー 「もっと魔力を集中させて!あぁ...何でそうなるの?」


今日は休日で、朝からエミリーに魔法の使い方を教えてもらっている。私は本当に魔法が下手だ。初歩的な魔法もほとんどできない。別にふざけてる訳じゃない。


今は魔力の塊を作る練習をしている。魔力を一箇所に集中させると、白っぽい光ができてくる。

それが分散しては、また集め直す。


「次は少しレベルをあげるわ。その前に、いくらなんでも属性の事は知ってるわよね?」


「火・水・木・光・闇・無、でしょ?」


「そう、今日は木属性の魔法を教えるわ。」


そう言うと、エミリーが手のひらを私に向けた。

その直後、私に強めの風が吹き、少しぐらついた。


「今のは木属性の中で一番簡単な魔法よ。」


「それくらい私もできるよ。」


「できないと大問題よ。」


その他にもいろんな属性の魔法を教わった。火属性に関しては、竜の力があるけど、一応聞いておいた。


やっぱり私には魔法は向いていない。でも、苦手だからと言って剣だけに頼るのは危ないと思う。剣がメインで魔法は補助、という戦い方が理想かな。


ーーー


午後、昼食を取った後に、暇つぶしに街をぶらついてみる。


この街はかなり広い。まだまだ全てを見きれていない。だから、街を歩く事はいい暇つぶしになる。


まだ行った事のないエリアに行くと、人の集団に出くわした。街のみんなに何かを呼びかけてるようだ。いろんな声が混じって、あまりよく聞こえない。


近づいてみるとーーー


「奴隷制に反対!」


「奴隷を解放しろ!」


奴隷?奴隷制度がこの国にあるのは知らなかった。よく見ると、奴隷制に抗議するプラカードを持ってる人もいた。しばらく抗議を行った後、デモ隊はどこかに移動するみたいだ。


クレア 「どこに行くんですか?」


近くにいた、プラカードを持っている男の人に聞くと


「奴隷市場さ。そこで、奴隷商人や奴隷を買おうとしてる奴らに抗議するのさ。」


私はデモ隊から少し離れた状態でついていく事にした。


しばらくすると、壁の無い建物が見えてきた。その建物の中には粗末な服を着た、鎖で繋がれた老若男女がいた。いろんな種族が鎖に繋がれている。多分、「商品」だと思う。その「商品」を品定めしている人達もいた。


その建物の近くでデモ隊がデモを始めた。デモ隊の中には、奴隷を解放する為に、奴隷を購入する人達もいた。


奴隷に反対するデモ隊の近くに、別の団体がいた。


「奴隷は大事な産業!偽善者共を許すな!」


奴隷推進派の団体だ。


反対派と推進派が互いに罵り合っている中、奴隷が次々と買われていった。反対派の購入した奴隷とは別だ。


ここにいると気分が悪くなる。とても不快な気持ちで、奴隷市場から離れる事にした。


「この奴隷はかなり高かったんだぞ。何せ処女の上に、この国では珍しいエルフだからな。」


「まだガキじゃねーかwロリコンめwま、俺も人の事言えねーけどなw」


「良い買い物をしたな。容姿がとても優れている。儂好みのペットだ。」


「良いおもちゃが手に入ったぞぉ!虐待しまくるぜぇぇぇ!」


奴隷市場から出て行く途中に、人間達が自分の奴隷を自慢していた。購入された奴隷のほとんどが女だった。どういう目的で購入されたかは容易に想像できる。


私にはどうする事もできなかった。少なくともこの国では奴隷は合法だ。だから、私が勝手に奴隷を助けてはいけない。下手をすれば、犯罪になる。私はただ、その場から離れるしかなかった。

ーーー


宿に戻ると、ダニエルと廊下でばったり会った。


「遅かったな。もうみんな飯を食い終わっ...どうした?」


気分の落ち込んでる私に気づいたダニエルが私に何かあったのかと聞いてくる。


ーーーダニエルの部屋ーーー


「ダニエルは奴隷制についてどう思う?」


「何だ?いきなり。」


「今日、奴隷市場に行ったの。そこで、奴隷が買われていくのを見た。子供が買われていくのも。」


「そうか...そういう事か。俺は奴隷制には反対

してる。俺に限らず大多数の奴らが奴隷制に反対してるよ。でも、中には奴隷を欲しがる奴らもいる。奴隷に雑用をやらせたり、ペット感覚で買ったり、性欲のはけ口に使ったりな。需要があるからこそ、奴隷制は無くならない。」


「他の国もそうなのかな?」


「この国以外には、ノルアドス帝国くらいだな。

だが、奴隷を供給してるのは主にカレンディア王国だな。」


「カレンディア王国が!?嘘...」


「確かにあの国は多種多様な種族同士が共存してる国だ。だが、犯罪者を奴隷として輸出したり、資金が足りないという理由で本来受け入れるはずの難民を奴隷にして輸出している。自国民を養う為にな。」


私は運が良かったんだ...


カレンディア王国が悪いと決めつける訳じゃない。カレンディア王国も自国民を養う為にやむを得ず、こういった行為をしてるんだ。


「その奴隷達のほとんどは、やっぱり青緑大陸から調達してくるの?」


「そうだ。青緑大陸にはカレンディア王国の交流所があるからな。一応、青緑大陸の連中には許可を得ているが。」


「私は青緑大陸で生まれたの。私の集落はモンスターに壊滅させられたらしいけど。赤ん坊だったから、記憶に無いわ。」


「そうか。お前を助けたのはカレンディア王国の派遣した救助隊だろうな。お前は運が良い。同胞を奴隷にして売ろうとする奴もいるんだ。」


だから奴隷制は無くならない。そう理解した。


「今日はしっかり休め。明日からまた仕事だからな。」


ーーー


明日は討伐クエスト。 気を取り直して、身体を休めないといけない。


後、少しでCランクになれる。でも浮かれちゃダメだ。とにかく油断は禁物。もっと強くならないと。


ーーー


今日はゴブリンの討伐だ。前回のクエストを依頼

してきた村がまた、ゴブリン に襲われているらしい。


ーーー


ジョン 「多分、前回討伐したゴブリンの巣にまた、ゴブリンが住み着いたんだろう。」


ジョンについていき、あの時の洞窟に到着すると、案の定、ゴブリンがいた。今回のゴブリン 退治は前回よりも簡単だった。私達が強くなったというのもあるけど、ゴブリンの数が少なかった。


ーーー


「本当にありがとうございます!」


クエストを終えて、ギルドに戻る途中に村を通りかかった時、村の人と思われる人が声をかけてきた。クエストのお礼をしたいという事で、村に招かれた。断る理由がなかった私達は村に足を踏み入れた。


この村はガナギ村と言うらしい。畑を見ると、ぐちゃぐちゃに荒らされていた。ゴブリンの仕業だと思う。


歓迎された私達は村の人達に、昼食を振舞ってもらった。パンと具のほとんどないスープという、かなり質素なメニューだけど、普通に美味しい。


「この村はしょっちゅうモンスターに狙われるんじゃ。森に近いせいじゃな。」


村長がそう言うと、他の村人達も同調した。


「本当にあんたらには感謝しとる。2度もゴブリン を討伐してくれたんじゃからな。国は大して対策を取らんからのう。」


パンとスープをごちそうになった私達は村のみんなに感謝されながら、村を出た。


ーーー


ジョン 「もうすぐでCランクだな!さっさとクエストをクリアさせようぜ!」


Cランク自体、あまり凄くないけど、ランクが上がるのは嬉しい。その分、クエスト内容も難しくなるけど。


10年後の私は冒険者を続けているのだろうか。


澄み切った青空を見上げながら、将来どうなるかを考えた。


ま、いっか。今を考えよう。今を。






次回、新キャラが出ます。

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