採取クエスト
武器屋のドアを開けると
「いらっしゃい」
中年くらいの、体格の良い男の人がいた。おそらく、店主だろう。
「どんな武器が欲しいんだ?」
「今日、買いたい...という訳ではないんですけど、どんなのがあるかなーって、ちょっと見にきました。」
「そうか。まぁ、じっくり見てくれや。」
店のおじさんはそう言いながら、カウンターに戻って行った。
周りを見渡すと、剣や槍などの刃の鋭い武器や、斧や大剣などの刃の分厚い、叩き斬るように使う武器、ハンマーやメイスなどの打撃系の武器、弓やボウガンなどの遠距離用の武器まで、いろんな種類の武器が並んであった。
私は剣かな。そう思って、剣のコーナーを見た。安い武器は安いけど、高い武器は高い。見た目はあまり変わらないけど、、、多分、プロの人なら分かるんだろう。
一応、他の武器も見て回った。でもやっぱり、私には剣が1番だと思った。試した事もないのに。
今の手持ちのお金じゃ、ナイフくらいしか買えない。今日は帰ろう。
ガチャーーー
ドアが開く音がしたから、ドアの方を見ると、ジョンがいた。
「ジョン!」
「クレア!?奇遇だな!何か買いに来たのか?」
「どんなのがあるか見てるだけ。」
「ふ〜ん、俺は武器を修理しに来たんだけどな。」
そう言って、ジョンはいつも使ってる剣と盾をおじさんに預けた。どうやら、この店はそういった事もしてるらしい。
「結構荒い使い方してたからな。これから、ランクが上がっていくにつれて、強い敵と戦う訳だし。」
私達が目指しているのは、Cランクの冒険者になる事。みんなはどうか知らないけど、私は人の役に立ちたい。人を襲うモンスターを倒して、脅威から守りたい。とりあえずCランク、後の事はそれから考えよう。
「修理に預けてる間はどうするの?」
「そんなにかからねえよ。1日もすれば終わるーーー だよなぁ!親父!」
「ああ。修理の依頼はあまり来ないからな。明日の10時前には終わる。」
「1日もしないのか!そりゃ良かった。」
ーーー
店を出た後、私とジョンは一緒に宿に戻る事にした。
「そういえば、みんなは休日は何してるの?」
「俺は武器の訓練をしたり、1人で簡単なクエストを受けて金を稼いだり、後は街の女の子をナンパしたりだな。ダニエルは弓の整備をしたり、戦闘に役立つ物を作ったりしてる。手先が器用なんだろうな。エミリーは魔法の練習をしてる事が多い。図書館で魔法に関する本を読んだりもしてる。」
なるほど、、、
「それよりさぁ!聞いてくれよ!街に可愛い女の子がいたから、声をかけたら、ゴミを見るかのような目で無視されたんだよ!高そうな服を着てたから、高い身分だったかもな。」
「.....」
ジョンのナンパ話を聞かされ続けながら、宿に戻った。ダニエルとエミリーは既に宿に戻っていた。
4人で一緒に食事を取りながら、明日の予定について話し合った。ジョンが武器を修理に預けてるから、明日は12時からクエストを受ける事に決まった。明日は討伐クエストではなく、採取クエストを受ける。珍味といわれるキノコの採取だ。採取クエストと言っても、今回のはかなり森の奥深くに入る必要がある。この辺りの森は、ゴブリンもよく出没する。それなりに危険なクエストだ。
私達がCランクに上がるには、Dランクのクエストを10個以上達成する必要がある。現時点で5個達成してるから、後、半分だ。
ーーー
話が終わった後、それぞれ部屋に戻った。早く寝ないとなぁ。
寝る前に身体を拭こうとして、服を脱ごうとした時ーーー
コンコン
ドアを叩く音がした。
「はーい」
ドアを開けると、そこには青ざめた顔をした
エミリーがいた。
「...どうしたの?」
エミリーを部屋に入れて、何の用かと聞くと
「私の部屋に...ゴ...ゴキ...ゴキブリが...」
話を聞くと、エミリーの部屋にゴキブリが大量発生したらしい。
それを見たエミリーは一瞬、身体が硬直して、その後、急いで部屋を出て、今に至る。
エミリーの部屋のゴキブリについては、宿の女の従業員の人が駆除しに向かっているとの事。
大人びた性格のエミリーの、意外な一面だった。
「服も部屋に置いて来ちゃった...」
「私の貸そうか?」
「ありがとう」
この日はエミリーと一緒に、この部屋に泊まる事になった。エミリーもまだ、身体を拭いていないという事で、私とエミリーは服を脱いだ。
大人びた性格だけど、同年代の女の子の中でも背の低い方のエミリーは、身体の発育もイマイチだった。私のブラが合わないと思うけど。まぁ、仕方ないよね。
ーーー
翌日、エミリーと一緒に起きて、朝食を取りに行った後、エミリーはゴキブリのいなくなった部屋に戻り、自分の服に着替えた。2人でギルドに行き、ギルドでダニエルと合流した。しばらくして、武器の修理を終わらせたジョンが来た。
4人揃った後、クエストを受注した。
ーーー
「なかなか見つかんねえなぁ。」
ジョンがそう言いながら、キノコを探している。結構深くまで来たけど、まだキノコは見つからない。
「まだ奥に行く必要がある。その分、リスクは増えるが、ここにはないだろう。」
ダニエルがみんなにそう言った。私達は賛成してさらに奥に進んだ。
しばらく進むと、森の中に穴が空いたように、気が全くない所に出た。その近くには、依頼されたキノコが所々に生えていた。
ーーー
ダニエル 「なんか楽勝だったな。」
キノコを取り終えた私達はギルドに戻る途中だった。まだ油断してはいけない。もしかしたら、危険なモンスターに遭遇するかも。
「止まれ...静かにしろ。」
ダニエルが急にそう言いだした。
エミリー 「どうしたの?」
ダニエル 「ドラゴンだ。ドラゴンがいる。」
ジョンが指を指した崖の下に、緑色の鱗のドラゴンがいた。身体の大きさと、特に特徴のない外見こらして、下級のドラゴンだ。そのドラゴンは、何かに夢中になっているようだ。何か食べてるのかな?そう思いながら、ドラゴンを崖の上から見下ろすとーーー
「.....!?」
ドラゴンは人間の肉に噛み付いていた。その人間は既に死んでいて、辛うじて、原型を留めていた。多分、ドラゴンにやられたんだと思う。冒険者かもしれないし、一般人かもしれない。ぐちゃぐちゃになってて、男か女かも分からない。
ダニエル 「奴はこちらに気づいていない。このまま通り過ぎれば、問題ない。」
私達は出来るだけ、ドラゴンから目を離さずに進んだ。ドラゴンは「食事」に夢中だ。このままなら、気づかれずに進める。
ーーー
無事に通り抜けた後、私達はギルドに着いた。そして、報酬をもらい、無事にクエストはクリアした。
私はギルドの受付の女の人に、ドラゴンが人を食べていた事を伝えた。
「下級のドラゴンですね?それは、あなたが討伐を依頼するという事でよろしいでしょうか?」
感情的に考えない所はさすがプロだと思った。
「はい、私からの依頼です。」
「分かりました。では、あなたの出す報酬と、内容を記入して下さい。」
下級のドラゴンの討伐はBランクらしい。それなりにドラゴンは強いからだ。
その分の報酬を受付の女の人に渡して、依頼を私が頼んだという形で終わらせた。
ーーー
ジョン 「ああいう事を防ぐ為にも、冒険者ってのは必要なんだよな。」
エミリー 「よほどの事がない限り、軍は出せないものね。」
軍を出す時は、国が危険に侵された時くらいだろう。コルニカ共和国の軍は、ノルアドス帝国が攻めて来ても大丈夫なように、常時、ノルアドス帝国との国境に軍を駐留させている。だから、よほどの事がない限りは、軍を出すのは有り得ないだろうなぁ。
ーーー
剣だけに頼った戦い方じゃダメかな。他の力も使えるようにならないと。竜人族の力もだけど、魔法も使えるようにならないと、この先が危ない。
エミリーに教えてもらおうかな。うん、そうしよう。
そう思いながら、私は眠りについた。
ジョンの髪の色は茶髪、エミリーの髪の色は紫、ダニエルの髪の色は灰色です。




