醜い魔物の子
日本の上空で旅客機が爆発した。
乗客は全員死亡。
しかし、その中で唯一、助かった生物がいた。
その生物は爆発を逃れ、廃園になった裏野ドリームランドのアクアツアー内にある水槽に落ちた。
深夜、3人の学生が、裏野ドリームランドに肝試しに来ていた。
名前は、シンヤ、マモル、アヤ。
学校が夏休みに入り、アヤが2人を無理やり誘ったのだ。
「さあ、着いたわよ!」
車の運転席から降り、バン、と勢い良く扉を閉める。
それに2人も続く。
「……不気味だね」
マモルがぼそりと呟いた。
「……行きましょう」
アヤが先陣を切り、足元をライトで照らしながら進む。
シンヤは胃が痛くなって来た。
(幽霊とか、苦手なんだよなぁ……)
アヤが足を止め、2人に呼びかける。
「ここに入ってみましょうか」
そこには、アクアツアー、という看板が立て掛けられていた。
「……水かぁ。 水面から手が出てきて、ピラニアが沢山いるプール内に引きずり込まれるとか?」
「……」
マモルが余計なことを言ったせいで、アヤの足が一瞬止まった。
しかし、いいから行くわよ! と中へと入る。
(……行っちゃったよ。 アヤを一人にはできないしなぁ……)
ため息をつき、シンヤ、マモルも中へと踏み入れた。
アクアツアーはいわゆる水族館で、色々な水槽が並べられている。
しかし、閉園を機に、魚の世話をする者がいなくなり、その死がいがプカプカと浮かんでいた。
「何か、生臭いんだけど……」
マモルが鼻をつまみながら呟く。
「……魚の匂いでしょ」
(魚の匂い? でも、水槽って密閉されてるよなぁ……)
シンヤはそんなことを思ったが、しばらく進んでその理由が分かった。
「み、見て!」
熱帯魚のコーナーの床面が水浸しになっており、水槽の一つに穴が開いていた。
「うわあ…… これだよ、原因」
カクレクマノミの様な、小さな魚が大量に死んでいる。
「割れちゃったのかな?」
アヤが水槽を調べる。
「何か、溶かされた後みたい……」
水槽のガラスは、割れた痕跡は無く、熱で溶かしたかのような、なめらかな穴が開いていた。
「ちょ、ごめん! 僕、トイレ行ってくるよ」
とうとうシンヤは我慢出来なくなり、トイレに行くと言い出した。
「……しばらく待ちましょう」
「ふぅ……」
シンヤが洗面所で手を洗い、先ほどの水槽に戻ると、2人の姿は無かった。
(な、何だよあいつら……)
シンヤは、もしかしたら自分を脅かす為に、どこかに隠れたのかと疑った。
「お、おい! マモル、ふざけるなよっ!」
上擦った声で叫びながら、2人を探す。
シンヤは、一人でトイレに行ったことを後悔した。
(イタズラ好きなあの2人を一緒にしたのが間違いだった……)
先に進むと、白い壁の部屋へとやって来た。
(何だここ…… 何のコーナーだよ?)
部屋に出口は無く、何かを展示している風でもない。
(行き止まりか?)
何気なく壁に手を触れてみる。
すると……
「う、うわあああああああっ」
シンヤは思わず手を引っ込めた。
何故なら、壁がブヨブヨしていたからだ。
そして、妙な事に気が付いた。
入り口が、見当たらない。
(……白い壁に、囲まれてる)
ズズズ、という何かが蠢く音がする。
シンヤは暗闇の中、よく目を懲らした。
(何だよ…… 何なんだよ!)
壁が、動いている。
そして、シンヤの目の前に、見たこともない生き物の頭が現れた。
背丈は自分と同じくらいの、目がいくつもある生物。
触覚がウネウネしている。
その生物が、パカリ、と口を開くと、白骨化したマモル、アヤの姿があった。
旅客機から落ちてきた生物、それは、とある大学の教授が研究の為に持ち出した、アマゾン原産の雑種ワームであった。
終わり
このワームは、食べた分だけでかくなります。
元ネタは、スリ〇リオというゲームです。