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黒衣の女神は男の娘  作者: マチカネ
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第2章 人類軍

 ユウくんが人類軍のアジトに行きます。

 そしてユウくんの秘密が!

「どうしょう……」

 黒衣の女神と思い込まれてしまった悠也は、有無を言う機会すら与えられず、ハンヴィーに乗せられ、人類軍のアジトへ連れて来られてしまったしまった。


 山裾に作られた人類軍のアジト。アジトと言っても、ゲルが並んで町を形成している。

 ゲルの素材は何か大きな白い獣の毛皮。それがどんな獣の毛皮なのかは悠也には解らない。解るのは地球には住んでいない獣だということだけ。

 いくつもの馬車と“漂着物”のキャンピングカーが1台あり。

 アジトが移動式なのは、人間側から見ればレジスタンス組織になるが、神鎧族側から見ればテロリストになるので、この方が便利が良いから。


 ジーニアス、マリナと一緒に、悠也はアジトの中を進む。

 筋肉質の男がグレートソードの手入れをしている。

 一生懸命、馬の世話をしている少年。悠也の知っている種類の馬と、見たこともない色の毛の馬、スタンテングの乗っていたほどではなにしろ、かなり大きい馬もいる。

 入手した物資の搬送や保管の指示をしている女性。

 黒板の前で、先生から青空授業を受けている生徒たち。

 年配の男から、少年と少女たちが戦闘訓練を受けている。

 食料の保存や調理をしている区画、いわゆる食堂。まだ食事の時間ではないので、並べられたテーブルについている人の姿はあまりいない。

 なんと仮設のお風呂まであり、ちゃんと男湯、女湯が分けてある。


 スタンテングの街のような豪華さはないが、ここには人が生きている活気がある、そして希望がある。

『こっちの方が僕は好きやな』

 内心、悠也は呟く。


 アジトの人たちは悠也が通り過ぎるたびに、

「あっ、黒衣の女神様だ」

「私たちの元に黒衣の女神様がきてくださった」

「黒衣の女神様~」

「こっちを向いてください、黒衣の女神様」

 と口々に歓声を上げる。

「黒衣の女神様」

「黒衣の女神!」

 子供たちも大はしゃぎ。

「皆さん、こんにちわ」

 笑顔で手を振ってあげると、黄色い声援は、どんどんと膨れ上がっていく。

 秋葉原で磨き上げた男の娘スキルが条件反射で炸裂してしまった。もし、男の子とばれたらどうなるのだろう。

 重火器やSMAW ロケットランチャーを持っている連中である、それはそれは洒落にならない事態に陥るのは想像するに容易い。

 それが解っていても悠也は声を掛けられるたびに、可愛い笑顔を振りまいてしまう。悲しい男の娘のサガ。

「貴様!」

 そんな中、唯一、敵対心を剥きだした奴がいた。ジャニスを襲っていた、あのナイフの暴漢、カストである。あの暴漢たちも人類軍のメンバー。

 今にもナイフを出しそうなカストも、

「やめろ、カスト」

ジーニアスのひと睨みで、カストは委縮してしまう。

「さぁ、行きましょう、黒衣の女神様」

 そんなカストを無視してジーニアスは、他のものより大きいゲルに入るように促す。

 マリナと一緒に、ゲルに入る前、一度だけ悠也はカストの方を見た。

 凶暴さを見せていたあのカストが委縮したまま。人類軍にとってジーニアスは、それ程の人物だということ。




 ゲルに入ったのは初めての経験。テレビの旅行番組などでは、何度か悠也も見たことはあるけど。

 支えているのは頑丈な黒い木製の2本の柱。屋根と壁には何かの骨を削って作った骨組みが菱格子に組まれて、建物の形を保っている。

 内部はとっても快適で、過ごしやすい。

「すごいだろう、白奏狼(びゃくそうろう)の皮で出来ているんだぜ」

「白奏狼?」

 狼と言っているからには、犬系の獣なのだろうが、それ以外は解らない。

「なんだ、白奏狼を知らないのか? 白くて大きな狼で、皮には一定の気温を保つんだ。だから熱いところでは涼しいし、寒いところでは暖かくなるんだ」

 親切に解りやすく、マリナは教えてくれた。

 季節に関しては悠也は夏が苦手。毎年、文明の恩恵であるクーラーが欠かせない。

 こっちの世界に来た時、猛暑の夏が来たらどうしようと思っていた。でもこの白奏狼の皮のゲルなら、心配はなさそう。

「どうぞ、腰を下ろしてください」

 ジーニアスに、椅子に座るように促された。

 前にはテーブル。テーブルクロスもかかっておらず、木の肌のむき出しの手作り感満載のテーブル。

 手作りでもテーブルの出来はいい、椅子の出来も良くて、座り心地は悪くない。

 悠也が椅子に座ると、隣にはマリナが腰を下ろす。

「コーヒーを飲みますか?」

 尋ねられる。

 マリナは二つ返事でOK。生前、祖母から他人の家で出されたものを断るのは失礼だよと教えてられたので、好意を受け入れる。

 この世界にはインスタントコーヒーは無いとは解っていたけど、ジーニアスは悠也の予想もしていないコーヒーの淹れ方を始めた。

 コーヒー豆を布で包み、皮の水筒でポットに水を注ぎ、布とポットとハンマーを用意。

 何をしているのだろうと、興味を持ってみていると、水を注いだポットを中央の炉にかけ、コーヒー豆を包んだ布を石の上に置き、ハンマーで叩いてコーヒー豆を砕く。

 それを直接、沸騰したお湯の中に放り込んだ。




 戻ってきたジーニアスはポットの中の上澄みだけをカップに注ぎ、テーブルに並べる。

 ワイルドだなと思いながら、飲んでみる。

「あっ、美味しい」

 悠也の見たことのない淹れ方だったけど、これはこれで美味しい。

「ジーニアスの淹れるコーヒーは旨いだろう。私も真似してみたんだが、全然、うまくいなくてな」

 マリナも満足げにコーヒーを飲む。

「気に入ってもらえて、光栄です」

 自分のカップを向かいの席の前に置き、

「黒衣の女神様、人類軍に来てくださったことに、人類軍の代表として、ジーニアス、お礼を申し上げます」

 お辞儀。

「あの、まだ僕は人類軍になると、決めたわけではないので」

 これだけははっきりと言っておく。この世界のことも良く知らない、人類軍のことも良く知らない。

 悠也には見極めてから、判断する必要かある。それだけ、重大な判断だから。

 てっきり、悠也が人類軍の仲間になってくれるものと思っていたマリナ。一言を言おうとしたが、ジーニアスが片手で制し、

「それは存じています。見て聞いて、黒衣の女神様自身で判断してくださいませ」

 と言って、椅子に座る。

 ジーニアスに止められては、マリナは何も言えない。

「既に黒衣の女神様も―」

 話を始めようとしたところ、悠也は遮る。

「その黒衣の女神様というのは、ちょっと。僕のことはユウと呼んでください」

 黒衣の女神様と呼ばれるたびに、背筋がむず痒くなってくる。

「解りました、お望みならユウ様と呼ばせてもらいしょう」

 様は付いたまま。

「既にご存知でしょうが、神鎧族は人間を上回る強力な運動能力を持ち、あまつさえ、人間を喰う」

 人間を喰らう神鎧族解を倒し、人間を放するために立ち上がったのが、今、悠也のいる人類軍。

「奴らの外骨格の下は骨だけしかない。神鎧族は己の欠落部分を人間から喰らう」

 ボンガーを斬った時、しっかりと悠也も見た。外骨格の中が骨だったのを。

「あっ」

 ふと、あることに気が付く。

「一つ、聞いてもいいでしょうか」

 ある疑問が浮かび上がった。

「人間にとって神鎧族は、とても怖くて残酷な存在だというのは解ります。でも僕はスタンテングが悪い奴には見えなかった。それに外骨格に覆われた部分、欠落場所も見当たりません」

 この世界に来て、悠也が最初に出会った神鎧族、スタンテング。たかだか17歳の子供の目で見たと言っても、悪党には見えなかった。

 それにボンカーの右腕のような、外骨格に覆われた場所が見当たらない。

「確かにスタンテングは神鎧族の中では温厚な方です。それでも神鎧族であることは変わらない。スタンテングも人間を喰らう習性からは逃れることはできないのです」

 ここでジーニアスはコーヒーで口の中を湿らせる。

 釣られるように悠也もコーヒーを飲む。続いてマリナも一口。

「あの街の人間は保護され、他の神鎧族は手を出せない。裕福に暮らしてもいる。街の中であれば自由にしてもいい、治安もいい。しかし、いずれスタンテングに喰われる。いわば牧場で育てられている羊のようなもの」

 スタンテングの街の人間を見て悠也が『死刑判決を受けた囚人のよう』と感じたのも当然、その通りだったのだから。

「黒衣の女神の他にも、こんな伝承があります。最強の神鎧族、神鎧族の神は体のどの部分も外骨格に覆われてはいない。すなわち、欠落がないということ。私たちはスタンテングこそ、最強の神鎧族、神鎧族の神ではないかと考えております」

 つまりは人間にとってのラスボスがスタンテング。

「以前、人類軍とは別のレジスタンス組織が連携を組み、スタンテングを襲撃したことがあった。結果は全滅、スタンテングに指一本も触れられずに。私の仕入れた情報によれば、スタンテングは“漂着物”の秘伝書から鬼殺獄越流なる戦闘技術を身につけているとのことです」

 鬼殺獄越流ことは、悠也も祖母から話を聞いて知っている。体得者は、その名が示すように、鬼をも殺せるようになると。

 ただし祖母も、直接、鬼殺獄越流の体得者に出会ったことは無い。

 男の娘でも武闘の携わるものの悠也。話を聞いてから、正直な気持ち、一度でもいいから鬼殺獄越流の体得者とのお手合わせをしてみたいと思っている。

 人間でも鬼を殺せるようになるのなら、人間を上回る強力な運動能力を持つ神鎧族、それも最強の神鎧族が使うとなれば、どれほどの脅威となるか……。

 この世界の人間には、とても恐ろしい存在だろう。その本人が温厚な性格でも。

「お恥ずかしい限りですが、先日、スタンテングのメイドを襲い、ユウ様にちょっかいを出したのも、人類軍の戦士です。我々、人類軍は神鎧族しか襲わないとの掟があるにもかかわらず、人質にしようと浅はかな真似を……」

 最強の神鎧族も人質を捕れば倒せる。どこからどう解釈してみても、浅はかすぎる考え。

 組織が大きくなれば、こんな輩が出て来てしまうのも仕方がないことかもしれない。

「あの3人には謹慎を命じております。きつく『次は無いぞ』警告しておいたので、もう馬鹿な真似はしないでしょう」

 あの3人に接触したことで、人類軍は悠也のことを知り、マリナを送り込んだのである。

「マリナ、ユウ様のお世話をお前に任せる」

「合点、ユウのことは私に任しとけ」

 やる気満々。

 悠也の意見も聞かないうちに、世話役がマリナに決定してしまう。

「まずはユウ様を“工房”に案内してくれ」

 命令した後、仕事があるのでジーニアスはコーヒー片手に奥へ。

「さぁ、ユウ、さっさと“工房”へ行こうぜ」

 一気に残っていたコーヒーを飲み干す。

「うん、解った」

 悠也も残っていたコーヒーを飲む。




 案内された先にあったのは、ジーニアスのゲルよりも大きい、アジトの中で一番大きなゲル。とても大きく、戸も大きい。

 他のゲルは白奏狼の毛皮で作られていたが、ここは爬虫類の皮で作られている。

「おーい、入るぞ」

 中の了解も得る前に、大きな戸の隣にあった、普通サイズの戸を開き、マリナは中に入ってしまう。

 ボーっと突っ立っているわけにもいかないので、悠也も爬虫類の皮で作られたゲルの中に入った。

 正しく、中は“工房”であった。


 入るなり、もわっとした熱気が迫ってくる。

 漂うのは機械油やガソリンの匂い。あちらこちらに見たことのある機械が並び、悠也が欲しいなと思っていたオートバイのデンスケが作りかけの状態で置いてある。

 ハンマーややっとこ、やすりなどの道具を持った逞しい男たちが、もくもくと作業を行っていた。

「そうか、ここは“漂流物”の“工房”なんだ」

 話したことで作業していた男たちは悠也に気が付き、一斉にいかつい顔を向けてくる。

 戸惑っていてると、あっという間に取り囲まれてしまう。1人1人の体は大きい。

 睨むような眼差しで、悠也を見下ろす。

 何かあっても、戦えるように体制を整えようとした時、

「あんたが黒衣の女神様ずらか」

「綺麗だす」

「オラらに会いに来てくれただー」

「感謝感謝~」

「~感激感激」

 いかつい顔をメロメロにして、デレデレになる。

「そんなに喜んでもらえて、嬉しいです」

 いつもの条件反射で、にっこりと微笑む。

 一気に逞しい男たちのテンションが高まって行った。そのうち、鼻血を吹きだして倒れそうなほどに。

 それを見ていると、秋葉原で味わった高揚感がふつふつと蘇ろうとしてきた。

「あ、握手してくれ」

「何を握手するのはこっちずら」

「いや、オラだ!」

「なんだと!」

 1人が相手を殴りつけたことがきっかけになり、喧嘩を始めてしまう。

「あーあー」

 こうなったら、多少、強引な方法で喧嘩を止めさせようとしたら……。

「ひゃつ」

「胸は悲しいが、いいお尻してるじゃねぇか。揉みぐわいも最高」

 いきなり背後から、お尻を揉まれた。

「なにして、けつかんねん!」

 背後の人物を引っ捕まえると、ぶん投げてやる。

「パティ!」

 急いでマリナが走り、悠也がぶん投げた人物をキャッチ。

「あれ?」

 ここで初めて、自分のお尻を揉んだ人物の姿を確認した。どんな痴漢野郎かと思ったら、マリナに抱かれていたのはロリ幼女だった、それも巨乳の。

「突然、ぶん投げるとは、随分、気の強いお嬢ちゃんだな」

 カッカカとマリナに抱かれたロリ幼女、パティは下品に嗤う。よく見なくても、ちゃっかり、マリナの乳を揉んでいる。


 ここのゲルは火燐(かりん)という巨大なトカゲの皮で出来ている。火燐は火に耐性があり、“工房”のゲルにはもってこいの素材。他のゲルのような気温調整の効果がないため、火を使ってる間は蒸し暑い。


「ワシは“工房(ここ)”のリーダー、パティだ」

 作業の邪魔にならないように、“工房”の隅で自己紹介。

 リーダーがぶん投げられたことで、逞しい男たちは冷却。何事なかったように、各々の作業を再開。

「黒衣の女神様というからには、ボーンキュウボーンを期待していたんだがな、こんなお子様だったとは。まぁ、これはこれでうまそうだが」

 椅子の上で胡坐をかき、カラカラ笑う。簡素なシャツとジーンズなので問題にはならないが。

「ジーニアスに頼まれていてな、お前のモノを見せろ」

 一瞬、ドキッとしたが【骸空】のことだと解ったので、腰に差していた【骸空】を手渡す。

「こいつが、神鎧族のくそ野郎を一撃でぶっ殺したモノか」

 態度も喋りかたも、やっぱり、下品。どう見てもロリ幼女なのに、中身は親父。

 【骸空】を抜こうと、悪戦苦闘をするものの、抜ける気配すらない。

「おい、抜いてみろ」

 悠也に【骸空】を返す。本人の所為か、妙に言い方にセクハラな感じがする。

 返してもらった【骸空】を抜いてみた。あっさりと鞘から抜けたが、ボンカーを斬った時のような光の太刀ではなく、普通の短刀。

「おおっ、なんとも美しい刃」

 声を上げるパティ。

「ちょっと、見せてみろ」

 見た目から渡すのは危ないかなと思いはしたけど、渡すことにした。

 再び【骸空】を手に取り、刀身を、じっくりと観察している。

「こいつはすげぇ、美しいだけじゃねぇ、切れ味もとんでもない。これを造った野郎は達人だ」

 パティも“工房”を任されている身。製造者としての血が騒ぎだす。

「パティ」

 マリナの声で、正気に返るパティ。

「で、どうなんだ。複製は作れるのか?」

「いや、無理だな。こいつが、どうやって神鎧族をぶっ殺すかの術も解らんし、刃物の生成する技術さえも解らん。正直、お手上げだ。こいつを使えるのは、お前だけだろ」

 返してもらった【骸空】を鞘に収める。

「そうか、それは残念だな……」

 ため息を吐くマリナ。もし【骸空】の複製が造れたなら、対神鎧族が、ぐっと有利になったのに。


 “工房”を出た悠也とマリナ。日は西に傾き、夜の帳がおり始めている。

「なんか、汗かいたな」

 暑いのが苦手な悠也は、外の涼しさがありがたい。

「それじゃ、一緒に風呂に行くか」

 聞き捨てならないことをマリナが言った。

「いや、お風呂は1人で」

 断ろうとしたものの、

「何、恥ずかしがっているんだ。気にしない気にしない」

 それはそれは強引に、悠也はお風呂へ引きずられていった。




 引きずり込まれたのは女湯の方。

「さっさと、服を脱げよ」

 もう脱いでいるマリナ。逃げ出そうにも入り口を陣取ったいるため、マリナを押しのけないと脱出は不可能。

「やっぱり、後で入りますので」

 ごまかして脱衣場から、出ようと試みる。

「おいおい、何をのろのろしてるんだ。仕方がないな、私が脱がしてやる」

 襲い掛かってきた。悠也も武術をやっているのだから、戦って勝てないことは無い。しかし敵意のない女性、それもすっぽんぼんの無防備の状態で迫ってきているのだから、抵抗はできなかった。

「剥かないでぇぇぇぇぇぇ」




「そうだったんだ……」

 すっかり剥かれてしまった悠也。バレてしまった。この後、どんな恐ろしいことが起こるのか。剥かれているので外にも逃げられなくなってしまった。出たら、さらに大変なことになってしまう。

「そうだったんだ、うふふふふふふふふっ」

 不気味な含み笑いが、脱衣場で奏でられる。

「ユウちゃん、お姉さんが洗ってあげるぜ、隅々まで」

 予想外の反応、発せられる異様なオーラに当てられ、蛇に睨まれた蛙のごとく、竦みあがって動けない。

 マリナに掴まり、お風呂場へ連れていかれる悠也。

 ある意味、恐ろしい目に遭った……。




 日本人はお風呂が好き、体を洗い、暖かい湯船に浸かると、疲れが取れ魂までリフレッシュした気がする。

 しかし、それは時と場合にも関係してくること。


 全身を隅々まで、綺麗に洗われた悠也は、マリナのゲルでぐったり状態。精も根も尽き果てるとはこのような状態かもしれない。

 お風呂の後、連れ込まれてしまった、表向きは世話係だから。今後、このゲルで、マリナと一緒に生活することになってしまった悠也。寝間着はマリナがお古を貸してくれた。

「ユウちゃんの秘密は、誰にも話さないからな、安心しろ、私だけの秘密」

 とても嬉しそうなマリナ。垂れた涎を袖で拭き取る。

「あ、そうそう、明日からはお前も人類軍の仲間だからな。断ったら、どうなるかは解ってんだろう」

 ハンモックの上に乗る。目から語られる言葉は『これから、楽しくなりそうだ、うししし』である。

「こっちにも、アッチ系の人、いたんやな」

 もう諦めて覚悟するしか無くなった。悠也も男の子、覚悟を決めたら、どこまでもやるさ。


 こうして、西条悠也は人類軍に入ることとなった。




 早々に眠りの淵に落ちたマリナ。

 ハンモックで寝るのも悠也は初めて。

 何気なくスマートフォンを取り出してみた。通じないだろうと思っていたら、

「ああ、繋がった」

 意外なことにネットに繋がる。

 隕石のことが気になり、秋葉原関係のニュースを検索してみたところ、異変は無かった、いつも通りの秋葉原。秋葉原公園も何にも起こっておらず。

 秋葉原が無事と解り、悠也はホッとした。

 知合いに電話を掛けようとして、止めた。通じたとしても、何と説明すればいいのか? 現状を話したところで、wで済まされてしまうのが関の山。

 スマートフォンをしまい込む。今は使えるが、充電ができないので、いずれ、使えなくなるだろう。

 これから、どうなるのだろう、不安もあり、いろいろ考えているうちに、疲れとハンモックの心地よさに、いつの間にか悠也は、すやすやと寝息を立てていた。




 ジーニアスのゲル。

 炉で炙った干し肉をつまみに、パティとジーニアスは酒を飲み交わしていた。見た目は幼女でも、彼女は酒を飲める歳である。

 酒をグビグビ音を立てて飲み、ぷっはーと息を吐く。

「オイ、ジーニアス。あの黒衣の女神様をここに連れてきたのは、あの“力”を利用するためだけではないだろ」

 酒を飲みながら、ジーニアスは唇の両端を釣り上げた。

「これは戦争ですよ。でもね、神鎧族との戦争に勝利を収めたとしても、そこで戦争が終わったわけではない」




 ジーニアスの作ったコーヒーはカウボーイ・コーヒーと言い、昔、本で読んだことがあったので、このアジトなら、この淹れ方がいいかなと。

 当初、パティはロリババアにしようと思っていたのに、あんな風になってしまいました。

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