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<秘密結社>

 もちろん私とて、噂を耳にした当初から深刻に受け止めていたわけではありません。“秘密結社”なる単語が発する毒々しさ、胡散臭さ、面白半分の稚趣に眉を顰めはしたものの、教育の現場が抱える諸問題──いじめ、登校拒否、異性との行き過ぎた交際──が有する切羽詰まったリアリティを感じることはなかった。皮下でぶつぶつと粟立つ不快感を持て余しながらも、その噂を笑い飛ばすことができました。


 秘密結社ですって? 現代の、日本の、この学院の、しかも中等部に! 私への情報提供者となった数学教師も同様で、ひみつけっしゃ、と二度呟くと、なんか懐かしい響きよね、と言って微笑みました。


 確かに、公園のジャングルジムを“本部”にして“ひみつけっしゃ”を作ったことがあったかもしれません。いえ、段ボールの基地だったかしら? 実際に作ったかはともかく、そういったセピア色のファンタジーを誘発する力がある、ということなのでしょう。


 私たちはその後の話し合いで、恐らく教師非公認のサークル、同人、仲良しグループのようなものだろうから、敢えて干渉はせず静観しましょうとの取り決めを交わしたのです。

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