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<神秘>

 そして私も理解しました。恐らく、全てを。


 よくよく思い返してみれば、小此木真美は私の質問に正直に答えていたのです。私が、彼女の言葉を真摯に受け止めようとせず、追及を躱すために予め用意していた回答を提示しているのだと、端から思い込んでいただけで。


 ランスロット卿は誰? との問いに、小此木真美は私です、と答えました。そう、ランスロット卿はどこにもいない、故にどこにでもいるのです。私のいる所にいるのです。


 シャロットとなるべく選ばれた少女は、ある秘密めいた夜呼び出されて、ひとつの神秘を告げられます。その瞬間、少女の内に一人の美しい少年が、逞しい騎士が、物憂げな青年が現れて、少女と完全に一体化するのです。二人の恋人は、片時も離れることはありません。


 何故なら彼女は彼であり、彼は彼女なのだから。


 この夜の告白こそ、『シャロットの乙女』の入会儀式と言えましょう。もちろん、皆が通過できるわけではありません。ふざけないで、バカにしてるわと啖呵を切って、現実のランスロット卿を探すべく日常へ帰還する少女も数多いることでしょう。


 それでも彼女たちは、沈黙の掟だけは律儀に守り通します。これは私の推測に過ぎないのですが、シャロットにならなかったことによって失ってしまったもの、それへの甘い憧憬を含んだ敬意が、彼女たちに掟を守らせるのではないでしょうか。


 失ってしまったもの、それは神秘、無垢の白昼夢、静かな語らい、美しい夜。


 『シャロットの乙女』とは何か? との問いに、小此木真美はこう答えました。それは共有され私有され消費される神秘である、と。私はほんの少し言い換えて、次のように答えましょう。『シャロットの乙女』とは、非在の神秘を共有する者の緩やかで真摯な紐帯である、と。

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