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よく一人っ子の友人に、または弟がいる友人に「良いよな、如月は妹がいてさ」ななんて言われる事がある。
妹を持つ兄ならば誰しも経験があるんじゃないだろうか?
そして、そんな経験がある奴ならわかると思うが、リアル妹なんて萌えの欠片すら存在しない存在だと言うことを―――。
「お兄ぃ、ジュースぅ~」
特に家のはダメだ。いろんな意味で駄目すぎる!!
「それくらい自分でしろ!!」
「今手が離せないのっ!!オンラインなんだから!!」
そう言ってキーボードを奇人の如くニヤケ顔で連打しているのが我が妹にして居候、如月 うるう本人なのだから、これ以上説明しなくてもダメさ加減がわかってもらえただろう。
「あっ!!ちょまっ!?・・・もぉ!!お兄ぃがもたついてるから負けたじゃん!!」
まったくもっての八つ当たり、ジュースはお前の回復アイテムか何かなのか?
「よく飽きずにやってるよな…」
ある意味感心する。
「まぁ、ずっと同じのだと眠くなるから幾つかのストックを用意してあるよ。でもやっぱMMORPGが面白いよ♪」
「MMO?なんだそれ?」
「Massively Multiplayer Online Role-Playing Game、マッシブリー・マルチプレイ ヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲー ム)の略。意味的には大規模多人数同時参加型オンライン RPG。大勢でわいわいやるRPGってところかな」
少し自慢気な所がムカつく。どんな分野であれ、妹に遅れを取るのはいい心地がしないものだ。
「でねでね!!このMMOのいいところはなんと言ってもコミュ力の低いうるうでも友達を作れるってところなんだよ♪」
「・・・・・・」
「リアルと違って顔色を伺う事もないし、同じ目的があるから話題に困る事もないし、趣味趣向も似たり寄ったりだから話が弾む!!やればやるほど権力も地位も人望も得られる、努力が報われる素晴らしい世界なんだよ!!リアルに疲れた人のオアシス、もう1つのフロンティアと言っても過言じゃないんだよ!!」
「・・・そ、そうか、それは良かったな」
言ってて寂しく無いのか我が妹よ・・・。
中学に入ると同時に不登校の引きこもりに成り下がってしまったうるうは極度の人見知りで、小学生の頃も事あるごとに俺のクラスまで来ては俺の後ろに隠れていたくらいだ。
親しい友人はおろか、まともに話せる人すら片手で足るほどしかいない。
それを考えれば、うるうがネットゲームに魅了された理由も解らなくはないが、兄としては今後の妹の行く末を心配せずにはいられない。
これは決して、俺がシスコンだからではない。