悪の十字架
『ファイナルドラゴン Ⅺ』
8月2日発売!!!
「なんだってー!」
斉藤孝宏は
ネットのニュース欄を見て
思わず声を発してしまった
ファイナルドラゴン ※FD
とは発売日は行列必至の
大人気テレビゲーム
孝宏も、このゲームの
大ファンで
一作目から全てプレイしている
FDを手に入れた
日から数ヶ月は
ほとんど寝ずにゲームをするほど
このゲームにはハマっていた
まだ発売日まで一ヶ月以上あるが
このワクワク感は抑え切れなかった
お年玉も まだ残っている
大丈夫だ、これだけあれば買えるだろう
無駄遣いしなくて良かった
次の日 小学校に行くと
男子の間では
その話題で、もちきりだった
女子からは白い目で見られていたが
今は女子よりFDだ!
どんな物語だろうとか
どんな職業があるだろうとか
前作との繋がりは
あるのだろうかとか
話は尽きなかった
その日の帰りに
さっそく家電量販店の
ゲームコーナーで
FDを予約して家に帰った
それからは
勉強するときも
友達と遊んでいるときも
授業中も
親に怒られているときも
常にFDの事が頭の片隅にあった
毎日FDの事を考えていた
それだけ このゲームに
対する思い入れは大きく
発売日を指折り数えて待った
ついに明日だ!
明日は待ちに待った
FDの発売日
明日のために
体調を整え
お風呂で身を清め
その日は
早く就寝した
だけど
眠れなかった・・・結局
朝まで一睡もすることは出来なかった
夏休み中なので
学校などは無い
FDに集中することが出来る
山積みの宿題は
諦めていた・・・
大義を成し遂げるには
多少の犠牲は付き物だ
親と先生に怒られるのは
覚悟していた
痛みを伴わずに
遂行するのは不可能だ
孝宏の覚悟は本物だった
誰よりも早く起き
一人で食事を済ませ
一張羅
の服に着替え
父親に貰った腕時計をはめ
新品の靴を履き
颯爽と
家電量販店へと向かう!
今日は良い天気で
暑くなりそうな朝だった
太陽が孝宏を照らす
店に着くと
自動ドアの前に立つ
・・・・・・・・
開かない・・・
「えっ!どうして?」
センサーが反応しないのかと思い
動いたり
ドアの上のセンサーらしき物に
手を、かざしてみたが
ドアは開かない・・・
なぜ?
少し落ち着いて
目の前のガラスのドアを見ると
こう書いてあった。
営業時間
10:00~20:00
ハッ!と
左腕の時計を見る・・・
9時42分37秒・・・・
「なんだ、開くの10時か・・」
開くの10時か
あくのじゅうじか
悪の十字架
・・・・・・・・・・・
完