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無能な三十路ニートだけど異世界来た  作者: ガイアが俺輝けと囁いてる
~レズセはおやつに入らない~
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クソレズ脱却大作戦! 4

前回のあらすじ。


淡水の貝や甲殻類を生のまま食べさせるな。


子供のころから思ってたけど男子と違って女子のガチの争いは醜い。

というか顔をゆがめて泣いてたり絵面が汚いしワクワクもしない。

そうならないようなるべくソフトに仕上げたらシットコムみたいになった。

自分としては面白くかなりいい出来だと思ったのだが。うーん。


そんな感じだった。


「やだよ。とって逃げるでしょ。アンタ。」

私はオルタの要求を即座に拒否した。


「これ、元の持ち主に返さなきゃいけないから。なくしたら今度こそ絶交されちゃう。」

ぽろっとこぼした一言に、オルタが目を見開く。


「ん?お前、サカキに言われて私たち襲ってるんじゃないの?」

「違うよ。サカキさん関係ないもん。デバイス持って帰ったら紅茶くれるって言われて来てただけだし。」

別に悪い事しに来てるわけじゃないので、私は普通に目的をバラした。


「え、ちょっと待って。お前紅茶が欲しいだけで私たち襲ってるの?」

「襲ってないって。でも紅茶が欲しくて来てたのはそうだよ。」

「なんで?紅茶がなんで必要なの?」

「だってぇ。サカキさん絶対紅茶気に入りそうだし。飲ましてあげたら喜ぶじゃない」


私が手を頬に充てて照れながらそういうと、オルタは私をまるでキチガイを見るかのような目で見てくる。

「そっか…私。紅茶を手に入れるためだけに池に沈められたんだ…」

「それも違うよ。沈めたのは私じゃなくてゾンビの子たち。私は見てただけだから」

行き違いと勘違いで私のせいにされたらたまらない。誤解を解こうとそう言ったけど、なおさら私を変な目で見てくる。

まあいいか。言ってもわからない子は何回言っても理解してくれないし。


「だから、ブローチは渡せない。これ以上デバイスなくしたら、博士に絶交されちゃう」

私はふいと視線を逸らすと、ポンポンとスカートを叩き、帯に挟んでるブローチが無くなってないかを確かめた。

「でもブローチないと状況変わんないし。じゃあ代わりにこの笛を預けるってのでどう?」

「さっきの?…ていうか、それフリードさんが持ってたやつじゃん。なんであんたが持ってるの?」

「食事の際にテーブルに置いてたから、逃げるときにササッとね。」


手渡された首にかけるひも付きの棒状の小さな笛はデバイスに特徴的な柄が施されていてきらきら光っている。

本物かとボードを使って確かめても間違いない。


「使い方はさっき私が使ってた通り。吹けば音響反射で生き物の位置がわかるスキルがついてる。もともとのデザインが犬笛だからその用途にも使えるけどね。」


ふうん。オルタの口紅が付いたそれをゴシゴシ拭いて、試しに口につけて息を吐くと、確かに数人の人影が壁から斜め下7mほどに集まっているような感覚を感じる。

ちょっと便利かも。とスヒスヒ吹いていると、オルタが催促するかのように再び手を出してきた。


「ちゃんと返してよ。黙って持ってきちゃってるんだから」

スカートの帯の裏に留めていたブローチを外してオルタに渡してやる。

受け取ったオルタはブローチが汚いとばかりにハンカチでふきふきしていたが、やがて日にかざし、うんと頷くと、長椅子を触りながら、厳かな調子で呟き始めた。


「万物に宿れる精霊よ。このものを器とする許可を我が与えん。その対価として、我が命を聞き、我が僕となりて我を助けよ」


オルタが言い終わや否や椅子がブルブル震えて足がぐにゃりと折れ曲がった。

固い木でできているはずの足はくの字に曲がり、四本足で器用にオルタの周りをくるくると歩き回る。


「すごーい!何それ。」

「このブローチに設定されてるスキルはゴーレムづくり。滅多にない超レアスキルなのよ」

オルタは長椅子をよしよしと撫でながら、勝ち誇るように自慢してきた。


「これ一つで兵隊から召使、荷運びから乗り物替わりまで何でもこなせる最強魔道具なんだから。」

オルタに同調するかのように長椅子が犬のように後ろ足(?)を折りたたみお座りしている。

長椅子がまるで主人に従う忠犬のような姿に私はすっかり心奪われてしまった。


「ねえ、やっぱりそれ返して。」

臆面なく私が手を出してそういうと、オルタは心底嫌そうな顔をした。


「別に言われなくても、ここから逃げれたらすぐ返すわよ。私の大切な笛と交換でね。だけど今それどころじゃないでしょ。」

オルタに言われ、それもそうかと納得したけれど。

頭の中では私は追い詰められているのも忘れて、家に帰ったらどの家具を動かそうかと考えるのに夢中になっていた。



―――――――――




私がドアを開けるや否や、長椅子が4足で軽快に飛び出していく。

しばらく様子をうかがっていると、どたどた追いかける音がし始めた。

廊下に誰もいないことを確認し、そっと部屋を抜けて食堂の吹き抜けから手すりに隠れつつ下をみると、テーブルの周囲をたったか回る椅子ゴーレムを追いかける3人の人影。

長椅子は所詮長椅子なせいか動きが遅いが、追う人影も虫に体を蝕まれているせいか、負けず劣らず遅い。

少しずつ距離を詰められてるが長テーブルだし、ある程度は注意を引き続けれるだろう。


そういえば、ジェスはと思い、食堂を見渡すと、階段のそばで倒れている彼を発見。

ズボンがひざ下まで引き下ろされており、ケツの周囲が赤くなってる。まあそれだけなら『あのスケベついに自分がやられちゃったかぁ。ご愁傷様。メイファさんを虐めてた罰よ』ってだけだけど。その赤くなったケツから白い糸みたいなものが伸びて薄い繭のように上半身を覆っている姿を見ると笑ってもいられない。やはりフリードたちに捕まればろくでもないことになるようだ。


「じゃあ、さっそく逃げようか」

奴らがテーブルを回っているうちに階段を降り、すぐ近くの食堂正面のドアから出て玄関から抜けるルート。

そこを走り抜けようと、オルタに声をかける。

「わかった。でもさっきみたいに私を置いてかないでよ。お前が二回も私を置き去りにしてるって事忘れてないんだから。」

「いやそんな事してないし。でもそう思われてるならごめん。次は置いてかないから。」


そんな事を言いながら私たちは階段に向かって歩き出す。

下の追いかけっこを眺めながらふと気づいたけど、よく見たら3人しかいない。

後二人。どこ行った?

とピタッと止まって私は首から下げた笛を吹いてみた。


「ちょっと。お前何止まってるの?先行くよ。」

私の数歩先でオルタがこちらを見た。彼女のあと半歩先にドアがあった。


私は笛を口に咥えたまま、思わず後ずさる。

「おい。オルミア。置いてい…」

勘がいいオルタは私が後ずさりしているのに気付き、はっと後ろを見た。


彼女が振り向いた時にはすでにドアは勢いよく開き、

飛び出した人影がオルタに手を伸ばしているところだった。



再開する前に某所で一話5000文字以上ないのはダメと聞いて

再開後意図的に増やしてたけど書きにくいので

むかしから場面の切り替えにちょうどいい3000字ぐらいで

ぶつ切りにするスタイルだったからそれに戻そうかと思います。

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