クソレズ脱却大作戦! 3
前回のあらすじ
いかついけどすごくいい男だったフリードさんと4人の仲間がおかしくなって
女を食い物にする仕事サボりスケベやろーが天誅された。
めでたしめでたし。
ちょっと違う気もするけどそんなかんじだった。
「何よあれ。ここの男のアレ。あれが普通レベル?ていうか、体、おかしかったよね。」
扉に鍵を掛けると力が抜け、床に座り込んだ私は息を切らすオルタにそう聞いた。
「知らないわよ。アンタが何かやったんでしょ。このカマトトレズ女」
オルタも同じように床に座り込み、ふてぶてしく私に突っかかってくる。
「知らないよ。それに何よその態度。『まってぇまってぇ』と懇願してきたからわざわざ待って入れてあげたのに。」
ちょっとイラっとしつつ、周りを見渡す。20cm程度の小さな窓から入る明かりは心もとなく、部屋が薄暗くてよく見えなかったが、目が慣れてくると部屋の中は一人用の長椅子テーブルセットが一つ。大きめのハンガーラックに警備の制服や普段着がズラッと並んでいるほかはシングルベッドしかない部屋だとわかった。
「はっ。男の前だからと、同情買おうと抵抗せずしおらしくアンアン喘いでたくせに」
同じように何かないかと周囲を探っていたオルタも部屋の中にろくな物はないのを確認したのか、ため息をついて、私に反撃してくる。先ほど電気あんまで悶えてしまったことを言われて、言い返せずに言葉に詰まってしまった。オルタもそれが効いたと分かったのかさらに畳みかけてくる。
「なっさけな。この前、私はアンタにレイプされかけたけど、毅然と抵抗してたわよ。さっきの何あれ。固まって半べそかいてさ。あそこ蹴られて『あうん』って。」
そのまま、『あうんっあうんっ』と口を尖らせて私の悶え声を繰り返すオルタ。
馬鹿じゃないの。子供じゃあるまいし、こんな挑発に乗るのは癪だ。
私が大人になって終わらそう。
「女の前で脱がされるのと、男の前で脱がされるの全然違うのよ。分かってやった癖に!」
私がそう言って黙ると、オルタは口げんかに勝ったと思ったのか、満足そうにせせら笑った。
そんな様子にイラつく自分の気持ちを切り替えるため、開いたままのブラウスの前を閉じようとボタンを手探りでつけていく。
「あっ真ん中のボタン飛んでる。これサカキさんが選んでくれたやつなのに。」
思わずあげてしまった落胆の声はオルタの嗜虐心をよほど刺激したのか、彼女はゲラゲラ笑いだした。
「昔からサカキ派閥って、何かとサカキサカキって言うのキメーと思ってたけど、変わんねえな。サカキ取り合った挙げ句に、気を引きたくて店の売上伸ばそうと男に股開いて営業かけまくるの本末転倒で頭狂ってるよね。みんな脳無しワンパターン。」
サカキさんたちへの罵倒の最後にトドメとばかりに頭をツンと指で突っつかれた瞬間、私の堪忍袋の緒が切れた。
「この嘘つきチビ!調子乗りやがって!」
飛びかかり、馬乗りになると、お前も同じ目に合わしてやろうとオルタの可愛らしいセーターをたくし上げて一気に引き抜く。シャツごと脱げて貧相な体が空気にさらされた。
男の前で裸にされると怖くて動けなくなるほど効果的と学習したばかりだ。上も下もスッポンポンにして、部屋から放り出してやろう。
裸で男に囲まれて泣きじゃくるがいい!とスカートに手をやるが、敵もさるもの私のブラウスを引っ張り、脱がしてくる。そのまま互いの服を引っ張りあってると、びしゃっと水につけた布を床に落としたような音が部屋に響いてきた。
それまでとは異質な音に何事?と互いの手を抑えたままフリーズ。上の私も下のオルタもブラのみの上、ズレてて胸がまるだし。背が高めの私とロリチビのオルタが絡まった光景はまるで家庭教師と女子高生のレズAVを一時停止したみたいだった。
そんな状態で聞き耳を立てると、部屋の外でベチャベチャと濡れたモップを床に叩きつけるような音が再び聞こえてきた。規則正しいそのリズムはドアの前までゆっくりと近づいてくる。
私たちは半裸レズシーンのままドアから目を離せないでいた。
いきなりドンっと重量のあるものがぶつかる音とともに、ドアが激しく揺れた。
鍵を掛けたといっても、屋内用のドアで鍵もちゃちなものだ。衝撃とともに、ドアはひずみ、隙間から明るい光が入り込んでくる。何とか耐えたみたいだが、ドアの前にいる何者かは、さらにガンガンとドアに体当たりしてくる。外開きだからぶつかられてもある程度は持つだろうけど、破られるのも時間の問題だ。
「ヤバ…あんたが喧嘩吹っ掛けてくるから…」
「どうするの。ちょっとあんたが暴れ始めたんだから、あんたが何とかしてよ」
ひそひそ声でレズシーンのまま互いに責任をなすり付けるけど、どっちが立ち向かっても所詮は女。大柄な本職警備に勝てるとは思えない。一人5秒もかけずに殴り倒されて終わりだろう。その後どうなるかわかんないけど、異常に肥大したキンタマに繋がる尿道からクソ長いミミズを出し入れしてるイチモツを突っ込まれてまともな体でいられるとはとても思えない。
オルタに責任を押し付けても意味がない。そう判断した私はゆっくりとズレたブラを直しながら
「か、隠れよう。私たちの争う音は聞こえたけど、この部屋からかは分かってないかもしれないし」
とひそひそと現実的な提案をした。
「え?どこに?この部屋の?どこへ?」
オルタは押し倒されたまま首をくるりと回して部屋を見渡し、ひそひそそう呟いた。
そりゃそうだ。だってこの部屋クローゼットも押し入れもなくて、あるのはハンガーラックと長椅子・テーブルセット。それにシングルベッドぐらい。長椅子もベッドの下も装飾もなくスカスカで非常に見通しがいい。
『さあさ、ここで選択権は上側をキープしているオルミアさんから。一番助かりそうなのを選んでください。はいカウントダウン、スタート!』
と頭の中で謎の司会者が喋る声がした。
「じゃ、じゃあ、あたしベッドに隠れるから、あんた好きにして。」
私は選択肢の中で一番マシなものを選ぶと、一足お先にレズシーンから離脱。ベッドに飛び込み、頭から布団をかぶった。
「ず、ずるい。私もベッドがいい。」
私を一人にしないでとばかりに、オルタが布団に飛び込んでくる。
「ねえ、もう少し布団頂戴。はみ出てるの」
「こっちも無理。もっとくっついてよ」
ドガンドガンと鳴り響く音に怯えつつ、私たちは肌を密着させて何とか隠れようとするけど、ハッキリ言って無理。どう考えても布団膨らむもん。どんな馬鹿でも膨らんでる布団見たら隠れてるってわかるじゃん。
というか、こんな時だけど、オルタ、前に胸見た時はそばかすみたいな染みだらけでザラザラ肌のイメージがあったんだけど思ったよりすべっとした肌だ。小さくてこの触り心地ならあのジェスが貢ぎたくなったのもわからないでもない。同じすべすべでもサカキさんみたいなしっとりした芳醇な感じは背徳的な感じも相まって狂おしくてたまらなくなるけど、こういうすべっとした田舎育ちの健康ですと言いたげな感じはこれはこれでわからないでもない。なんていうかスポーティだ。服を着て染みを隠してれば普段は見られないだろうし。
ん。とそこまで考えたところで、私の頭にひらめきが生まれた。
「ねえ、ちょっとあんた何かで窓ふさいでくれる?その間に私、見つからない方法があるかやってみるから。」
私はそう言って、ベッドから滑り出た。
――――――――
ガンガンと続く体当たりで、ドアの鍵がついに限界を迎えた。バキッと割れる音がして、部屋の明るさがさらに高まる。しかしその光は部屋の中ほどまでしか照らさず、ベッドはかろうじてその闇の衣をはぎ取られずに済んでいた。
光り輝く入り口から、窓をふさがれた暗闇の部屋に、ビチャビチャと音を立てて男が入ってくる。
隠れる布の隙間から、男の姿を見てみると、服が着崩れて乱れており、ズボンはどこぞで脱いだのか穿いていない。そのむき出しの両足は皮膚がダルダルと垂れ下がって層をなしているうえに、ひどく粘膜のような水気と粘りを持っており、それらが男が歩くたびに体に打ち付けられることであのモップを床につけるような音の原因になっていた。
「あー・・・ははは」
男は膨らんだベッドに気づいたようで獲物を見つけたとばかりに笑い声をあげて、近づいていく。こちらに歩き出した時、男の顔が見えた。顔の肉も足と同様に皮膚が伸びて垂れ下がり、髪もだいぶ抜けていてもう誰だかわからなかった。
動かずに様子をうかがう自分の心臓の音が聞こえる。もう男と表現するのも憚られるそれが近づくにつれて心臓が高鳴る。
ついに皮膚が垂れ下がった手が布団にかかる。
そのまま思いっきり布団が捲られて、中身がさらけ出される。
「おんな、いな、い。となり。か。」
それが再びびちゃびちゃと音を立ててドアを抜けていく。
「いったかな?」
しばらくして自分でも聞き取りにくいほどの声で私が聞く。
オルタが「まって」と言い、懐から出した小さな笛を吹く。音は聞こえないけど、オルタは何か分かったみたいで、「行ったみたい」と服の隙間から顔を出した。私も同じくハンガーラックに並んだ衣服の隙間から顔を突き出す。部屋は薄暗く、ドアが半開きになっていた。
やれやれ、と私は長椅子から床に足を下ろす。膝を抱えて音を立てないようにしていた時間は短かったけど、もう足がぱんぱんにきつい。パキッと骨が鳴る音が響いて、オルタに睨みつけられてしまった。
怒り出すかな?と思ったが、ふんと目をそらされる。
どうやら私の考えたうまい隠れ方に乗っかかった以上、私に突っかかるのはプライドが許さなかったようだ。そのまま彼女は笛を口にしたまま、ドアにそっと近寄っていき、ゆっくりと閉じた。
鍵は掛けれないけど、閉じるだけで安心感が違う。もう暗さも必要ないと窓を覆う布を外すと部屋の全景が照らし出された。
しかし、あのままベッドに隠れてなくてよかった。と私はハンガーラックの下の長椅子に目をやる。
その高さはちょうどいい感じに並ぶ衣服の裾と同じ高さだ。長椅子の座板がちょうど衣服で隠れて見えなくなる高さというミラクル。長椅子がハンガーラックの下にちょうどおける長さのミラクル。そしてハンガーラックの衣服に長椅子の上に膝を抱えた女二人が挟まっても、違和感がない量の衣類がかかっているミラクル。偶然に偶然が重なって、上に乗って衣服に紛れるとそこに誰もいないように見えるその隠れ場所は私たちをあの化け物から隠してくれた。
隠れ場所に感謝しつつ、静かに私たちは服を着始めた。
「ねえヤバイしここは休戦しない?」
今更の如く、ブラウスに袖を通しながら私が言うと、オルタも不承不承頷く。
「明らかにゾンビとは違うなんかに変わってるよね。あいつら。」
歩み寄ろうと話題を振ってくれた。
「なんだろうね。なんかびちゃびちゃ音がしてるし。」
といって化け物が歩いたところを見てみると、水がたまっていた。
「キモ。なにこれ?精液?これ全部?」
オルタの感想の通り、液体は水とは違い白濁してて、少し粘性が高くて固まっているように見える。
なんだろうとテーブルの上にあったフォークでかき回してみると、白い筋のようなものが蠢いて液体から這い出てきた。
「うわっ何してんのあんた。そんなもんかき回してるんじゃないわよ」
「あ、ごめん。気になってさ。なんであんなふうになったのかって。虫かな。これ。寄生虫?」
やっぱわかんないね。と誤魔化したけど、私、すごく心当たりがあった。
だって、これカニの肉からはみ出てきたあれだもん。
思い返せば、さっきの尿道から出てきてたミミズみたいの。
巻き貝の動く筋と長さ以外同じ形だもん。
でもおかしいな。この前食べさせたときは大丈夫だったのに。
なんでだろ・・・潜伏期間?それでもタイミングができすぎてるよね。
そういえば、様子がおかしくなったのは、カニ貝丼を食べてる最中だったし、カニや貝の匂いか何かが引き金で潜伏してるのが発症するとか?
うーんと白い筋を見つめながら考えていると、オルタが私を怪しむかのように見ているのに気づいた。
「あ、そういえばこの前、四流とか言ってごめんね。さっき抱き合ったときのオルタの肌、すべすべだったよ。ちゃんと手入れしてたんだね。」
私のせいってバレるのが怖くなって、思わず誤魔化した。
「何それ。キモイんだけど。そういうのはサカキたちとやってよ。こっち巻き込まないでくれる?」
急に自分の肌の話題をされて、オルタは露骨に嫌そうな顔をしてそっぽを向いた。でも褒められているのはわかったようで言葉のナイフにイマイチ切れ味がなくなっていた。
「まあ、助け合いって言うなら、私もやるけどさぁ。あんた。ブローチある?」
照れ隠しか、オルタが必要以上に蓮っ葉な態度でぞんざいに聞いてくる。
「あ、持ってる。」
「よし、それかせ。」
オルタは早うよこせとばかりに手を差し出し、クイクイと指を曲げて催促してきた。