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無能な三十路ニートだけど異世界来た  作者: ガイアが俺輝けと囁いてる
~レズセはおやつに入らない~
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レズセはおやつに入らない

前回のあらすじ。


ガイアの独り言。


あかん。戦力バランスくるっとるわ。何回書き直してもオルミア圧勝してまう。

黒白こいつらなんやねん。

9年前のワイが20分で考えた適当な存在なくせに異常に強すぎやろ…

そもそもこいつらはぐれた後、オルミアが二人がかりでリョナられた所に助けに来る役やろ。

なんで最初からこいつらおるねん。

なんでこんなんなったねん。

…ん!生のカニ貝丼のせいや!あそこで突っ込み役が欲しくなって書き換えとるわ。ワイ!

どうしたらええんや!今から変えられへんし…

せや!

女に人質取らせるんや!これでいけるやろ!書き直しや!


…あかん。黒が普通に透明になって首刎ねおったわ…ドン引きやわ…

人質あかんな。

どうしたらええんや…

せや!

いっそのこと黒白Nerfしたろ!

これでいけるやろ!書き直しや!


…あかん、この弱さ普通に博士の医務室が襲われるわ。

主力やったわあいつら。

Nerfしたら博士の医療所、希少品奪い放題のボーナスステージになるわ。

ついてきたの受付のサビ猫ぐらいにしとけばよかったわ。

どうしたらええんや…

せや!

女が建物に放火しまくって、やめろと説得してる間にオルミアに殴らせて黒白の戦闘なくしてまえ!

ハゲとの闘いも、女の子使ってタイマンや!

これでいけるやろ!書き直しや!


…あかん。タイマンだと普通にオルミア勝ちおるわ。

ステが基本的にハゲの上位互換やからな…

しかも戦闘も足引っ張ったり灰皿うばいあったり低レベルで見るとこないし。


オルミア高笑いしとるわ。

書いとる作者ワイに勝ち誇ってハゲを足蹴に高笑いしとるわ…

紙面の上でオーホッホッホいっとるわ。


なんやねんこのクソレズ。空気読めや。ワイはお前が能力自体は低レベルな二人にボコられて半裸に剥かれて髪引っ張られて引きずりまわされる最高に可愛いシーンを書きたくてここまで頑張ったのに、なんやねん。これ。なんでこんなにこいつ運がいいねん。作者の魔の手から逃げるとか相当やぞ。


しかも一生懸命ボコられようとした結果、文字数3万いっとるわ。楽しくない上に読むのも苦痛やわ。

…腹立つし戦闘シーン全部削ったるか。

いらんやろ。こいつの活躍シーンとか。

そんなの読みたがる奇特な読者もおらんやろ。


…スカスカになったな。

こんなん出してええんやろか。

まあ後はハゲ連れ帰って…


…あかん。連れ帰ったら黒白どころか存在チートな博士まで仲間に入るわ。

博士おったらもうこの地域で圧勝してしまうわ。

どうしたらええんや…

せや!

ゾンビたち使ってハゲ池に沈めたろ!

ついでにライバルキャラになり損ねた女も沈めて処分や!

無駄な殺生に係った事で黒白に嫌われる理由にもなって、一石二鳥や!


…ふう何とかなったな。

でもこんなの出してええんやろか?なんの面白みもないで…


というか、ワイが七転八倒しとるこの状況の方が面白ないか?これ。


せや!

もうここの話を諦めて、次回の前書きをオチに使ったギャグにしよ!

今までの経験上、この八方ふさがり方はエタるか数か月以上放置されるやつやし!

放置よりは文句言われんやろ!


これで問題解決や!これで書きたい話を書けるで!





そんな感じだった。


「ねえ、もうこんなスカデータ見るのやめて、こっち見ようよ」

こっちのブローチなら当たりかもしれないじゃん。と私が腕輪を取り表示を消すと、博士は『ああっ』と叫んで、私が持つ腕輪を追いかけ前かがみになり、椅子から転げ落ちた。


「あっ。危ない。ちょっと。」

べちゃっと床から掴みかかってくる博士を押しとどめたとき持っていた腕輪を落としてしまい、腕輪がころころと転がっていく。博士がペタペタと四つん這いで追いかけるも、運悪く戸棚の隙間に滑り込んでしまって見えなくなってしまった。


「あ、ごめんね。とれるかな?ダメか。動きそうにないね。これ。」

書類の詰まった戸棚は私の力でもびくともしない。足の悪い博士ではなおさら動きそうもなかった。


「…消えて、無くなってしまったのです。」

博士は戸棚と床のわずかな隙間を見つめながら、茫然としていた。


「ついてないな。これ動かすの無理でしょ。大人数人がかりだよ。この大きさ」

私は高さ3mほどある金属の戸棚を見上げてポリポリと頭を掻いた。中の書類をどかしても、女の力じゃピクリともしそうにない。


「まあ、さ。中身見た後でよかったじゃん。もともと盗まれてたやつだし。スカデータなら博士が探してるスキルに関係しないし。そのまま放置でもいいじゃない?」

私は申し訳ない気持ち半分、責任回避したい気持ち半分で軽くそう言った。


博士は何も言わず、ただ隙間をじっと見ていた。


「とりあえずさ。そのゴミみたいなデータほっといて、こっち見ようよ。こっちは博士の欲しいものかも…」

床に座り込んだ博士の後ろ姿に私がそう続けたとき、博士がゆっくりとこっちを向いた。

悲しんでる顔でもなく、困った顔でもなかった。ただ無表情で、知らない人が家にいた時に子供がするような排他的な感じだった。


「・・・博士?怒ってる?」

私はあわててご機嫌伺いするかのように、笑いかけた。

だって、意地悪しようとしたわけじゃなくて、私の中では事故だったし、悪気はなかったし、悪いと思ってないわけでもないし。


「オルミアさん。お疲れさまでした。もうお帰りください。」

博士は椅子に手をかけ、ゆっくりと床から体を持ち上げながら、私をまっすぐ見てそう言った。


「いや、本当にごめんなさい。でもわざとじゃないの。」

「そう言う事ではありません。もう貴女は治療も済んでおりますし、他の患者の診察もありますので」

「いや、話し方。今までそんなしっかりした話し方しなかったじゃない。」

「もうこれ以上、おられてはご迷惑ですから」

「迷惑って、なによ。もうそんな言い方。ね。ごめんって。だから気を取り直してあんなスカじゃなくてこっち見てみようよ。博士が探してるものかもよ?」


私は精一杯、馬鹿ながらもご機嫌取りしようとブローチを差し出した。


「うるさい!何がスカですか!馬鹿にするのもいい加減にするのです!」

博士が差し出した私の手を叩いてブローチが吹き飛ぶ。

慌てて拾い上げて、顔を上げると、博士は半泣きでこちらを睨んでいた。


「何よ。なんなのよ。そんなに怒らなくても」

「もういい!出てけオルミア!」

「なによ、私だって、私だって。もういいわ!」


掛けていたコートをいそいそと取って逃げるようにドアを抜ける。

後ろを見るのが怖くて、顔を見れなくて、でも閉まる前に何か言わずにはいられなくて。

「もう博士なんか知らないから。手伝ってあげないからね」

何の意味にもならない捨て台詞を吐かずにはいられなかった。


帰り道の中でも、私は博士と交わした一字一句思い出しては文句を言い続けてたけど。


思い出して一番嫌だったのは、

いつもは幼い子供みたいにお姉ちゃんと

呼んでくれてた彼女が私を名前で呼んだことだった。



――――――――――



「お帰りなさいませ。お姉さま。」

どうしようもないほど暗い顔をしている私を出迎えたのは、綺麗なメイド服に身を包んだ左手が骨だけの女の子だった。


「あ、うん。ただいま。」

泣きそうになってる顔を新参者に見られたくなくて、私は顔をそらして返事もそこそこに自室に向かう。

「コートお預かりしましょうか?」

後ろから声をかけてくるが、手を振ってぞんざいに断ると自室に入り、ドアに鍵をかける。


窓際のベッドにぼすんと飛び込むと、とたんに涙がはらはらと流れてきた。

原因は2つあった。

一つはさっきの博士との喧嘩。

説明する必要さえない。よく考えたら私が悪いんだけど、あそこまで拒絶されるとこっちだって怒れて来ちゃうから。


もう一つは、さっきいたゾンビの女の子。

正確に言うなら女の子たち。


この前助けた可愛いゾンビの女の子はサカキさんのとこの子だった。

私より若いし、しっかりしてる。名前はシノちゃん。

いわゆる絵にかいたような『使える子』だ。


他にもあの時助けた人間の中にもサカキさんの娼館出身の子は2人混じってた。

両方ともシノちゃんほどではないが、サカキさんにちゃんと仕込まれた『使える子』で、市場に連れてこられた彼女たちを見つけたサカキさんはそれ以来、付きっ切りで介抱したり、行方の知れない子たちの情報を聞いては涙したりで忙しく、私の所に来ることがない。




当然、私は面白くない。

そもそもサカキさんとイチャイチャしたくて、危険なとこに行ったのに、結果としてサカキさんは他の女にとられるだけという、骨折り損のくたびれ儲けだからだ。


しかも3人とも私よりサカキさんと関係が長くて、なおかつ所作振る舞いがなんていうか、こう見目麗しい。いや、並べたら私の方が美人、とたぶん言ってくれる人は多いと思う。7割ぐらいは。まあ、一人はゾンビだし。


でも、彼女たちの動きとか歩き方とか話し方とか表情とか。

そういうのが、すごく差があるというか。ぶっちゃけ彼女たちに比べれば私はゴミ。

彼女たちを茶道部部員だとすれば、私はウサギ飼育係ぐらい人への対応がガサツ。


話題も広くて、どんな人にも合わせられるし。

男連中も私と話す時と全然違う。私と話す時は真面目な調子を崩さないユージとかも彼女たちとは自然に笑ってるし。なにより帰ってきた日にはもうファミリーの家事や業務を手伝ってた。

ここ二週間の私は家でお菓子を食べて寝て、サカキさんにまとわりつく生活だったのに。


だから、私はわずか三日だというのに、この家で浮いていて、少し孤立してる。

今まで一番ちやほやされてたから落差に適応できてないって言われればそれまでなんだけど。


それから抜け出そうと博士のところに行ったらアレなのだ。

みんなの気を引こうと期待していた紅茶も立ち消えで踏んだり蹴ったりだ。


シノちゃんから見たら、さぞかし情緒不安定なクソ女に見えてると思う。

それでも、自分が今までいたポジションを奪われて、なおかつ私より皆と仲が良くて、こちらを嫌ってもいなかったら、不満をぶつけるところもなくて自分ではどうしようもない。


このままじゃ、余計に好かれなくなる。

なんとなくだけど、そう思い、コウサを探して何か私にも手伝えることがないか聞いてみた。



――――――――――



「おい姉ちゃん。これ焦げてたぞ。新しいのと変えてくれよ」


市場の屋台にたつ私に案の定クレームが来た。

人がひっきりなしに来るから、焼くのと会計とを同時に行っていて、渡す時に『これ大丈夫かな?出したら駄目なんじゃないかな?』と品質に疑問を持ったやつだった。


「あっと、ごめんなさい。今作り直します」

慌てて鉄板に生地を引いて作り直そうとするけど、焦ってぐちゃぐちゃになるし、隣あったものとくっついて丸めれなくなるしグズグズしているうちに、後ろで見ていたおじさんにどいてと言われ、鉄板から下がる。


「すいまへんな。あの子慣れてないんで。」

白髪交じりの短髪をぺこぺこと必要以上に下げて袋を渡すと、お客さんは満足して帰っていった。


「まあ、才能というより、慣れだしな。サカキの元じゃこういう仕事は仕込まへんしな。」

そういわれて、私は目の前の鉄板を再び見る。

売っているものの名前は何だったか忘れたけど、鉄板の上に5cmぐらいの生地を伸ばして少しの刻み野菜と肉みそを内側に塗ってクルクル巻く食べ物だ。丸めると直径二センチ長さ四センチサイズの円柱状になり、それを6つで1セット。干した笹のような葉っぱにくるんで貰う代金は30ピクル(約300円)。


おじさんは気を使って言ってくれるが、そんなに難しい手順もないし、同じものを子供が作ってる屋台が市場の南側にもあって、ある程度定番的なもの。だから私でも一個だけ作るなら問題なく作れるんだけど、一度に何個も焼くと、タイミングが遅れて、ちょっとおかしくなる。


「昼からはコウサが来るし、今日はここまででええで。」

いつも通りそういわれ、頭を下げて家路についた。


コウサの紹介してくれた仕事を手伝って3日たったけど、毎日がこんな調子で逆に気を使われて、自信がどんどんなくなってきてる。


家につき、少しおなかが減ってて食堂に行くと、普通に私用のケーキがおいてあった。サカキさんが他の子と食べたんだろうクリームのついた空のお皿も置いてある。隣の部屋から楽しそうな話し声がしてる。つい6日前はそこは私の席だったのに。と嫉妬しながら少し覗いたら、サカキさんがカミソリで手に傷をつけて血を布に染みさせ、女の子ゾンビにあげてた。女の子が布を口に含む姿をそれを眺めてるサカキさんのその表情を見た時、明らかにご飯をあげてるだけじゃないってわかってそっと見るのをやめる。


忘れられてるわけではないし、冷たくされてるわけでもない。でも私は特別じゃなかったんだなと悲しくなる。

でも文句を言う気にはなれなかった。私だって、愛嬌があって要領もよくて、明るい子が居たらそっちと一緒にいたいもの。

悔しいから、自分もそうなろうと思うけど、私ものぐさだし。化粧もうまくできないし。話は下手だし。いきなり並ぼうとしても、上手くいかない。


みんなの分のおやつのお皿も洗って、そこにいるのも居心地悪く、外に出る。

私の居場所が欲しくて、ふと、北東のお屋敷の事を思い出して、向かってみることにした。


お屋敷への途中、中央ギルドの前を通るときに診察室を外から見てみたら、診察室の中に博士が居たので、思わず手を振った。


博士はこっちに気づいたけど、


すぐに白と黒がカーテンを閉じた。

絶対に私だってわかったはずなのに。


あんな別れ方じゃ、嫌われて、嫌われても仕方ないけれど、こんなに嫌わなくてもいいじゃないと私は歯噛みして歩みを早める。


着いた北東のお屋敷は鍵がかかっていた。

前みたいに張り紙の一つでもあるかと思ったけどない。

ぽつんと入り口の階段に腰掛けて私は1時間ほど待ってみた。

そろそろあったかくなってきてるけど、ケープコートから出た頬に風が吹きつけて、心細くなってくる。

北東のここら辺は、人もいないのか私のほかには人影もない。

城壁の外も赤土が所々に目立つ荒れた道で誰も通りがからない。


私は冷えて冷たくなった頬を左手で拭うと、立ち上がって歩き出した。

どんなに居心地が悪くても今の私にはもうあの場所しかないのだ。


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