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無能な三十路ニートだけど異世界来た  作者: ガイアが俺輝けと囁いてる
第二部 オルミアの手にひかれて ~新たなる目覚め~
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よほどのことがない限り外には出ないように 4

『今回』のあらすじ


3度目の正直とか

仏の顔も三度までとか

三枚のお札とか

三回周ってワンと言えとか


日本人って3が好きなんですかね


と書いてて思いました

「姉さん、止まっちまったな」

「おーい。大丈夫か?」


明らかにまともじゃない人たちの群れの真ん中に飛び込んだ私は、当たり前のようにその場でフリーズした。骸骨が近づいただけで話せなくなるぐらいだから当然だ。上半身裸のおじさんやスーツ姿の若い男の子が目の前でぶんぶん手を振っているが、全く言葉が出てこない。そのうちに男の子が私に手を伸ばしたので、びくっと体を震わせて、そのままその場に座り込んでしまった。


「あーこら。うちらに驚いとるんやろ。あんたら自分らの見た目、考えんと。」

言われてスーツの男の子が『へい』と声を上げて後ずさる。ちょうど彼の後ろにいた声の主、ござの上に座っている着物姿の女性が水たばこのパイプを手に持ちながらこっちを見ていた。


「すまんなぁ。びっくりしたやろ。家の中で吸うのできへんから、ばっちいけど、ござしいて路上で吸わしてもろうてん。」

やれやれ、とばかりにパイプを皿の上に置き、私の横にやってくると、普通に横に座り腰に手を回してくる。藤の花のような匂いが自然と漂っていて、それがよく似合っていた。

「大丈夫?怪我してへん?」

年のころ三十後半かそこらの女性特有の落ち着いたトーンで問いかけられ、思わず『あ、大丈夫です』と返してしまう。それに安心したのか、にこやかにほほ笑えむと、横顔を隠していた私の髪に手をかけ、さらりと背中にまわした。


「あら、あんた可愛らしいな。背が高めやけど、化粧すればそれなりに売れそうやな」

横顔を覗き込むと、優しそうな顔でそう続ける。その言葉を聞いて白髪に着流しの男が口をはさんできた。


「サカキさん。もう店もないのにスカウトしないでくれや。今、金にならん子を食わせてく余裕なんかないで。」

「わかっとるわ。いちいち言われんでも、そんなんせえへんわ。」

話に割り込まれた事にいら立ちを隠さず、サカキと言われた女は言い訳のようにそういうと、私の手を取って、共に立ち上がらせた。

「で、あんた下向いて歩いて、なんか困った事でもあったの?」

「いえ、特に」

「そんなことあらへんやろ。言うてみいや」

「…下着とロリエがなくて」

「ロリエ?」


女が何のことだとでも言うような声を上げる。

「あ、サカキさん、それ」

スーツ姿の男の子が知ってたようで、サカキさんに耳打ちすると、ああ、わかったとばかりに笑った。

「確かにないのはつらいね。うちの持ってるの分けたげるわ」

そういうと、壁にもたれていた女性に水たばこの器具を片付けるように声をかけ、家の中に私を連れ込んだ。


――――


『これぐらいのサイズなら合わへんかな』『毎日使うものやから』等、いろいろ言いながらサカキさんは私の上半身を裸にし、どこから持ってきたのかいろいろなサイズの下着を試していく。付けただけでは終わらず、わきの下の肉を集めて詰め込むようにカップに入れて大きく見せるやり方などを教えてくれたり、必要以上に手取り足取りといった様子だった。


「うん、あんた派手目よりシンプルな方が似合うで」

そう言って、後ろから背筋をするっと撫でられゾクッとした感覚がする。その触り方は自然だけど、意図的なものを感じた。


あ、この人、女の人が好きなんだ。

自然と空気が読めない私でもそう分かった。でも、いやらしい感じはないし、嫌な気分にもならない。ただ、純粋に女が好きって感じの触り方だった。


たぶん、そう見られても平気だし、嫌がられたらいいって割り切ってる大人の女性だと思った。

だから、別に減るものじゃないし、とゆだねるように好きに触らせてあげていた。サカキさんは私の肌をしばらく撫でつけるように触ってたけど、満足したのか『あんた優しいな』と小さく声を出した。


「当面3セットもあれば困らへんやろ」

上機嫌になったサカキさんは目的のもの以外に、サイズの合った下着上下を袋に入れて渡してくれた。性格が大人しいから、と薄い水色やミントグリーンなどつけて恥ずかしくならないような色をチョイスしてくれていた。



「あ、あの、…これ」

とコミュ障ながらもせめてものお礼に持っていたコイン3枚を渡そうとする。


「いらへんよ。うちの旦那、生まれながらのルネヴェラ信仰やから、こんなときこそ儲け無視して助け合うのが当たり前の事やてうちらにも言うてんねや。下着もない女の子から金取ったら怒られるわ」


そうかんらかんらと気持ちよく笑うサカキさんに、意外なことに結婚してるんだとも思いつつ、『でも、』と申し訳ない気持ちでコインを差し出したまま煮え切らない態度をとる私。


その姿を困ったように見ていたサカキさんだったが、ふと私の持つコインに目を止めると

「…ん、せやけど、あんたもタダでは受け取りにくいやろ。一枚だけ受け取るわ」

そう言って、一枚だけつまむと、差し出す私の掌をそのまま握らせて扉の方に向けて背を押した。


―――――


「このまま北にあがっても、建物が倒れてて進めへんからいったん大通りに出たほうがいいわ。」

とサカキさんに言われ、頭を下げて小走りで大通りに向かう。


市場から帰るときは気分がどん底だったけど、サカキさんに親切にされたせいか、私の心は踊りだしそうなほどハイになっていた。


元々精神構造が超単純なんだろうか。

スキップするかのような調子で大通りに出ると、人の流れをスイスイ掻き分けそのまま反対側の路地に入っていく。私の家は東の壁のそばだったから、大通りを突っ切って突き当たった壁から北に登れば着くと単純に考えて進んでいた。


頭の中ではミッションコンプリート!やればできるじゃん!できる子じゃん、私!可愛らしいって言われた!と自画自賛のオンパレードで、お花畑にミツバチがぶんぶんぶんと飛んでいた。


しばらく進んでいると、建物が崩れて通れなくなっており、南側にしか行けなくなっていた。戻るのも面倒くさいし、いったん南に進めばいいやと右に曲がった。右に曲がって一番最初の曲がり角を左に曲がり、しばらく進んだけど、今度は右にカーブしていて結局南に進み続けるしかなかった。


それでも、道を戻って大通りまで行くのが面倒だと思い、私はどんどん南に進んだ。

今考えれば、人に全然会わなかった。普通ならおかしいって思うはずだけど、頭がお花畑になってた私はそんなことに気づきもせず、周囲の様子も見ずにどんどん南に進んでいた。結局そのまま交差する道もなく、小さな池に私はたどり着いた。


池は大量の葦が生えていて、昼というのに暗い感じが漂ってた。そして葦の向こうに広がる池のさらに向こうに、派手な外観の建物がいっぱい立っているのに気付いた。どうやら歓楽街の様だった。


あ、こんなところに飲み屋があるんだ。と私は下着とロリエ的なものが入った袋を手にしたまま、のんきに思っていた。そんで、頭お花畑の私は次にこう思った。


2枚コインが残ってるから飲みに行こうって。


池をぐるっとまわり、私は実に楽し気に歓楽街に突っ込んだ。

一歩突っ込んで思ったことは、うわっここ人多すぎ!?だった。

歓楽街の通りにはあふれるほどの人がごった返していた。


あるでっかい男の人は店先で可愛い女性を服をひん剥いて膝にのせ、顔を押しのけようとして嫌がってる彼女に熱烈なチューをしているし、ある太ったおばさんは何人もの裸の若い男に首輪をつけて犬のように四つん這いさせてぞろぞろ散歩していたし、あるお立ち台の上にいるゾンビは禿げたおじさんの両手を押さえつけて首を前に差し出させていたし、それを前に立つもう一人のゾンビが斧で処刑しようとしていたし、多くの鎧を着た骸骨や男女のゾンビがお立ち台の下で囃し立ててそれを見ていた。


・・・・・・!?


私はフリーズした。今日三回目のフリーズだ。もし私がパソコンだったら買い替えを検討されているだろう。でもフリーズしたんだからしょうがない。呆れずにそういう奴なんだと受け止めて頂きたい。


私が凍り付いてみている前でゾンビの斧が振り下ろされ、おじさんの首が地面に落ちる。ぶしゅーと勢いよくおじさんの首から血が噴き出し、ゾンビや骸骨が我先にとそれを浴びようとおしくらまんじゅうを開始する。それを立派な服を着たおじさんや男女のチンピラが笑いながら見ている。


ゾンビや骸骨はさっき私にすいとんをくれた骸骨とは違い、理性も低くてひどく血に飢えているようだった。血を浴びるたびに、動きが激しくなる。ほかのゾンビたちを押しのけようとどんどん力が強くなって、まるで肉食魚が狂乱索餌状態になったかのように狂って降り注ぐ血に殺到していた。


でも、今までと同じように、私がびっくりしてるだけで、案外この人たちもサカキさんとかすいとん骸骨みたいに実はいい人なのかもしれない、と私は今日の体験から人を見た目で判断しちゃだめだと考え直した。見た目でヤバい奴らと判断した自分に対し、『差別はいけないよ。メッ』と心の中で叱りつけた。あの首を切られたおじさんは性犯罪者かもしれないし、ゾンビと骸骨はその被害者の親族かもしれない。女の子を膝の上にのせているデッカイおじさんは上半身の服を着ようとしない女の人に服を着せようとしつつ可愛がってるだけかもしれないし、太ったおばさんは運動不足の男の人を裸で匍匐前進させてる筋トレコーチの人かもしれない。


そう思って止まったままでいると、四つん這いの男の子と目が合った。

逃げてと口だけでそう言ってた。


私、前の二回は相手が助けてくれるまで動けなかったけど、今回はそんなことは言ってられなかった。動かない足を無理やりに引きずり、引き返そうとした。


ひもを引いているおばさんが彼が進まないのに気が付き、顔の向きから私に気づいた。


「新しいのが来てるよォ!わっかい女だよォ!」

妙に高いくせに割れた声が嬉しそうにそう響いた。





3が好きな日本人でも三密は避けましょう

ゾンビの狂乱状態みたいになりますよ。


わたしのステータス

???


持ち物

Eタオルdeふんどし…魅力-10・知力+2

E一般人の服一式…魅力+3・体力+3

Eスニーカー  …敏捷+3

E薄水色の下着ブラのみ…敏捷+2(胸が跳ねないからか!)

E白のケープコート(白雄猿カスタマイズ:オーダーメイド品)

     …防御+120・腕力+3・魅力+12・敏捷-3

      市価+1・障壁+1


下着セット(2セット半)…敏捷+2・体力+1

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