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無能な三十路ニートだけどようやくチュートリアル来た

前回のあらすじ

黒髪ショートをもみもみで『たゆんたゆん』

茶髪は女神だった。


4日目の未明


「それで、この変なの連れ帰ってきたのかい?」


茶髪の女神が連れ帰った俺を見て、女は言った。

180は楽に超えていそうな長身と、腰まである長くうねった黒髪を無造作に垂らした姿は茶髪に負けず劣らず美しいが、この世界には珍しい黒いスラックスに白いワイシャツを着ているため、ファンタジーの世界の住人と言うよりはまるで勝気なハリウッド女優のような雰囲気だ。



「だってあのまま放っておけなかったから」

「アンタも他人に情け掛ける程の余裕ある訳じゃないだろうにねェ」

「ちょっと置いとくだけならいいでしょ、ルネには迷惑かけないって約束する」

「まァ、アンタがこいつの分まで食い扶持稼ぐならそれでもいいさ」


そう言って彼女は俺の方を振り向き、ポンとタオルを渡し、『風呂湧いてるから入ってきな』と廊下にあるドアを示す。


俺は、言われた通りに浴室に入るとまだ痛む体を洗い始めた。

強烈なボディブローをくらった腹は、そのそばを洗うだけでまだズキズキする。それが嫌で先に顔を洗うと、固まった鼻血がパリパリと剥がれ落ちていった。


ここは東門のすぐそばにある結構立派な4階建ての建物の一室。

先ほどリンチされていた茶髪の住処らしい。







「それで、アンタは多分、地球から来たんだろ」

風呂から出ると、俺と入れ替わりに茶髪が風呂に入っていき(汚れ果ててた俺の後にも関わらずだ!まさに女神!)、俺はそのまま応接間に連れて行かれ、茶髪がルネと呼んだ大女に尋問を受けていた。

座らされて即、地球と言う単語が出てきて驚いたが、大女の服装から見ても、どうやら地球の存在や文化を知っているようだ。


「はあ、多分そうです…」

「多分ッて、なんの説明も受けてないのかい?」



言われて、コクコク頷く俺。さっきから気分はヤクザの姐さんに従うチンピラ。

それを見て大女はハァーとため息をつき、『なんかァ運営がおかしくなってそうだとは思ったけど、ここまでとはねェ』と呟く。


運営ってことはやっぱりあのゲームが原因だったのか?

つうか、運営って俺や浅野じゃね?


そう思って、俺が地球でゲームの運営に参加していたことを大女に伝えたが、大女はそっちの運営じゃないとかぶりを振って説明し始めた。



  アンタがやってたゲームって『神大陸周遊記』って名前だろ?

  それ、実はアタシ等が作ったプログラムが入ってんのさ。

  いやァ、シンガポールの会社とかは関係なしに。

  アタシ等がこっちで作ったプログラムさ。

  厳密に言えばシンガポールの組織もアタシ等の仲間がトップだから、

  関係あるッちゃ関係あるけどね。


  まァそれは置いといてだ。

  プログラムの話だったかね?

  そのプログラムなんだが、普段は動かないようにしてあるんだが…

  …なんて言うのかね。トールの木馬?

  ん、ああトロイかい、トロイの木馬って言うらしいね。アンタ等は。

  そういう感じでこっちの世界から起動する事が出来んのさ。

  特定の個人を選んでね。


  で、その特定の個人の選び方なんだが…

  説明する前に、アンタ、こっちの世界来てどう思った?

  遠慮しなくていいから言ってごらんよ。怒りャしないからさ。

  危険?あはは確かに危険かもねェ。アンタ等には。

  でも、もっと他にあるだろ?

  ん、ああそう。いいこと言った。

  技術が遅れて、まるで中世の時代みたいだと思ったろ。

  町には単純な道具しかないし、機械なんてほとんど見ないだろうしね。

  その割に、夜に街灯が灯ったりとちぐはぐしてるのに気づくとは、

  アンタ見た目より頭いいね。

  こっちの技術が進んでたり遅れてたりして見えるってのは要するにね、

  単純に技師が足りないのさ。


  ここまで言えばわかるかね。

  あのプログラムに組まれているのは、

  ゲームをする人間の脳内の知識やスキルを調べる事と

  それを固定データ化して精神ごとこっちに持ってくる事さ。

  肝心のどんな人間が選ばれるかは、

  あたしも下っ端だから、よく分かんないけどね。

  少なくとも、地球側にばれない様に必要な人間を選んだ後は、

  そいつとうまくコンタクトを取ってから

  同意を得てこっちに連れてくるって約束の筈だったんだけどねェ。

  いろいろ理由があってここの領主にシステムの使用権与えたら

  どうも碌なことしていない様でさ。


  

「ろくな事をしていないって、どう言う事っスか?」

自分の身に関係あるような気がして、つい口をはさむ。

しかも何となくチンピラ口調で。


「いやァ、大した事じゃないんだけどね。ここ以外の各地でどうも地球から来た技師たちが売り出されてるって話なのさ」

――まァ、平たく言えば奴隷だよ。

そう言って、目の前の大女は口角をあげるだけの社交的なだけの笑顔を作る。


奴隷――


一瞬、俺がこの世界に初めて来た時に見た地下室の光景を思い出した。

あの薄暗いじめじめした部屋の中には浅野を含め数十人の人がいたが、彼らは今どうなっているんだろうか。



  ん、なんだい?

  奴隷になッたらどうなるのか知りたいのかい?

  そうだねェ…それこそ千差万別さ。

  アシャージャヤ領内なんかだと科学技術が遅れてる事もあってか

  知識ある人間はそれなりの待遇で迎えられているけど、

  私の居たロチェルナの街じゃあ技師も溢れてて消耗品扱いだったしねェ。

  まあ、そこ治めてる神サマが人間嫌いだしねェ。



神が居るのか。

しかも人間嫌いの神様が治める町があるとか、なんというかさすがファンタジーだな…

ひょっとして住民も獣人やモンスターばっかりだったして。

ネコミミ獣人やリアルバニーガールをモミモミ…じゃないモフモフできるんですね。股間、もとい胸がアツくなるな。


そう考えて、一人ニマニマしていると、大女はこちらを『大丈夫かなこいつ』という目で見ていたので慌てて真面目な顔を取り繕う。



  そんで、なんの話だっけ?

  奴隷が売り出されてる話?

  ああ、そうそう。

  各地で地球の出身らしき奴隷が売られているって言う話を聞いて、

  うちの神様がアタシ等を調査に向かわせたのさ。

  一応、地球の管理はうちの神様の領分だからねェ。


  まあ、調査と言ってもシステム使っている何カ所かの街に赴いて、

  おかしな事してないか探るだけなんだけどね。

  ちょうどアタシが此処に来たのが1年ほど前で、

  その時に見つけたのがアニャーナ達さ。


大女はそういうと浴室の方を示すように軽く顔を向ける。

浴室では俺と入れ替わりに入って行った女神な茶髪が体を洗っているのかザブザブと水音がしている。どうやら、茶髪の名前はアニャーナというらしい。



そのまま話を聞いてまとめた所によると、

この町に来たばかりの大女が、手始めに奴隷市に行くと一般人に紛れて売りに出される茶髪を発見。見た感じ何か感じるものがあったので、即金で購入して話を聞いてみた所、果たして彼女は地球の出身で、元はシンガポールの会社に勤務する一般人だったらしい。

ゲームのテスターとして配属されていたのだが、仕事中に強制的にこっちの世界に飛ばされて来たらしく、なんの説明もなしに城に召喚されたが、こちらで求められるスキルを持っておらず、しばらく城で『教育された』後に売り飛ばされたそうだ。


以来、自分達を大女から『買い戻す』ために働いているらしい。


「まァ、ここでの仕事が終わるまでに全額払えなかったら、奴隷市で売り飛ばすだけだからアタシはどっちでも構わないんだけどねェ」


そう言うと大女は『あんたは逃げてきたのかい?』と聞いてきたが、『呼ばれてすぐ、いきなり城外に捨てられました』と状況を交えて説明すると、大女は初めて楽しそうに笑った。


この様子からすると、やはり俺の扱いは異常だったらしい。

くそう…何でおれだけ…と思って頭を抱えていると、笑い転げていた大女が説明してくれる。


「おそらくは…分析スキル持ちのチェックで役立つスキルがなかったんだろうね」

「…つまり俺が無能って事っスか?」

「そう言う事だよ」


無能だったら捨てずに帰してくれればよかったのに。

俺なんか呼んでもニートだし。職歴ないし。理系知識0だし。

そもそも何で召喚するんだよ。

ドラ○エで言ったら即戦力にスライムとか仲間にする感じだぞ。

初めての召喚練習かよ。

コレ、ひょっとして浅野に巻き込まれただけじゃねえの?

あいつ商社勤務で技術なさそうだけど、東南アジアでプラント開発とかしてたし。

というか、作った関係者いるなら帰してもらえるんじゃね?



「コレ、どうやって帰るんスか。」


ここ、ゲームの世界なんスよね――と続けて聞く。

すると大女は目を丸くして口だけの笑顔を作ると、こちらを向いたまま黙ってしまった。


「ちょwww誤魔化さないでほしいっスwww」

沈黙に不安を感じ、女に発言を求める俺。

え、なにそれ。冗談だよね。冗談って言ってよね。


「えっと、まずここがゲームの中かって話だけど、ここは現実さ。」


「現実っスか?スキルとか言ってたっスよね?」


「まあ、それは後で説明するよ」


そう言って女は言葉を区切ると、説明を続けた。


「もう一つ、帰るって言ったけど、

あのゲームに設定したプログラムの目的は技師を連れてくることだろう?だからこっちに連れてくるのはアンタ等の精神と知識、魂だけでねェ。肉体とか物理的なものはこっちで再構築してるわけさ。」



――え…それって、つまり俺って地球では…



「多分、倒れて今頃は腐ってンじゃないのかね」

そう言って大女はアハハと面白そうに笑った。

  




次回予告…無能な三十路ニートだけどスキル買ったったwww



俺のステータス

??? (状態・軽傷)


スキル

??? (多分無能らしいぜ…)




持ち物

Eスニーカー  …敏捷+3

E革ジャン   …防御+5

Eジーンズ   …防御+3

Eボクサーパンツ…腕力+1

E革ベルト   …魅力+1


  

謎コイン×10

チノパン   …体力+2



バスケット&布…アニャーナに返しました

パンツ    …三日履いていた汚れがひどくてアニャが捨てました

シャツ    …着てますが単品で補正効果出ませんでした

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