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無能な三十路ニートだけど異世界来た  作者: ガイアが俺輝けと囁いてる
第二部 オルミアの手にひかれて ~新たなる目覚め~
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よほどのことがない限り外には出ないように3

前回のあらすじ


この物語はフィクションですから実在の人物には関係ありません

が似たような出来事があったような気もしないでもない。


そんな感じだった。


腹が減った。


朝が来ても、だれも戻ってこなかった。

私はいつまでここで待ってればいいのだろうか?

黒パンは昨日の夜に食い尽くしてしまい、朝は戸棚にあった小麦粉かトウモロコシの粉みたいな何かを水につけたものをフライパンで焼いて食ってたが、腹の足しにならない。というかクソまずい。


それよりも、体内の血が失われていて、気分が悪い。明らかに鉄分が不足したのかお肉とか食いたい。肉がなかったらせめて甘いものが食いたくなってきていた。砂糖がないか探すが、住民か誰かがごっそり持って行ってしまったのか見つからない。そしてロリエどころか、私にあう下着も見つからない。


そもそもなんでこの家から出たらいけないのか。電気もつかないし、窓の外を見ると屋根が飛んでいる家があったり、倒壊してる家があったりなど、町が災害にでもあったかのような様子なので、町に戒厳令でも出ているんだろうか?そうならば納得できるけど。


しかし、このままでは、兵糧が尽きて死んでしまうし、なにより家にあるタオルがすべて赤黒く染まってしまう。私は風呂上りに新しく変えたタオルdeふんどしをパチンと叩き、上手く固定されていることを確認しつつ、ふんどし一丁で窓枠に寄りかかりながら、朝の気持ちいい日差しに照らされて破壊の後でさえ神々しく光って見える街の景色を眺めてそう考えていた。


この建物は町を取り囲む壁の近くにあるが、周りの建物よりもずいぶん高い4階建てで、3階から見る景色でもずいぶん遠くまで見渡せる。朝日に照らされて、南の方の通りに人がうろうろと動き回っているのが見えた。


うーんとうなりながら上半身を乗り出してみるけど何をしているのかはわからない。けど人がいるなら食い物もあるんだろうなと思う。ふと自分が胸丸出しなのに気づき、そっと窓を閉じて服を着るために2階に降りていく。


歩くたびに揺れる私の胸。これも気になった。無軌道な動きは私のクーパー靭帯に確実にダメージを与えているように思える。たれ目は見た目によってはかわいらしいが、たれパイがプラスになるとは思えない。


ご飯もない。

お肉もない。

下着もない。

ロリエもない。


「ねえ。これは追い詰められていると言えるんじゃねえかな?」

男物の服にケープコートを羽織ってすっかり外出する気満々の私は玄関の


『最悪でも、追い詰められるまでここから出るなよ。おとなしく待ってろ。』


の張り紙にそう問いかけたのだった。


―――――


金っぽいものはあった。

紙幣はなかったが、下着を探していたら、なんか高級そうな装飾があるコインが3階のベッドの下などに2・3枚落ちてたのだ。見た瞬間、金だなって思ったから、かつて使ったことがあるんだろう。小銭でなくそれなりの金額だと思う。ハンバーガーぐらいなら余裕で5つぐらい買えそうな雰囲気も感じた。


でも、災害時なら治安が悪いかもしれないと思い、こそこそと道の端っこを歩いて南に向かっていく。

時折すれ違う人はずいぶん顔色が悪かったり、怪我をしているのか頬の肉が削げていたり、包帯を体中に巻いていたりして、町は明らかにまずい状態だった。ひょっとしたら戦争でも起こっているのかもしれない。さすがにそんな人たちに話しかけるのは憚られ、私はどんどん南に進んでいく。


少し視線を感じた気がしてあたりを見回すと、路地裏からやつれた女性とも男性ともつかない顔がじっとこっちを見ていた。


やだな。浮浪者かな。

身ぐるみはがされる気がして、思わず早足になる。足音が少し大きくなったためか、前にいた男も私を見ているのが分かった。


私の格好が浮いていた。冬の朝に白のケープコートはずいぶん目立つのだ。それに歩いている人は全員黒っぽくて汚れた格好をしていた。コート下は男性用の服だから、私も同じようなものだけれど、長い金髪ストレートに白いケープコートが本当に目立っていた。たとえるならドブ川にいる錦鯉。黒い鯉に混じって泳いでいるアイツ。


私はかっと顔が熱くなった。すんません。私なんかがこんな服着てすんません。髪も芋っぽいおさげとかにしてなくてまじすんません。皆さん大変そうなのにムカつきますよね。そんなことを思って、そのまま逃げるように早足で駆け抜けていく。しばらく行くと、開けた場所に出た。


――――――――


広場は市場だった。

色とりどりのテントが立ち、汚れた格好の人たちが列をなしていた。

どうやら炊き出しや仕事を募集しているところもあるみたいで順番を守るようにと声を張り上げている係員もいる。


すごくいい匂いがしてるから、どんなものを配っているのかと興味津々。こそっと列の前まで行ってみたら、餅みたいな角切りの具と野菜が入ったすいとんみたいなものだった。だけどそれよりも気になったのはすいとんを鍋から救って配っている人。手袋に服を着ているものの、その人の顔は骸骨で、腕も肉がなくて骨だけだった。


びっくりして思わず凝視していると、見つめる私に気づいた骸骨がこいこいとばかりに手招きする。その姿が不気味すぎて、とてもじゃないけど近づけない。でも逃げることも怖くて出来ない。そんな様子を見て、順番を守らないやつが出てきたと並んでいる列から不平が飛ぶ。ただ、見ようとしただけなの、と言い訳を言いたくても口が回らない。そのうちにそこの白いの後ろに回れと明らかに私への文句が飛ぶ。


それでも、知らない人が家に来た時の猫みたいに目だけ大きくして、私が身動きせずただ突っ立っていると、なおさらに周りのいら立ちが激しくなっていく。それを見てらちが明かないと判断したのか、骸骨がこっちにやってきて、『姉ちゃんそんなに物欲しそうに見てんじゃねえよ』とばかりにぶっきらぼうにすいとんを押し付けてきた。


「あ、あー、う。」

すいとんを渡してくる骸骨に何か言おうとして、声にならない声を上げると、列に並ぶ人から『なんだ。あたまパーの子かよ。』『未だにここであんな格好して出歩いてる奴はもう気がふれちまった奴だよ。』と吐き捨てるような声がする。

そんな言葉に傷つくどころか、逆にパーに見られて助かったと思う始末。

すんません。単に衝動的に前に出たんです。本当に順番守らなくてすんません。俺、空気読めないアホな子なんです。


そんな私が気まずそうにいつまでもすいとんを取らないので骸骨は私の手を取ってすいとんを無理やり渡すと、再び鍋に戻っていった。


しばらく、すいとんを手にもったまま突っ立ってたけど、周りがもう私に興味を失ってしまったことを確認すると、安心したのか手に持った丼がすごくあったかくて、いい匂いもするし、おなかもすいてたし。


周りの目を気にして、わざと馬鹿っぽく見えるようにその場にぺたんと座り込んで、すいとんを啜った。ちゃんとだしを取っているのか、塩味だけでなく旨味もあって、野菜も入ってて。一口食べたら、そこからは自然と周りに人がいることも忘れてずるずると啜った。



おどおどしながらすいとんの入ってた丼を骸骨のそばの机に返した後、俺はそのまま市場の隅っこで座り込んで落ち込んでいた。どうやら俺はかなりのコミュ障の様だった。人にありがとうとも言えないし、ごめんなさいとも謝れなかった。喋れない骸骨でさえ順番を守れない俺が謝ることもできずにどんどん周りからヘイトを買っていると判断して、上手く場をおさめてくれたのに。俺はいきなり人に注目されたり、話さなきゃいけなくなると、緊張するたちの様だった。


なにより、周りの人は長い間お風呂にも入れてなさそうなぐらい汚れた格好をしていたり、血のにじんだ包帯をしているような人もいるのに、お風呂に入って小綺麗な格好をしている私が単なる物見遊山な好奇心で迷惑をかけたのがつらかった。


罪悪感からか、自己嫌悪からか、その両方か。

ダメ人間。どうしようもないカス。そんな言葉が浮かんでくる。こんなカスは下着はつけてなくて当然だし、ロリエなんて今まで使ったことがあるのか怪しいものだ。


あの家で感じたおかしな状況がようやくしっくり来た。私の下着がなかったのも、自分のロリエがなかったのも全部そんなものが必要ない引きこもりのカスだったからなんだ。そんなことを考えていると、だんだんと家に帰りたくなってきて、あの張り紙の言う通りに家に籠ってようと思った。


私はそろっと立ち上がると、下を向きながら、家に帰ろうと雑貨店が並ぶ路地に入っていった。

大通りを歩くと、また大勢の中で目立って恥ずかしいし、さっき迷惑かけた人たちが居たら、指をさされそうだからという、それだけの理由だった。


市場から大通りに平行に北に延びる路地は、最初は雑貨や武器防具などの普通の出店が並んでいたけど、北に行くに従い派手な格好をした女性や屈強な見た目のガードが入り口に立っている店など、だんだん怪しい雰囲気になっていった。それでも同じように下を向きながらしばらく歩いていると、冬なのに前に上半身裸だったり、地面にござを敷いて着物姿で水たばこを吹かしていたり明らかにヤバそうな見た目の男女が集まっていて、思わず角を曲がった。


角を曲がってすぐに反対側から同じような男がやってきたので右側にあった細い道に再び曲がった。


そのまま進んでいくと、曲がりくねって元の路地に出た。

出た両側にさっき見たあの男女がたむろしていた。


「どうした?姉さん。迷子かな?」

「ねえ、その子さっきから下向いて歩いてるけどべそかいてない?」


自分たちの中に飛び込んできた場違いな錦鯉をみんな面白そうにはやし立てた。

一人称がぶれるのは仕様です。

ガイアがアホだからではありません。…たぶん。



わたしのステータス




???




持ち物




Eタオルdeふんどし…魅力-10・知力+2


E一般人の服一式…魅力+3・体力+3


Eスニーカー  …敏捷+3


E白のケープコート(白雄猿カスタマイズ:オーダーメイド品)

     …防御+120・腕力+3・魅力+12・敏捷-3

      市価+1・障壁+1



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