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無能な三十路ニートだけど異世界来た  作者: ガイアが俺輝けと囁いてる
第二部 オルミアの手にひかれて ~新たなる目覚め~
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よほどのことがない限り外には出ないように 2

女じゃん。

女が映ってるじゃん。

鏡じゃん。

鏡に映るのは俺じゃん。


つまり俺は女じゃん。


帰納法的に俺はすべてを理解した。なんでチンコがあるとか思ってたのかわからんけど、間違いなく俺は女だ。


うむ。と深く頷いて改めて鏡に近づき顔を見る。さらりとしたストレートの髪は金色で肌はきめ細やかに手入れされている。女性にしては背が高い気もするが、目が少したれ目でにこっと笑うと人懐っこいような優しそうな雰囲気がした。ちょっとかわいい大人の女性という感じで、夕方の薄明かりに照らされていて、ちょっといやらしい。裸だし。おかしな事に自分の体なのに見つめていると少しドキドキする。


「――が好きそうな女だなぁ。他人に頼まれると嫌といえない女の雰囲気というか。」


ぽつりとつぶやいたが、誰の事を言っているのかよくわからなかった。

自分がなんでこの家にいたのか、水槽の中にいたのかもよくわかってないし。事故にでもあって入院し、治療でも受けてたんだろうか。そのせいで記憶喪失にでもなったのかもしれない。


うーん。悩んでいてもしょうがない。

ひとまず今やるべきことは、風呂に入って体を洗うことと、太ももを伝っていく血の対応である。さっきまで歩くのも一苦労だったが、腹の中をゼリー状のうんこを大量に出したためか、俺、じゃなかった私はかなり元気になってきていた。下っ腹はまだ痛いし、血が出てるけど。


「うんっ。やるぞっ!」

心機一転頑張るぞっ!っと裸なのに腕まくりし、私は風呂場に突撃していった。


―――――


風呂は出たけれど。


血は止まらなかった。いや、左の二の腕と足に刺さっていたチューブの傷はかさぶたが出来ていたんだけど、太ももを伝っていた血は負傷とは違う血だった。


「ああん…そういうこと、起きるう?」

原因がわかって、ちょっと憂鬱になった。このままじゃパンツも履けない。当面の対応として、脱衣所にあったタオルのうち、一番安っぽいものをふんどしの如く巻いておく。そのまま階段を上り、さっきまで寝ていた3階の奥の部屋のドレッサーを探るがロリエ的なものは見つからない。たしか姉はドレッサーにロリエ的なものをしまっていた記憶というか感覚があるのだが。


ということはこれ姉ちゃんのドレッサーではないのか。というか、いままで自分がつけるものはどこにしまっていたのか。姉がドレッサーにしまっていた事は覚えているのに、自分がどこに置いていたのかは全く覚えていない。これは人生を表している気がする。人は他人の事はよくわかるのに、自分の事はよくわからないのだ。人のロリエの場所はわかるのに、自分のロリエの場所はわからないのだ。


裸にふんどしという女として終わっている姿で窓から沈む夕日を眺めながら、俺はそんなことを深く感じ取っていた。

夕日は美しく、壊れた屋根や倒れた樹木、崩れた建物が散見される傷づいた街に、等しく赤く悲しい光を投げかけていた。窓を開けると吹き付ける風は冷たく、まだ湿っている私の髪が風を受けてゆっくりとたなびく。滅びと悲しみ、そしてそこに憂いを帯びながら冷風に濡れた髪をたなびかせる私が入った窓枠は、私の下半身がふんどしでなければ、絵画みたいに美しい情景だった。季節は冬の様で押し寄せる冷気が風呂上がりの私の体温を急速に奪っていく。慌てて窓を閉めると、服を探しに階段側の3部屋に移動した。


よく考えたらロリエ的なものを見つけても、パンツがなければセットできない。そう思い下着を探していると、箪笥に色とりどりの下着が入っているのを発見。お、いいじゃんと手に取ってみるが、スケスケだったり、レース付きで後ろ側がひもみたいになってたり、全部明らかに布の面積配分がおかしい。『はい、わたくしはドスケベです(毅然)』と言いたげな下着ばかりだ。


たまに布が多いパンツもあるが、そういうのに限ってけつの穴や前の部分がO型にくりぬかれていたりする。『わたくしの事、おとなしく清楚に見えました?いいえ。わたくしも皆様と同じくドスケベでございます(一礼)』と言わんばかりで騙された気分だ。ここの家の住人はよほど変態の痴女だったんだろうか?


ひょっとしたら私がその痴女本人かと思って試しにブラをつけてみるが、ホックを止めるのもきつくサイズが合わないので違うようで安心した。服も丈が合わないし、持ち主は私より小柄な女性の様だった。


これなら男物の下着の方がマシかな。そう思い、私は自然と2階に向かい、2部屋ある手前のドアを開ける。広めの部屋は角に酒瓶が並んでいたり、薄汚れたゴミが散らかっていたりしていたが、なぜか入るとほっとする。角にある貧相なクローゼットを開けると、男物の服と下着が1着だけ入っていた。


どうだかなと思いつつ身に着ければ、サイズ的にはそれほど違和感がない。さすがに胸が突っ張る感じがあるが、さっきの女性用よりはましだ。髪をよいしょっとシャツから引き出してばらっと宙に広げながら部屋を見渡すと少しぶかぶかだがスニーカーもあったので頂くことにした。


そのまま階段を降りると、玄関のドアに再びメモが貼ってあるのが見えた。近づいて読んでみる。

『最悪でも、追い詰められるまでここから出るなよ。おとなしく待ってろ。』

今度はなぜか頼りがいのある男の声で再生された。


うん、これは従おう。私はあわててくるりと振り返り、トイレや風呂場の奥の部屋に向かう。

ドアを開けると、寒い空気の流れとともに死臭がした。部屋のところどころに真っ黒になった血だまりがあり、消えない匂いが部屋に染みついている。部屋中が荒らされており、入り口から反対側の窓は割られており、そこから冷気が吹き込んでいた。誰かが掃除したようだが、ここで人が何人も死んで腐敗したんだと思った。


なぜかすごく嫌な気分だった。


みじめで情けなくなってきて、たまらず私はドアを閉じた。

反対側のドアを開けると、キッチンとリビングがあり、古くなったパンがテーブルに乗っていた。野菜などの生鮮食品はないが、黒パンを手に取り、かじりながら見て回っていると、リビングの角に立派な白い毛皮のコートがあるのを見つけた。それは厚い毛皮なのに、きれいにうまく裁縫されていた。手に取るとそれは重みとふわりとした温かさが手によくなじんだ。裏地を見ていると、裁縫とは裏腹にあまりうまくない文字で一部しか読めなかったが「オ×ミ×」と刺繍がしてあるのが見えた。


なんとなく、自分のものの気がして、着てみると、まるで私にあつらえたかのようによく馴染んだ。




わたしのステータス


???


持ち物


Eタオルdeふんどし…魅力-10・知力+2(なぜ知力があがるのか…?)

E一般人の服一式…魅力+3・体力+3

Eスニーカー  …敏捷+3

E白のケープコート(白雄猿カスタマイズ:オーダーメイド品)

     …防御+120・腕力+3・魅力+12・敏捷-3

     それは品質が良い(市価☆(10%))

     それは生命エネルギーによる障壁を展開する☆(10%)


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