マギーは一人で考える2
前回のあらすじ
ガイアが新しい仕事をしていたら運営からいつの間にかメールが来ていた
仕事が忙しくて数か月ろくにメールを見てなかった。
作者的に人気がなくても一番お気に入りで書くのが楽しくて傑作だと思ってた
自称『地球征服に来た美熟女』を原住民の俺が食い物にしようとした話
がエロいから消しますた。とのことだった。
この小説のほうがよっぽどやばい描写がある気がするのだが、
と思ったが、不服がないことにしようと思う。大人の判断として。
消された当時やる気はかなりなくなったけど
昔、まだ学校に行くことが普通で今みたいにスキルが手軽に手に入らなかった、私が今よりもっと子供だった頃の思い出。
私の出身地では学校が2種類あった。
一つは専門的な技術を教えてもらえる学校。ただし学ぶには高い学費がいるし、入れる数も少ないから生徒の年齢もばらついてるし、席取りにコネもいることもあり、ほとんどが上流階級が通う学校。
そしてもう一つは市が管理している学校。そこでは生活で必要になる計算や読み書きといった基本的な事を教えてもらえる。無料ということもあって誰でも通えるから、来ている子はみんな若いし家族の職業もみんなそれぞれで、結局両方に通った私としては、こちらのほうが居心地がよかった。
居心地がよかった。のは正直に言えば私が特別扱いされてたせいだからだ、と今では思う。私は上流階級といえる程ではなかったが父が専門の学校で魔法を教えていたから、自然と大人から『先生の娘』扱いされていた。それを見た子供が私を特別に扱うのは自然だった。そんな中で私は鼻持ちならない子供だったと思う。父から家で躾けられた魔法を自慢するかのように使い、優越感に浸っていたりしていたからだ。まあ今では見せるのも恥ずかしいような蝋燭の明かり程度の光魔法しか使えなかったのだけれども。周りが驚くのが面白くて、何よりみんなが頭を下げるお父さんに褒めてほしくて。
家でまだよく読めない本の図を眺めたりして魔法を使おうとしてた。
懐かしくも緩やかな、スキルが手軽に手に入らなかった、時の話。
ある日、こちらの学校の子供に日常で使う魔法を教えに来た父の前で、驚かそうと中途半端な魔法を見せびらかした私は当然のごとく鼻っぱしをへし折られ、みんなの前で怒られた。何も理解していないものを自慢して使うなと。でも、みんなの前で怒られたことで顔が真っ赤になった私は、引くに引けなくなり『わかんなくても別に使えればいい!』と言い張った。父は激怒し、私は教室から叩き出された。教室から出た私は、どうしてこうなったかわからずただ立ち尽くして床を見ていた。私は悪くないのに、頑張ったのに。と延々と思っていたことを覚えている。
スキル屋が町にできたのはそれから1週間もしなかったと思う。
――――
「お前らな。何やったのかわかってるのか?」
あの頃のように床を眺めながら。子供のころを思い出していた私は、その怒気を含んだ声で現実に引き戻された。
居並ぶメンツの中でもなるべく小さく見えるように小柄な体をさらに縮こまらせ、下を向いていた私は慌てて媚びるように上目遣いで声の主を見る。雷雨で乱れた黒髪と整った顔を怒りに歪めるあの男が一瞬だけこちらを見た。
「殺すな。絶対に殺すな。捕縛しろ。殺すな。死にかけてたら手当しろ。いいか殺すな。絶対に。言ったよな。俺。」
社長は私の隣に立つ大男に目を据えたまま淡々と今日の朝会で伝達した主張を繰り返した。
「いったんだよ。俺。間違いなく、さ。だって今日だけじゃないもの。言ったの。昨日も言った気がする。うん?言ったよね?それになんで全員この部屋に入ってから一言もしゃべらないのかな?」
「はい。言いました・・・」
大男が耐え切れずに声を絞り出した。
「で、なんで君たち殺してるの? いやさ。捕まえるときに暴れたから反撃して殺してしまいました。なら俺、怒らないよ。でも違うよな。捕まえたと連絡あって引きずってきてる。すごく仕事できると俺感心したよ。聞いたときは。」
社長はようやく私たちから返答があったことで落ち着いたのか、腕を組み、うんうんと頷きながら穏やかな声で感心して見せた。
「そして社長らしく格好を整えて頑張った社員を労おうと出てきたら、君たちが群がって殺して、大喜びで吊るしてるのが目に入ったの。どうしてそんなことしたのか吊るした君にまず聞きたくて」
社長は乱れた黒髪もそのままにいつもの笑顔でにこやかに大男に尋ねた。
「いや、もう死んでしまったので、せめて混乱の収拾つけようと、吊るしました。はい。」
大男が小柄な私と同じように身を竦めながら返答をする。
「ふむ。そうか。収拾をつけるためか。その場で最善の事をしてくれたのに、ここで吊し上げるような質問をして悪かったな。一歩下がってよろしい。」
社長は気づかなかったと言わんばかりの表情をして見せると、大男に労いの言葉をかけた。
「では鎧通しで腹を突き刺した君と首に剣を刺した隣の君。二人とも致命傷を与えてると思うんだけれども、どうして刺したのかな?」
次に大男を挟んで私の反対側にいるまだあどけない少年と中年の二人に向けて社長は聞いた。
「…みんな魔法とか撃ち始めて、俺は刺突剣しかなかったから、さした。です。」
黙り込む中年の代わりに少年が答える。
「なんで急所に刺したのかな?」
そうにこやかに聞く社長にほっとしたのか少年は少し声を明るくし答える。
「悪い奴だし。みんな殺せって言ってたから。」
少年は隣に立つ中年の様子を伺いながらそう話す。顔を向けられたのにも関わらず、中年は脂汗を垂らしながら社長から目を離さなかった。
「そうか。殺せって言ってたから、首と腹を刺したと。わかりました。」
社長がそういうと同時にふわっと風を感じ、とんっと皮製品に何か突き刺さるような音がした。少年が腹を抱えながら尻もちをつく。数秒もしないうちに赤黒い液体を口から吐き出して悲鳴を上げ始める。その横で中年は腰の剣を半分も抜かないままの格好で止まっており、剣を抜くか逡巡してるようだった。
私の全身の毛が逆立った。
両肩から背中にかけて急激に体温が下がったように思えた。
「では、次の君。君が最初に社長なんか関係ないから殺してと言って、攻撃したそうだが、どうして私なんか関係ないんだい?」
そう声を掛けられ思わずその場から逃げようとした目の端で、中年は首に何か棒状のものが貫通して背後の壁に縫い留められているから、立ったまま止まっているんだと。
そうわかった。
最後に書いたのが3年前でビビった。
細かい設定を間違えてても生暖かい目で見てあげてほしい。