私はあの瞳と共にある 1
前回のあらすじ
地下室に連れてかれた。
ねえ、こーたが考えてる事っておじいちゃんはわからないの?
そんなに頭がいいんだったら、話せるようにしてくれたらいいのに。
だって、みんな来なくなっちゃうんだもの
おとうさんたちもガッカイだって。
こーただけだから、一緒にいてくれるの
えっ。ほんとう?じゃあ今度きてくれるときにお願いね
―――かせ?いいか?博士。
疲れた中年の男の声で私は目が覚めた。
「悪いですな。眠ってたようで」
所々に機械油のシミをつけた白い上下の服を着た、中年の男が疲れた顔で目の前にいた。
「ああ、いいんだ。」
「ずいぶん幸せそうで、起こすのはどうと思ったが。調整が終わったんでな」
「そうか。」
そう答えると、私はベッドからゆっくりと降りる。思ったより筋肉が弱っているのか、ふらりと体勢を崩し、肩を掴まれた。
「しっかりせえよ。あと少しの辛抱だろうが」
「すまない」
「水でも飲んで、ゆっくりこい」
私をベッドに腰掛けさせ、中年は出て行った。
頭は冴えていた。それだけに体がいう事を聞かないという事が痛いほどわかる。
ずいぶんと時間が経ってようやく立ち上がることができた。
暗く、じめじめとしたレンガでできた地下道を進む。
途中、道の途中に置いてある籠に女の子の靴が片方だけ入っていた。
「もう、用意できてるか」
靴を見ながら、少しだけ寂しい気持ちになる。
―――
『博士。興味を持っていたゾンビの操り手を連れて来たぞ』
かつて自分が作った軍勢に追われ、行き場のなくなった私を保護したその女。その女が連れてきたゾンビの操り手は、ひどく小さくて、弱弱しく、力のない私でも折れそうな細い体つきだった。
『とりあえず、こちらのいう事を聞かせてほしい。方法は任せる。前言っていた方法でも、新しい方でもいい。早い方で頼む』
そういうと、女はくるりと踵を返して、暗い地下室を出て行く。
『方法ね』
そんなもの決まっている。もう持たないのだ。私が。
『クーリー。すぐに用意したまえ。対象者が予想より年少。機械を調整。一週以内にやれるか?』
『機械は4日でできるわい。でも結構負担かかるでよ。耐えれるか?そいつ』
『こいつへの干渉周波を減らそう。途中で変換器を挟んで周波を調整する方法で行くしかない』
『微調整にやはり1週だな』
『そうだな』
クーリーと会話している間、そいつは私から目を離さずにただ立っていた。足や手が震えて、明らかにおびえているが、顔に無理に笑顔を張り付けて、機嫌を取ろうとしているのが分かった。
『何か言いたい事あるのかね。』
少し、意地悪な気分になり、そう聞いた。
『ううん。お忙しそうだから、エリーは待ってるだけなのです。』
そう言った赤毛の子は、震えている手足とは裏腹に、しっかりとした口ぶりで言った。