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無能な三十路ニートだけどもう俺は脇役でいいや

前回のあらすじ。


ガイアの家に泥棒が入った。


盗まれたものはなかったが

小説の資料を荒らされた挙句、


『展開は異性にもてまくりのチートハーレムにしろ』

『ついでに美形の新キャラも出してくださいね』


との意味不明な脅迫文が残されていた。


なんだか怖いので言うとおりにしようと思う。

これから数話の超展開で。


そんな感じだった。

 ソルドは倒れた櫓にかまわず逃げだした。


 ソルドの視界に一瞬だけ入ったおっさんは、なぜか泣いていて、しかも『ジョセフ』を憎しみの籠った目で睨み付けていた。おっさんは俺たちを守ってくれたんだろうか。多分そうなんだろう。さっきまであんなに怯えていたのになぜだろうか?考える暇もなくソルドは走る。友を担いでただひたすらに走る。おじさんが命を懸けて作った時間。その1秒1秒を無駄にはしないとばかりに必死に走る。


 なぜだか、周囲の状況も自分たちの味方をしていた。走ったとしても、ウォードを抱えたままでは2人まとめてゾンビに捕まるかと思いきや、辺りのゾンビは苦しんでのた打ち回っていた。


 問わず、止まらず、疑わず。


 視認した状況だけを受け入れ、何も考えずにソルドは走る。

 走って城門を抜けようとする。

 しかし、倒れた櫓周辺のゾンビは倒れているものの、城門周辺のゾンビ兵たちは無傷のようで、ソルドが近寄ると、武器を構えてソルドの逃走を遮ろうと駆け寄ってくる。


 すると、捕まりそうになったところで、まだ残っていた仲間の冒険者がソルドと奴らの間の壁となって立ちふさがった。


 「行けよ!ソルド!ウォードを連れて!」


 そういった男は、かつてソルドがギルドに登録して間もない頃、一番最初にアントン狩りをすべくパーティを組んだ同期だった。臆病で、アントン一匹にさえ手間取るほどの鈍重な男で、結局、男のノルマ分もソルドやウォードが肩代わりするほどだった。それからも数度パーティーを組みはしたのだが、マギーやケミーの反発もあり、いつしか挨拶しかしなくなった男だった。



 「ウォードを連れて行ってくれ!」


 声にこたえるかのように、ソルドはウォードを担いで城門に走り込む。

 走り込みながら考える。

 ひょっとしたら、あいつ俺たちにずっと負い目を抱いていたんだろうか。

 恩返しする機会を望んでいたんだろうか。

 でもそれは命を捨てるほどのもんじゃねえだろ!


 誰にもぶつけようのない怒りが周り巡ってウォードを掴む手に力を込めさせた。

 傷だらけの仲間を置いて城門を過ぎる。

 傷だらけの親友を救うため、傷だらけの仲間を捨て駒にする。



 作戦では城門外に狙撃隊が待機してるはず・・・


 そう思い、城門を抜けたソルドの目に城外の大通りの交差点に築かれた狙撃部隊のボロボロの陣地とそこに走り込んでくる騎馬の群れが映った。



……‥‥………‥‥



 騎馬の先頭には8つの足を持つ大きな騎馬にまたがった金髪の笑顔のイケメンがいた。彼は妙に明るい爽やかな笑い声と共にくさびのような陣形を取る騎馬を率いていた。


 馬上のイケメンが錫杖のような棒を構える。

 光が固まったような不思議な刃が伸び、錫杖が光の槍となった。


 陣地内には暴剣王から逃げたベテランの重層兵などが中心となり、魔術師などを守る様に魚鱗の陣を引いていた。


 数秒の後、楔が高速で魚鱗に突き刺さる。

 そして荒らされた陣地の中央で固まっていた薄汚れた冒険者たちを分断する。

 光の槍が振り回されるたびに、冒険者の首や腕が宙に舞った。


 ソルドの目の前で陣形は騎馬の楔によって紙切れみたいに切り裂かれた。



 ソルドは目立たぬようにゆっくりと通りの端を走った。

 楔は大通りを走り抜けた所で回頭し、再び集まろうとする薄汚れた魚群に迫る。

 その突撃が半分ほど過ぎたところで巨大な楔は急にわかれる。

 ぱらぱらと分れ、一つ一つが凶刃を携えた小さなやじりの雨となった。


 当たれば必死の鏃の雨の中ソルドは大通りを南に走る。

 一つの鏃がソルドのそばを抜ける。

 「ちくしょう!ウォードに当てんな!」と思い、体を捻る。

 鏃が振った槍で腰袋が吹き飛ばされる。

 後ろから暴剣の王の怒号が聞こえる。

 追ってきているらしい。


 ソルドはそのまま南に走る。目的のテントへと。




…………………‥




 俺は崩れた櫓の横に立っていた。

 立って、櫓の倒壊に巻き込まれ、重なった丸太からはみ出る両足だけの白菜を見て、うれしさのあまりに満面の笑みを隠せずにいた。


 白菜への憎さのあまり、『ざまーみろ白菜!俺を無視したり、ウォードをいじめた罰だコノヤロウ!』と罵倒しながら、足だけが突き出た白菜の周りを小躍りしながら飛び跳ねる俺。その見た目はまるでお宝を見つけたハゲゴブリンだ。『悔しかったら出てきてみろよクソ爺!』と叫びながらケツを叩いて挑発すると、気分もよくなり、笑い声が止まらなくなった。


 そうして、『わはははは!』と笑っていると、その声に女の笑い声も混ざっているのに気付いた。いつの間にやらステレオ放送みたいになっていたのだ。気味悪く思い周りを見ると、いつの間にか俺の横にうねる黒髪の大女が立っていて、片手を口に当てて一緒に笑っていた。


 俺はビビった。乱戦のさなか俺の真横にいきなり出現した大女に。気になって見ていたが、何をするでもなく、口に手を当てて笑い続けている。冒険者の一人だろうか?なんだか俺の目が疲れているためか、その姿が霞んで見えた。


 そんな俺を無視して、ソルドが逃げていく。


 『あっ待てよソルド。俺も一緒に行くよ!』とあわてて大女の事は無視し、ソルドの逃げる方向を見ると、ゾンビ達が地面に倒れ、悶え苦しんでた。なんでだろ?新たな疑問にソルドを追うのを止める俺。


 そんな俺にかまわず、ソルドは苦しむゾンビの間をすり抜けて走る。

 ソルドが走った後をよく見てみると、苦しんでるゾンビ達の真ん中あたりに俺が投げた灰皿が落ちてた。


 そして思い出したのは。姫の言ったゾンビの止め方。



 『たとえば、破壊。』

 『もしくは浄化』



 …そういえば、ブレスで情報見た時、聖血がにじみ出るって書いてあったな…

 という事はだ、つまりゾンビは聖なる血で苦しんでいるんだ。

 俺がフリスビーのように灰皿を投げた時、ブルンブルン振りまかれた聖なる血で!


 そう思い、倒れたゾンビに近寄ってよく見ると、ゾンビの皮膚は所々硫酸がかけられたかのように穴だらけになっており、そこからはシュウシュウと煙が立ち上っていた。


 これはスゴイ!スジ夫と行動を共にしていた俺だからわかるのだが、ゾンビは痛みを感じない。殴られようが手がちぎられようが、自己解体しようがまるで痛みはゼロ。焼けた火鉢に手を突っ込んでもにっこり笑顔で過ごせるレベルだ。(ちなみにスジ夫はキャバでゾンビの胸を揉んで喜んでいたが、あいつは胸の感触を楽しんでるわけでは無く、単に女の胸を揉みたいだけの変態なのだ!)


 でも、灰皿アタックは違う。

 なんか、マジ苦しんでる。ゾンビどもが。

 血のかかったであろう全員が涙目で倒れて、

 シュウシュウと煙を放っており、

 しかも何匹かは天空から差し込む光と共に成仏してがっくりと崩れ落ちていった。


 そう、俺の唯一の武器である灰皿。偉そうに浄化の力を使う姫の力を吸い取ったその灰皿は対ゾンビ用最終兵器になっていたんだ!


 俺が手に入れた伝説の武器は、アダルトグッズに書いてあるような『この商品はジョークグッズです』のような製品かと思ったが…ジョークグッズにもいろいろある。明らかに使いどころがない、チンコ型のペンもあれば、俺のような童貞が泣いて喜ぶ『ぷにぷに神オナホ』もあるのだ。どうやら灰皿はジョークグッズの中でも神オナホ並みに使えるジョークグッズだったようだ。


 その時、俺の頭の中にはこれまでの辛い辛い日々が走馬灯のように駆け巡っていた。

 蟹に殺されかけ、

 サルに追い掛け回され、

 ゾンビが出れば逃げ回り

 キャバクラではカモにされた情けない異世界の日々が。


 しかし、俺はついに変わるのだ。

 ゾンビが猛威を振るうこの町の中で、

 唯一無二の武器を振るう異世界の戦士として歴史に名を残すことができる武器が、


 今、そこで俺を待っているのだ。

 その血だらけの灰皿は俺を見て、『さあ、勇者よ。異世界からの勇者よ。私を手に取り、今こそこの世に平穏をもたらすのだ。』って言っていた。





 「よっしゃ―!これで俺もチート主人公の仲間入りだぜ!」



 俺は灰皿の声と期待に応え、異世界テンプレに仲間入りすべく満面の笑顔で猛ダッシュ。そして俺は両腕を突出し、高校球児が頭からヘッドスライディングするかのごとく灰皿をキャッチした。


 ドジュゥゥッゥウ!!


 が、灰皿に触ったその瞬間、俺の両手はものすごい音を立てて沸騰した。


 「うぎゃあぁぁ!あっちぃぃぃいい!」


 慌てて灰皿を離したものの、俺の両手は熱湯のようにボコボコと泡だった後、ぷしゅーと蒸発して消えてしまった。文字通り、湯気になって消えた…


 「???」


 俺の頭には疑問符。

 なくなった手はムズムズチクチクするが痛みよりも手が蒸発する事態に疑問符。

 不思議に思ってよくよく自分の体を見てみると…俺服着てねえ…フルチンだ!

 しかもなんか透けてる。やや透明。半透明?って感じ。


 え・・?これアレかなww

 【空気な存在】って称号スキル。

 アレ成長したんかなww

 ブレスレットをポチればスキル紹介文で『ついに、体まで透明に!』とか書いてあるんだろ…って服もブレスも着けてねえぞ・・・



 混乱する俺はその場に座り込んだ。

 すると、城門周辺で立ちふさがる冒険者を殺そうとしたんだろう。

 急に城門に向けてゾンビどもが殺到しだした。


 慌てて避けようとした俺だが、ゾンビどもは隊列を組んで下校途中の女子高生のように隙間なく広がって走ってきたため避けきれず、その中の一匹と壮絶に衝突し、なかった。


 本来なら、俺はゾンビに倒されて、地面に転がったところを集団に踏みつけられ、内臓破裂しそうなほど蹴られて、踏まれてボロボロにされるはずだった。しかし、俺にぶつかると思ったゾンビ兵たちは俺をすり抜けて、文字通り貫通して城門に走って行った・・・


 呆然と立ち尽くすフルチンの俺。

 そこに、さっきのうねる黒髪の大女がやってきた。


 大女は相変わらず霞んで見えた。

 顔もなんだかはっきりせず、よく見たら俺と同じように服を着てない。

 体や髪のラインだけがくっきりと見える姿で俺の前に立った。


 (あー、久しぶりに面白いものが見れたねェ。笑いすぎてお腹痛くなったじゃアないか。)


 その声はさっき頭に流れ込んできた声よりもはるかにクリアで。


 「あ・・・ひょっとしてルネ姐さん?」


 聞く俺に答えるかのように、ぼやけた裸の女は


 (アタリ。アタリww)


 と面白そうに答えたのであった。





   ⇒To Be Continued…




マンネリ・ダラダラ・主人公の無成長が嫌との意見が多くて

もう、はっちゃけちゃっていいやって思いました。





ただし、主に『成長しない残念な方向に』だがなwww

(もっと癖を出して走れッ!)

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