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無能な三十路ニートだけど自活を試みた

前回のあらすじ

適当に書いた作品が1日でガチ作品のユニーク記録更新して泣いた


3日目

朝起きると同時に猛烈な空腹を感じた。よく考えたらこの世界に来てから三日もたつが、口にしたものと言えば防火用の水瓶の水ぐらいなので当然といえば当然だ。城門はまだ閉まったままで、ある程度日が昇るまでは動きがなさそうなので食事を探しに行こう。このまま待っているだけではいつか死んでしまう。


まず手始めに、俺は街中のゴミ箱がないか探すことにした。

昔読んだ元ホームレス社長の本に、空腹で苦しんでいる時にゴミ箱を漁って残飯を手に入れる話があったのでそれを参考にしたのである。


血だらけの布とリア充の汚物にまみれたジーンズなどを丸めて監視ポイントに隠すと、とりあえず城門前のT字路を南に、町の中央に向かって歩き始めた。

途中、登城する軽装鎧姿の兵士や朝早くから仕事場に向かうのであろう小ざっぱりとした青年たちとすれ違いながら、アメリカの街のようなゴミ箱がないか探しながら歩いているが、それらしき物はまったくない。中世ヨーロッパの様に窓からゴミを投げ捨てる方式なのかとも思ったが、それも違うらしい。どうやらごみ収集のシステムなり、処分方法がそれなりにあるようで十字路で見つけたオープンテラスを持つ飲食店のような建物の外にも、ゴミ箱は存在しなかった。


「飲食店があるなら、もらったコインで食事できるかも」


一人呟いて、建物を見るが、中は明かりも灯っておらず、人の気配もない。

後でまた来てみよう。



町の中をこれ以上歩いてもしょうがないので、とりあえず元来た道を戻る。

帰る道すがら、昨日リア充を埋めている時、ちょっと離れた場所に小川が流れていたのを発見した事を思い出した。『魚でもとれれば』と思って行く事にする。ついでにリア充が死んだ時に漏らした糞尿まみれのパンツの洗濯もしようと、隠しておいた荷物を回収してから向かう。


東の城壁に着くと、ちょうど兵士が城壁を開けるところで、他の町に向かうのであろう荷馬車や行商人がたむろして開門を待っていた。


その中に俺の目を引くおかしな集団が居た。

てんでバラバラな鎧やローブを身に着けたそいつらは、弓や剣を背中に背負っている者もいれば、人の握りこぶし程の青いガラス球をはめ込んだ杖を持つ者もいて、明らかに周りとは纏っている雰囲気が違う。

門番や城の兵士であれば、白地のマントと左胸に紋章が刻まれた鎧をした格好のはずだが、そういったものもない。


興味がわいてじろじろ見ていると、向こうも気づいたのか、こちらを見てきたので慌てて目をそらす。下手にケンカになってリア充の二の舞になるのははごめんだ。


もし、俺が浅野だったならば、目があった瞬間に挨拶して取り入って、彼らからいろいろ話を聞けるんだろうな。それで持っているコインと引き換えに食事も手に入れてたのかもしれない。そう考えると、つくづく俺のコミュ障ぶりが嫌になってくる。


俺がそんなせせこましい事で悩んでいるうちに、ついに門が開かれ、彼らは俺にそれ以上興味を持つことなく外に出て行った。


俺は、荷馬車や商人たちに先に行かせ、一番最後に付いて行き、川に差し掛かったところで橋の下に降りた。


川はそれほど大きくなかったが、ところどころ、水が深く緑色に見えるところがあり、中に入るのは危険な気がしてやめた。俺は小学校から体育が2で泳げないのだ。そんな訳で、ひざ下ほどの深さのところに10センチ程の小魚の群れが居たので掬おうとするが、逃げられる。石を投げてもあたらないので止めた。


魚を諦めて、くるぶしほどの深さの所で石の裏に何かいないか探していると沢蟹が居た。

慌てて捕まえようとするが、沢蟹は俺を挑発するかのように左右に小刻みにステップしつつ逃げ回り、追い掛け回すと緑色の深い場所に逃げて行ってしまう。

そいつを諦め、元の場所で探していると、また同じような沢蟹を2・3匹見つけたが、みんな似たような動きで挑発しつつ水が深い所に逃げていく。どうやら逃げるのに慣れているらしい。それに挑発までするとは沢蟹の癖にある程度の知性があるみたいだ。甲殻類の分際で。


動き回り疲れた俺は、先に洗濯をすることにした。

まず、糞まみれのボクサーパンツをじゃぶじゃぶあらう。

洗剤がないのが残念だが、近くにあった石に汚れ部分を叩きつけながら洗うと、かなり綺麗になった。ついでに濡れたボクサーパンツで革ジャンの血を拭くと、内側のシミは残ったものの、血の匂いはほとんどなくなった。

パンツと同じようにジーンズも洗った。ジーンズを洗っているとき、川の中央で魚でも跳ねたのか、『ぱしゃん』と音がして大きな波紋が走った。俺は某漫画の奇妙な冒険を思い出して『深緑水色のオーバードライブwwww』などと呑気に一人でウケていた。



ジーンズとパンツを洗った俺は血だらけの布も洗うことにした。

布はリア充を運べるだけあって結構デカい。幅1M長さ2Mぐらいの大きさだ。

軍で使ってたのかボロボロでも丈夫で、新品なら結構高いと思うのだが、リア充を運んだ後、返そうとしたらそのままくれた。


ふぁさっと広げて水に漬けると、血の跡が水を吸い込み、成分が溶けて薄い赤色の液が染み出てくる。手もみ洗いしようとするが、水深の浅い場所では石に布が引っかかり、うまく洗えない。何よりデカいし。

結局、膝ほどの水深の所で、川の流れに鯉のぼりの如く流す感じで布を伸ばし左右にフリフリ振って適当に洗うことにした。


あそーれ、ふーりふり。

ふーりふり。


そんな感じで半分遊んでいると、布が何かに挟まったのか、いきなりガチッとした手ごたえがあり、布がぴんと張った。なんじゃこりゃ。根がかりかよ。


引っこ抜くために思いっきり引っ張るが、びくともしねえ。


近くの大きな石に左足を掛け、体を45度に倒すようにして足を踏ん張り、持てる力をすべてつぎ込んで引っ張ると、ググッとゆっくり動き始めた。一旦動き始めた後は普通に引っ張ればゆっくりながらも動くようになったので、そのままスローモーションな動きで水深の浅い方へ移動。



布を見ずに、2メートルほど歩いたところで水深が浅くなったので布の方を振り向くと。





大型犬並みの大きさの、足が何十本もあるカニもどきが、シェパードの頭ほどの4つの鋏を使って布にしがみついてました。






「うわぁぁぁぁぁ!」

叫び声をあげ、布を離し猛ダッシュで陸に上がる俺。後ろでは半分体を水の上に出したカニもどきがキシュキシュ鳴いてる。

そのまま置いてあったジーンズやパンツを手に取り、街道に上がり、橋の上から川を覗いてみると。


十匹以上という数のカニもどきが俺の居た浅瀬を囲んで水中で半円陣を組んでおり、そのうち一角では俺の洗っていた血だらけの布を取り合い、カニどもが争ってズタズタにしていた…


どう見ても、俺を捕食する気満々でした。本当にありがとうございました。

そうかー。さっき沢蟹たちが挑発しつつ水が深い所に逃げたのは、俺を襲わせるためだったのかー。いや、びっくりだわー。というか、あんな生き物がいるのがびっくりだわー。


しばらく橋の上から見続ける事2分。カニもどき達は布を切り刻んで食い終ると、再び半円陣を組んで獲物を待ち構えていた。こんな状態じゃ何もする気がしないので、俺はスゴスゴと城下町に戻った。





城下町に戻ると、俺は荷物を隠し、先ほどの飲食店に行ってみることにした。

ポケットには謎のコイン十枚。どれくらいの価値かはわからないけど、少なくとも軽食は取れるはずだろう。



飲食店に着くとオープンテラスには4・5人の客がおり、食事をしているのが見えた。どうやら営業しているようなので、店の入口から中に入ったところ、そこにいた青年に止められた。


「すみません、食事したいんですが…」

青年にビビりつつも、自己主張する俺。

「申し訳ありませんが、当店は現在満席でして」

笑顔を崩さないが断固入店を拒否する青年。

どうやら俺を浮浪者と思ってるらしい。まさにその通りだけど。


「いや、お金はあるんですよ」

昨日ヘイシーズに貰った謎コインを見せるが、青年はそのコインを見ると。


「残念ですが、それだけのお金では『何も』買えませんよ」

そう冷笑してお帰りくださいと俺を礼儀正しく入口から追い払った。







今日も、城門から浅野は出てこなかった。

閉じた城門を見て俺は頭を抱える。

唯一の知り合いであるヘイシーズに土下座でもしてパンでも分けてもらおうかと思ったけど、門番は違う人に変わっていた。勇気を出してヘイシーズの事を聞いてみると、昨日問題を起こしたので配置換えされたらしい。


どうやら、さすがに事故とはいえ殺人は問題だったようだ。

この世界にもある程度の倫理観があることに安心するが、そのおかげで食事を得る最後の道が断たれた。


食事を取ってない状態で昨日今日と動き回ったせいか、あまりの飢えに吐き気がこみ上げてくる。

これは早く浅野が出てこないともう死ぬかもしれん。

いや、浅野が出てきたところで浅野が金や食い物を持っている保証はないので同じか。



薄暗くなるに従い、何らかの動力で動いてるであろう大通りの街灯が淡い白い火を灯し始めた。

人通りが無くなってきた大通りにまた派手な服の娼婦がポツポツと立ち始める。彼女らが一定間隔で設置された街灯の下に立つ光景はなんだかファッションショーのようで、この世界はなにかのイベント会場なのかとも思えてくる。


俺も女だったらああやって食い扶持稼げたのにな。

そう思ったが、俺のキモイ見た目は女になったところで変わらずに誰も買わないと思い自嘲して笑う。あそこにいる娼婦たちでさえ、それなりに美しいにもかかわらず、今朝起きた時にまだ売れていない女性がちらほらいたのだ。それに比べればここにいた女性は浮浪者の前というハンデにもかかわらず、すぐに買われたのだからよほど売れっ子だったのだろう。


彼女の事を思い出していたら、道の向こうから来る彼女を見つけた。

俺は彼女に場所を明け渡すために荷物を取った。そしてその場に立ちあがろうとしたが、空腹で力が入らず、その場でしりもちをついてしまった。


彼女は真っ直ぐに俺の方にやってくると、もたもたしてる俺の前にポンと何かを投げ出した。布に包まれた何かだった。


俺が彼女を見ると、彼女は口だけで微かに笑い、俺に背を向けてそこで客を待った。背が高く背筋がピンと伸びていてカッコよかった。茶色の髪をアップにまとめ、毅然としていて『私は何も恥ずかしい事をしていない』と言っているかのようだった。


俺が布の包みを開けると、中には黒いパンにサラダ。少しばかりの肉も入っていた。

驚いて彼女を見るが、モデルのように凛とした雰囲気の彼女に声を掛けられず、心の中で何度も何度も礼を言った。


彼女は30分もしないうちに中年の男に買われていった。

昨日と違い、でっぷり太った男だった。


俺は彼女が男と連れ立って歩いて行き、姿が見えなくなるのを待って、パンを食べた。

パンは最初は驚くほど硬かったけど、噛んでるうちに柔らかくなった。






無理ゲーだと燃えるタイプ



俺のステータス

??? (なんか回復したらしい)


持ち物

Eシャツ&パンツ…体力+1

Eスニーカー  …敏捷+3

E革ジャン   …防御+5

Eチノパン   …体力+2

E革ベルト   …魅力+1


  

謎コイン×10

ジーンズ    …防御+3

ボクサーパンツ …腕力+1

バスケット&布

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