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無能な三十路ニートだけど異世界来た  作者: ガイアが俺輝けと囁いてる
~レティルブルグの戦い (歴史の分水嶺編)~
31/89

レティルブルグわいせつ事件




 浅野は約束通りシスさんを連れ帰ってきた。

 割とあっけなく。

 まるで迷子の迎えに行くかのように、部屋を出ていくと、1時間もしないうちに連れ帰ってきた。


 俺も、浅野の同僚も驚いていたし、当のシスさんも部屋に入ってきたときは、狐につままれたかのような顔で俺を見ていた。




 「とりあえず、ありがとう」

 とりあえず、俺は浅野に礼を言った。


 「えっと…ありがとう?」

 シスさんも状況が把握できていないようだったが、浅野に礼を言ってた。


 「ああ、いいよ。大宮には期待してるから」

 浅野はそう言うと、そのまま同僚と出かけて行ってしまった。


 相変わらず、颯爽としていて格好がいい。

 できる男とはああいうのを言うのだ。

 


 「…えっと…誰?そして、なんで?」


 シスさんはまだ混乱していた。どうやら浅野は何も伝えていなかったらしい。


 混乱している彼女に俺は浅野の事を簡単に話した。昔の知り合いという事と、なんかの仕事手伝えばシスさんを自由にしてくれるってところらへんまで。そこまで話すと、シスさんは不安そうな顔で俺に聞いてきた。


 「仕事ってなんなのよ・・・?」

 「さあ…」


 「ヤバイ仕事じゃないの…?」

 「いや…でも俺に頼むぐらいっすよ。簡単な仕事しか頼まないと思うんすけど…」


 「そうよね…」

 「さっき俺のスキルも全部チェックしてましたし…」



 シスさんに聞かれて俺は急に不安になった。

 そういえば、仕事がどんな内容か全く聞いてないのだ。


 そのまま二人で話し合ったが、結局何もわからなかったので、浅野の帰りを待つことにした。


 浅野は結局その日は帰らなかった。






―― お仕事――――――――――――――――――





 「どうもー。清掃でーす。」



 明らかにやる気のなさそうな声を出しながら、俺たちは居並ぶ護衛騎士の横を通り、扉を開けた。そして、扉を閉じるなり、俺は転がしていたカートからシーツと洗濯籠を取り出す。その間に、シスさんはカートから布巾を取り出し、机を拭き始めた。


 それを横目に見ながら、俺はずらりと並ぶベッドに近づくと、端っこから順々にシーツを取っては、洗濯籠に入れていく。俺が取るシーツは使っていないかのような綺麗なものもあれば、何をやったのかところどころが黄色く変色している物もある。ひどい場合には、触ると粘液のねちゃっとした感触があったりするので、注意が必要だ。最初に仕事を教えてくれた女の人も、シーツ交換の時は、気持ち悪そうにイチイチ確認しつつ交換していたっけ。かといって、ゆっくりやってたら間に合わないけれども。


 俺も掃除をやり始めた6日前はあまりの汚さに摘まんで洗濯籠に入れていたが、3日目にして汚さに慣れてしまい、今では両手でグワシと掴んでいる。時折、地雷をつかむこともあるが、カートに石鹸水を入れたバケツを積んであるため、その中で手を洗えば解決できる。だから、頭を麻痺させて腹をくくれば気にもならない。


 そうこうしている内に、シスさんが机の清掃と個人別の洗濯物の回収を終えた。俺もシーツを取り終えたので、2人で協力してベッドに新しいシーツを張っていく。部屋の中には何人も騎士たちがたむろしているが、みんな俺たちに興味を示さない。せいぜい、俺たちが私物が置いてあるベッドに近づくと、私物を無くされないように、近寄ってきて持っていく程度だ。



 そうやって、騎士たちに空気のように扱われながら、俺たちはシーツを張っていく。畳んであるシーツは8つ折りになっており、それをパタパタと広げて、二人で引っ張ってベッドのマットを巻くように固定する。こうやって協力するうちにすべてのベッドのシーツが交換し終わったので、俺たちはカートに洗濯籠を積み込み、適当に一礼して部屋を出た。




 廊下を歩いていると、浅野達に出会った。

 浅野は俺たちと同じようにカートを押していた。


 「これから上?」

 浅野は俺たちに聞いてきた。


 「そう。今から。」

 警戒しつつ、シスさんが浅野に答えた。


 「そうか、じゃあしっかりと頼む」

 浅野はシスさんではなく、俺に目をまっすぐに向けてそう言うと、そのまま俺たちの横を通り過ぎて行った。





―― 眼下の演習――――――――――――――――――



 「あいつ絶対に何か企んでる」

 シスさんは不機嫌そうに呟いた。


 「いや、浅野は悪い奴じゃないっすよ」

 俺は窓から見えるゾンビの軍隊を眺めながら答えた。

 かつて俺たちが操っていたエリゾン。4日ほど前から姫がエリーに命令させたのか、町中のエリゾンが中庭に集まって軍隊さながらに訓練しているのである。



 「悪い奴じゃないってなんでわかんのよ」

 言外に『悪い奴に決まってるじゃない』と滲ませながら吐き捨てるように言うシスさん。



 「ん~…だって掃除するだけでシスさんを解放させてくれたじゃないですか」


 ゾンビの軍隊を眺めながら俺は答えた。

 ゾンビたちは騎乗した騎士にしたがって一列に並び、全員が長槍を上下に上げ下げしている。突くというよりも、どうやら一斉に『叩きつけ』る練習らしい。信長の野望で言うところの槍衾というやつだろうか。



 「その掃除の内容がおかしいじゃない…」


 「理由はちゃんと説明されたじゃないっすか」


 槍の上げ下げをやめたゾンビが列を保持したまま、槍を水平に構えて突撃していく。そのまま巨大な藁人形の群れに各々が好き勝手に槍を突き刺したのちに、バックステップで元の位置まで戻っていった。


 「理由ねえ…無能で危険がないからおそばにって…普通、あり得る?」


 「いや…でも姫さんからの要望だったらしいっすよ。その条件。」


 俺はエリゾンの訓練を見るのを止め、視線を前に戻す。

 ちょうど、目の前に目的の部屋があった。


 俺たちの姿を見て、今日の護衛当番がカートのチェックをするために近寄ってくる。


 一人がカートの中に中に危険物がないことを確かめると、もう一人の騎士が扉を開けて俺たちを部屋の中に入れてくれた。



 部屋に入ると、俺たちはカートからいそいそと仕事道具を取り出した。

 どうやら、部屋の主は中にいないらしい。


 これはチャンスである。

 そう思った俺たちは速攻で仕事を終えるために、高速で作業を開始した。



―― 掃除の理由―――――――――――――



 浅野が俺に頼んだ仕事。

 それは『お姫様の部屋を掃除してほしい』という事だった。

 最初は何かの隠喩かと思ったが、実際やってみるとリアルに掃除だった。


 部屋のテーブルの水拭きから始まり、床のカーペットのからぶき。シーツの替えから下着の回収(シスさん担当)まで。


 なんでそんなことを俺たちに頼むのか疑問に思って聞いてみたんだが、どうやら姫様はいろいろな所から恨みを買っているらしく、常に命を狙われているらしい。そのため、暗殺を防ぐために、この城では掃除などは古くからの部下が行っているそうで、浅野達のような一般の清掃業者が作業することはお目付け役から禁止されてるんだってよ。


 しかし、この姫様というのが結構プライド高いらしくて、部下やお目付け役が部屋に入るだけでも嫌がる。ましてや、使った下着を見られることもかなり嫌なそうで、かなり揉めてたんだってよ。つまり、思春期の女の子にありがちな悩みだ。姫が何歳か知らんけど。まあ、何歳にせよ、足元に倒れてた俺が下からチラ見しただけでも踏みつけるぐらいだったから、よほど潔癖なんだろう。


 そういうことからもわかるけど、まー周りはよっぽど困ってたんだろうな。姫の思春期に。浅野なんかはお目付け役の白菜爺に顔を合わせるたびに、解決方法がないか相談されていたらしい。


 で、相談された浅野も困ってたらしい。

 普通なら、メイドでも放り込めば解決する問題なんだが、今、街に女が少ないらしく、メイドとして適正な女性がいない。いたとしても、ゾンビの町を1カ月近く生き抜く女なんか副業冒険者なんかが多くて、能力が高いため姫の暗殺者の危険もあると。


 そんな時、現れたのが俺。

 ついでにシスさん。


 『男ではあるものの無能な人なら、掃除に入っても何もできませんよね。ついでに能力が微妙な女の子も見つかったんで、下着とかの回収用に女の子もつけますよ。』


 そういう売り込みがあったかどうかは知らないけど、俺たちはここに来た次の日に姫と目付に呼びつけられ、いろいろチェックされた。そして、見事『姫様御用達』の清掃員に内定できた。



―― 職業倫理――――――――――――



 「やっぱり、何も裏はないと思うんすよね。」


 俺は重厚な木で作られている書斎の机を拭きながら、リビングの向こうの部屋に居るシスさんに話しかける。テーブルの上は真っ黒な石でできた灰皿(どかそうと持ったらむっちゃ重かった)や金細工のペン(これも重かった)など高価なもので一杯で、どれか一つだけでもかなりの値段だろう。目立つからパクらないけど。


 「あんたは甘いのよ。絶対にこんなうまい話は無いに決まってるでしょ」


 シスさんは寝室のタンスに姫の下着を詰め込みながら俺に答える。そうしながらも時折、タンスの中に金目のものがないか探っている辺りは、さすがシスさんと言えるだろう。外れたボタン一つでも、金細工ならいい金になるのだ。


 「そうすかねぇ…」


 シスさんの警戒心に疑問に思いつつも、俺はテーブルの上に置いてあるチョコを一つ掠め取る。これは窃盗ではない。役得なのである。姫の部屋はアメニティグッズだけでも高価なものが多く、ここ5日ほどだけでも俺たちはそこそこいい思いをしているのだ。



 「まあ、いいわ。今日は姫が居ないし。この好きにアタシちょっとタンスの奥探りたいから、あんた下着回収してきてよ」


 本来の役割なら、姫の使用済み下着の回収はシスさんの役割である。

 これは、姫から直々に言われた事であり、今までの回収時は常に姫が部屋に居たためサボることができずにいたのだ。


 「俺がっすか?イイっすかね?」


 「どうでもいいよ。風呂場の前の水張った桶の中にあるやつね。ついでにアメニティも補充しといて」


 「はいほーい^^」



 シスさんから許可を受けた俺は喜び勇んでカートに向かった。

 水でビショビショとはいえ、姫の使用済み下着を俺が最初に触れるのだ。


 期待に胸を膨らませつつ、カートから石鹸などのアメニティを取り出すと、俺は書斎に併設されている風呂場に向けて軽いスキップとともに進んでいった。



―― 虎穴の中の虎児―――――――――――――――




 期待一杯、胸いっぱい。

 風呂場のドアを開けると、俺は違和感を覚えた。


 風呂場は浴室と脱衣所に分かれており、下着が置いてあるのは脱衣所なのだが、その奥の浴室から『シャーシャー』とシャワーの音がするのだ。



 身の危険を感じ、息をひそめる俺。


 最初はシャワーが出しっぱなしかと思ったのだが、よく聞いてみると、シャワーの音に強弱がある。これはつまり、シャワーの前に人がいるという事だ。


 シャワーの前にいる人…だれだろうって、一人しかいない。


 姫は入浴中だったのだ。


 いつから入浴中なのかはわからんが、俺たちが入ってから5分ぐらいは余裕で経っているのでおそらくそれ以上だろう。シャワーで5分。出てきてもおかしくない、微妙な時間である。



 これはすぐに風呂場を出て、シスさんと交代しなければいけない。

 本来は、俺は風呂場に入ってはいけないので、見つかった場合は、何をされるかわからん。下からチラ見しただけでも具足で踏まれたのだ。シャワー中に風呂場に侵入したことがばれたら、最悪殺される恐れがある。

 


 ヤバイ、すぐに逃げよう。


 そう思った俺の目に、風呂場の隅に置いてある籠が見えた。

 位置的に、姫の服だろう。

 あそこに脱いだ服を入れて、風呂場にってことか…


 …そういえば、下着を持って来なければいけなかったんだ。


 そう思って、水の入った桶をきょろきょろと探すが、ない。

 どうやら、まだ姫が回収用の下着を準備していないらしい。



 ということは、だ。

 あそこにおいてある服の中に、姫の下着があるんであって。

 その下着は、いつもの水でビショビショになってる残念な使用済みのやつじゃない。


 脱ぎたてほかほかの姫の使用済みパンティーだ…




 「脱ぎたて…ホカホカ…」



 俺は、何かに吸い寄せられるかのように脱衣所を進んでいた。


 頭の中は、今までの人生で最も高速回転。


 捕まるぞいやいや女の風呂は長い長くても武人なら気づく気づいてもシスさんと勘違いして何も言われんかもそれに気づかれても仕事しようとしてましたっていえば命令不服従は死刑白菜爺の大剣が意外と騎士もモラルが低かったから姫も慣れてるかも姫はいま裸だから気づいてもでないんじゃね?



 遊園地の乗り物で言ったら、メリーゴーランドを超えて、不良中学生がフルパワーで回すコーヒーカップぐらい色々な考えがぐるぐる回ってた。




――― 葛藤の末に――――――――




 気が付くと、俺は姫の脱衣籠を漁っていた。

 その姿は日光で観光客の買い物袋を漁る猿のようだった。



 パンティーはさらさらと肌触りがいいシャツの下にあった。

 その姿はやや青みがかかった白で、いつもと違い、乾いたなめらかな絹の感覚がさらさらとしており、気のせいか下の布地に水とは違う少し湿っぽい感触が残っていた。


 俺は興奮した。

 初めて手に取る脱ぎたての女の下着に。


 ためしに匂いを嗅いでみたがかすかに絹とは違う体臭の匂いがする!


 匂いに狂喜して舌でチロリと舐めてみたのだが…特に味はしなかった。

 舌では足りないのかと思い、布の部分を軽く口に含んでみたが無味乾燥な味わい。


 残念だが、それほど残留物は多くないようだ。

 

 そう思いながら、浴室のガラス戸を見る俺。

 シャワー音は連続して続いており、姫が出てくる様子はない。


 だったら、やれるところまでやろうと思い、姫のパンツを顔に被ってみると、なんだか顔中の皮膚が絹の布がさわさわと保護されてあったかくなってなお興奮した。



 こんなに柔らかくて優しい肌触りの物を女性は穿いているんだな。

 俺は顔面にパンツをかぶりながら腕組みして考えた。


 それってどれぐらい気持ちいいのかって。




 少し迷ったが、俺はズボンを脱いだ。




 その時に、ポケットの中に入っていたチョコが

 扉の閉まった浴室から漏れ出る暖かい湿気と興奮した俺の体温ですっかり溶けて

 たらりと脱衣所の床に垂れ落ちて行った。



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