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金に目がくらんだバイト先が超絶ブラックだった件

前回のあらすじ。


死にかけた。何かが飛んできて助かった。

地面に刺さったバールのようなものを引き抜いた。

多分伝説の武器だと思う。


つまり作者が助かった理由を後で何とでもできる様に先送りしやがった。





  お前らはクズだッ!

  クズの癖に、粋がって突出する早漏野郎だッ!

  お前らは人間じゃない!

  アントンのゲロに沸くウジ虫程の価値しかッないッ!


 整列する俺たちの間を、この世界に場違いな戦闘服を着た男が一人一人の顔を覗き込むように歩き回る。


  ウジ虫はすぐに死ぬ!

  だがお前らが死んだところで、1ピクル(現地通貨・約10円)の損もない!

  お前らの死は乳臭いヒョロ娘が垂れながす卵子の死よりも気に止められない!

  おい、そこの陰毛モヤシ!今回の目的は何だッ!


 歩き回っていた男は、装飾だらけで立派な鎧を着ている天パーで女顔の少年の前に立ち止まると、怒鳴りつける様に尋ねた。


 「ボズ共の集落を焼き払う事です!」


 少年は顔を真っ赤にしながら声を張り上げて答える。


  俺に断りなく、勝ッ手に口を利くな!

  息もするなッ!

  後ろを向き、跪いてケツを上げろッ!

  俺の質問に答える時は必ず、『男爵』とつけろ!


 「わかりました、男爵!!」


 俺の斜め前の少年はこちらを向き、跪くと、尻を突き出すかのように高く上げる。

 男爵はその様子を一瞥だにせず、そのまま列の間を進んでいく。


  貴様らは全員ホモだッ!

  ケツの穴でボズの汚れたものを処理するだけのペ○スケースだ!

  女はボズの淡壺だッ!

  ボズに襲われて苗床になるだけの腐葉土だッ!

  『陰毛』、息をしてよしッ!


 世の中のありとあらゆるものを呪うかのような暴言を吐きながら、男爵は進んでいく。そのまま俺の前列の右端の女の所まで来ると、女のあごに手をやり、クイと横を向かせ顔を確認する。まだ若い女の白い顔が俺の位置からも見えた。


  女、ボズの苗床になりたいか?


 「…なりたくはありません…男爵。」


  甘えるな!

  腹から声を出せ!


 「なりたくはありません!男爵!」


  魔法を使えばボズに勝てるとでも思ったか?

  それとも股にボズを挟んで、一緒に天国にイク気だったのか?


 それを聞いて女はムッとしたような顔をするが、見咎めた男爵から『その場で腹筋50!』と怒鳴りつけられると、ヤケクソになって腹筋をし始めた。


  俺は股に酢漬けした腸詰肉をぶら下げるしか能のないホモには厳しい!

  だが、女にはもっと厳しい!

  ボズ共は俺より公平だッ!

  男だろうが女だろうがあいつらは捕虜を余すことなく使う!

  性欲!食欲!労働!男女の区別なく行う!


 男爵は女からはなれ、俺の列に移動してこちらに向かってやってくる。


  貴様らは糞弱いッ!

  頭も弱く、チームワークもない!

  雇えば雇うだけ死ぬ!

  そんな貴様ら下級冒険者を統括して・・・

  …おいちょっと待て、お前その装備はなんだ?

  ふざけているのか?


 一人一人の顔を覗き込むように歩いてきた男爵だったが、ふと俺の前で歩みを止め、俺に質問をしてきた。


 俺の左手にはエリーと一緒に作った手製の盾。余ったお鍋の蓋に木の板を張り付けて補強したもの。右手にはカニもどき先生との死闘で手に入れたバールのようなものを下げている。


 当然に、「ふざけてはいません!男爵!」と精一杯の声を張り上げて答える俺。


 元は鍋の蓋とはいえ、木の板は樫のような堅い木を使っており、手製だが十分な強度がある。エクスカリバールに至っては、先生さえ狩れるのだ。何も恥じる事がない。


 そう思って自信満々で答えた俺だったが、男爵の顔は見る見るうちに赤く染まっていく。どうやら、激怒させてしまったらしい。


  お前はどこのクソだ!

  脳天で焼畑をし過ぎて脳が溶けたのかハゲ?

  それとも努力してこうなったのか?


 延々と俺の前で怒鳴り続ける男爵。結局、バイトの中で一番怒鳴られた挙句、腕立て50回のサービスを頂いて、俺はようやく男爵から開放された。





――――――――――――――――



 事の発端は、先生を初めて狩っていた時に話しかけてきた冒険者たちだった。


 あの日から足のケガを治すため2日ばかり何もできなかった俺。


 彼らの言っていた、アントンの駆除依頼の事を思い出し、暇つぶしにギルドに行くとたまたま彼らがいて、俺の事を覚えていてくれたのか、あっちから俺に話しかけてきた。


 あの時最初に話しかけてきた、軽い感じの兄さんがリーダー。

 冷静な女魔法使いがサブリーダーで、立派な装備をした線の細い少年や薬師の女性は単なるPTメンバーらしい。


 そのまま挨拶や自己紹介を受けて話している内に、この前から俺が素人すぎて気になってたんだろうな、俺にどうやったら金が稼ぎ易いかなどの情報を教えてくれる事に。


 まあ、親切は有難かったのだが、基本的にニートな俺は『働きたくないでござる』な状態。なんで、彼らの話を聞き流していたのだが、エリーがアントンを狩りたがっていたので(干物が一匹1ピクル、つまり10円で売れるらしい。あれからエリーが稼げる唯一の収入になった)、縄張り争いになった時の事を考えて、親交だけ結ぶことに留めておいた。


 その日からは彼らに会うこともなく、俺はエリーとアントン狩りを請け負い、週3で駆除を行う程度の活動をしていた。


 やり方はエリーが囮となり、幼女に釣られたエロアントンが集まった所で、離れた場所に隠れていた俺が、ロリコンを石で(バールのようなものは重いからやめた)殴り殺すという単純なもの。


 これは意外とうまくいった。エリーが多少危険なのがネックだが、エリーに棒きれを持たせて振り回させる事で対処できた。


 しかし、最初の3回はノルマである20匹を楽々クリアできたのだが、2週目から奴らも学習したのかエリーに近寄らなくなり、3日かけても1回の依頼を達成する事しかできなくなってしまった。


 それでも、余り物の野菜くずを使ったエサで釣ったりと、色々工夫をしたのだが芳しい効果はなし。当然、実入りも減りモチベーションが低下する俺達。ひと月もしない内に、週3だったのが2週間で1回依頼を受けるしかできなくなってしまった。まあ冬が近くて寒くなって来たため単純にアントンの数も少なくなってきたのも理由の一つだが。


 その状況に拍車をかける様に女神の収入が減少し始めた。


 本人は俺達にバレていないつもりなようだが、朝方に隠れてルネ姐さんに返済の先延ばしをお願いしているのを聞いてしまったので、間違いない。冬は大抵の職業にとってマイナスの影響がある。女神も例外じゃなかったんだろう。


 姐さんは返済に興味なさそうだったが、エリー曰く、『意外と契約にはシビア』らしいので、姐さんがこの街を離れるまでに借金の返済が出来なかったらエリーと女神が売られるのは確実なんだってよ。


 その借金なんだが、一体どれくらいの借金があるのか聞くと、50トルテ(5千万)だと…。



 そんな金額の返済ができるワケない気がするのだが、元々は女神の購入代金50トルテ、エリー30トルテの80トルテなので、1年で30トルテは返済したらしい。日本より物価が安く、それ程大都市ではないこの街の経済規模からすると、かなり頑張っている方だろう。日本の売れっ子風俗嬢でも1年で3000万以上(食費・衣装代等考えるともっとか)稼げるのは少ない方だと思う。


 しかし、それでもあと2年はかかる。姐さんの仕事の内容は良くわからんが、家に家具が最低限しかない事を考えると、そんなに長くこの街に居るつもりはなさそうだ。




 どう考えても、アニャーナとエリーの未来は暗い。


 それはつまり、この二人にペット感覚で養われている俺の未来も同じだ。


 これはどげんかせんといかん。



 でも人手もなければ、金もない。無能力でコネもない。


 うんうん唸って2人で考えている内に、俺がリア充の事を思い出した。




 「人手が欲しいなら、死体動かせばよくね……?タダだし…」


 「アントンを運ぶ時、【屍役術】で動かしてたから、レベルかなり上がったよ…行けるかも…?」




 思い立った俺達は、即座に東門外のリア充を埋めた場所に移動。


 場所はうろ覚えだったが、適当にエリーが屍役術を掛けると。


 『ボコッ』と地面を掘って、半裸のゾンビが登場。

 そう言えば、シャツ以外の服、全部俺が脱がしてたわwww


 「リア充、久しぶりwwww」


 と馴れ馴れしく挨拶すると、向こうも俺を覚えていたのか、半分腐った顔でぺこりと挨拶してきた。リアルが充実してただけあって礼儀は正しいようだww


 とりあえず、リア充の状態を確認する俺。エリーにはグロすぎるので向こうを向いていてもらう。


 リア充を埋めていた所は土壌が乾燥して虫や植物も無かった所だったうえ、また秋の半ばに埋めたこともあってか、体の腐食はひと月以上経っててもそれほど進んでいなかった…思ったよりという意味であるが…


 トカゲでの実験の結果から言って、別に骨だけでも動くのだが、人目にさらされる事を考えると、肉がある程度ついてた方がいい。

 まだ大丈夫なうちに、なんか処置する必要があるな…と考えていたんだが、どうやったらいいかサッパリわからん。


 俺は理系じゃないし、高校の科目も科学と物理で生物は中学生程度の知識しかない。それでも、聞きかじった知識や、昔学校で習った知識を総動員して死体を保存する方法を考える俺。


 砂漠によくあるミイラなら乾燥っぽいし。

 あと標本にするならホルマリンか。

 ハブ酒はアルコールとかに漬けてるっけ。


 うーん。


 考えた挙句、とりあえずエリーに【日光乾燥】をかけてもらい、その間に市場で安い酒を買ってきてぶっかけることにした。一応、リア充にリア充的にそれでいいか確認すると、本人はうんうん頷いていたのでよしとする。


 さっそく街に戻った俺が市場で行きつけのオバちゃんに酒の事を聞くと、ハブ酒の様に生き物を漬け込むタイプの酒があるらしく、しかも安かったので3リットルほど買う。

 ためしに飲んでみたが、かなりきついアルコール度数だ。期待できる。


 値段は10テル(1万)以下に抑えた。アントン狩り1回分の報酬だが、必要経費だ。仕方ない。


 そのまま俺が酒を持って東門まで移動すると、エリーがアントンを7匹ほど倒してた。


 腐ったリア充を喰おうと近寄ってきたところを、リア充に潰させたらしい。これはエリーだけでもアントン狩りができるという、嬉しい誤算である。


 そいつらとリア充に【日光乾燥】をかけて乾かすエリー。


 しばらく待っていると、かなりリア充が乾いてきたようなので、アルコールをぶっかけようと思ったのだが、すでに腐っている部分が気になり、リア充に自分の体の腐った部分を先に剥ぎ取らせることにした。


 『ズボッ!ドシャッ!』と自分の体を躊躇いなく解体していくリア充。自己解体ってどんな気持ちか気になったが、本人は至って冷静に作業を行う。しかも手際がいい。リア充の生前はどんな職業だったんだろう?聞いてみたいけど、喋れないみたいなんだよな。後でエリーにコックリさんやってもらおうかな。


 そうアホなことを考えている内に、リア充は自己解体を終えた。結果として、内臓のほとんどと筋肉や脂肪の一部が無くなり、なんというか、骨とスジが目立つ外観になってしまった。さすがにグロイので、後で包帯でも買って巻いてやろう。


 そうすると、この姿のリア充をリア充と呼ぶのは何か間違ってる気がしてきた。いろいろ考えた結果、『骨皮スジ夫』と命名してやる。ネーミングセンスが安直すぎて、ひょっとすると、スジ夫は怒るかもと思ったが、意外とウケてボロボロの顔で笑ってた。元リア充だからノリがいいのである。俺みたいな根暗だったら下向いて落ち込んでるだろうけど。


 まあそんな事よりも防腐処理だ。


 ウケて笑い続けているスジ夫に『まあこれでも飲めや』と酒を1本渡して飲ませると共に、元居た穴に座り込んだスジ夫の頭から酒をかけていく。


 だらだらとスジ夫の体を流れていく酒。気分は優勝球団のビールかけ。

 辺り一面が酒臭くなり、穴の中には酒で小さな水溜まりができる。


 そのままスジ夫を穴の中に戻し、上から残った酒をかけた後、穴に埋めて酒漬にしておいて、その日は家に帰った。


 次の日に俺とエリーはギルドでそれぞれ別にアントンの駆除依頼を受けて東門の外に向かった。


 1日酒に漬けたスジ夫を穴から呼び出すと、乾燥させて軽く水気を飛ばしたうえで、俺の持っていたスジ夫の服を返してやった。最近はアニャーナに買ってもらった現地民の服を着ることが多く、革ジャンなどは必要なかったし、スジ夫が喜ぶ顔が見たかったのである。


 そして、そのままアントン狩りに近くの林に連れて行った。


 結論としては『スジ夫すげえ』。


 まず、死んでるから動かない。動かないから気配0。アントンの警戒心も0。


 そして酒をぶっかけた影響か、すげえ酒の匂いがする。これがアントンを大量に呼び寄せてるらしく、スジ夫が倒れていると、アントンが数十匹やってくる。そして匂いに酔っぱらってるのか、動きも鈍くなり、狩り放題。30分もしない内に、俺達2人分のノルマを達成できた。


 ほくほく顔で換金する俺達。

 1日で20テル(2万)以上の収入とは結構な稼ぎだ。


 しかし、それでも借金の金額からすると微々たるもんだし、周りの冒険者と問題を起こさないためにも、狩は週3回の依頼が限度だろう。調子こくと、女神の様にリンチされる恐れもある。

 スジ夫の維持費(酒)も1週間に1回は酒を1リットル程度かけたほうがいいだろうし。


 アントン駆除以外の収入がいる。


 これは切実。


 かといって、販売員や肉体労働なんてしたくない。働くのはなんか嫌だ。というか、働いても借金総額と相対的な意味であまり金にならん。借金は50トルテ(5千万)なのである。


 こんな事なら、兄ちゃんたちが教えてくれた金の稼げる仕事を覚えておけばよかった。そう思ったが、忘れた物はしょうがない。それに俺にアントン駆除以外の仕事ができるかといったら自信もない。なんせ30までバイトさえした事なかったのだ。


 そんなんで、ハロワの依頼ボードを見ていると、カニもどき先生の狩猟依頼があった。依頼料は150テル。テント設営(5テル)や販売員(時給応相談)と違った、冒険者らしい依頼だが人気がないのか募集日付が二重線で消されて金額と共にどんどんと伸ばされている。


 金額が高いのが気になって窓口で聞いてみると、最近、先生の養殖場で温度管理に失敗し、市場で先生の肉が品薄らしい。しかし、トルテポルタ地方の高級料理店での名物たる先生の肉は一定以上の量を確保する必要があるらしく、この値段でも買いたいと言う事なんだとか。



 150テル(15万)。それは俺とエリーが1週間に稼げる金の約5倍である。


 しかし、エリーと俺には先生に殺されかけた苦い思い出がある。

 エリーに泣かれたのは俺が死にかけたあの時だけだ。


 しかし…150テル…2匹とれば300テル…

 1週間に2匹とって、それを1年やれば…それだけで15トルテを超す。

 女神が今までと同じく、1年で30トルテ稼げば返済が現実味を帯びる額だ。

 もちろん、そんなに価格が高止まりすることは考えにくいが、そのペースで金を稼がないと、おそらく女神とエリーが売られる。


 女神には、死にそうなところを救ってもらった恩がある…

 今でも、実の姉か母親の様に(女神は年下だけど)面倒見てもらってるしな…



 悩んだ挙句、俺はエリーに相談して―――





―――……


 「スジ夫、気をつけろ!近すぎるぞ!」


 「おk!いい感じ!釣れたよ!引っ張って!」


 俺とエリーは先生に雪辱戦を挑んでいた。


 以前と違うのは、スジ夫の加入により橋の下に男2人という布陣ができた事。

 それにエリーはスジ夫の他に、エロトカゲ軍団を5匹ほど同時に屍役している。



 俺とスジ夫は協力して先生を浅瀬に引き上げる。

 この前と同じく、怒り狂って鋏を振り上げる先生。


 俺は一旦陸に上がり、先生の殻を砕くことのできる唯一無二の武器、バールのような外観をしたエクスカリバールを装備する。


 スジ夫は防御専門なので、エリーと一緒に作ったお鍋の蓋に木を張った円形盾と、廃材から作った大盾だ。置いてあったモノを両腕に装備し、先生の前に立ちふさがるスジ夫。リア充だった時は素手で兵士に向かって行って殺されたスジ夫だが、ゾンビになって落ち着いたのか貫禄がある。


 先生はスジ夫の酒の匂いが気に入ったのか、俺を無視してスジ夫に攻撃を仕掛け始めた。わざわざスジ夫が敵をひきつける必要を削いでくれて助かる。


 スジ夫は内臓を取ってしまった分、俺よりも多少軽いので、先生の攻撃を受け切れるか不安だったのだが、耐えてくれている。むしろリア充だった分、俺よりも体の捌きが鋭く、危なげなく渡り合えてる。防具も以前と違い、使えるものだと言う事も大きい。


 そこをエリーが操るエロトカゲ軍団が、先生の周囲をぴょんぴょん飛び跳ねて、注意を引き始めた。それも、スジ夫の邪魔にならない様に、俺の方に先生の目が行かない様にと打ち合わせて、計算された動きだ。


 噛みつくような動作で飛びつくエロトカゲがよほどウザかったのか。

 スジ夫を4つの鋏で攻撃したまま、エロトカゲを蹴り裂こうと右側の鋭い足を延ばす先生。


 じっと大人しく息をひそめて先生の隙を窺っていた俺がそれを逃すわけがない。


 俺は先生の後ろからそうっと近づくと、何十本とある足の内、左後ろ周辺の一群に向けてエクスカリバールを野球形式のフルスイングで打ち込む。


 『バキバキッ』っという気持ちのいい音と共に、間接の逆向きに力がかかった先生の足の一群は哀れ、へし折れてしまい、先生は大きく態勢を崩す。


 俺はこの機を逃さず、先生の後ろ側から上段に構えたエクスカリバールを腰の入った振り降ろしで叩きつける。『ぱしゃっ』という軽い音と共に、エクスカリバールは先生の殻にめり込む様にそのバールような形状の傷跡を刻み付けると、先生の体に頭の半分を入れ込んだまま、地面に急降下。その場に抑えつけた。


 俺が先生を抑え込んだことを確認したエリーはエロトカゲ軍団を川の深い部分に散らす。


 他の先生方がやってこない様に、エサにするのだ。


 また、スジ夫は先生の鋏の上に大盾をかぶせ、万が一にも反撃されないようにする。


 そして俺は、押さえつけられた先生の鋏に。


 バールのようなものを一本一本の根元にねじ込む様に突き刺して、解体し、反撃の目を完全に詰んだ。






 俺たちの前には、4つの鋏を解体され、左後ろ部分の足をへし折られた先生が、歩くこともできずに、泡を吹いている。


 俺は何十年も一緒に過ごしたペットの死に際を看取るかのように、先生を見つめている。


 いつの間にか、エリーも川岸にやってきており、固唾を呑んでその時を待っている。


 スジ夫はなんで俺とエリーがこんなに緊張しているか理解していないようだが、元リア充らしく空気を読んで手出ししようとしない。


 俺が狙うのは、先生の心臓があるボディの中心部。


 俺はそこに狙いを定め、バールの様に先端が二股に分かれたエクスカリバールを構える。


 焦って狙いを外さないかという一瞬の躊躇の後、先端を一気に突き刺すと、エクスカリバールは先生の甲羅をたやすく貫通し、先端は腹から抜けてくるぶしほどの深さの川底に突き刺さった。


 その瞬間、上空を仰ぎ見るかのごとく、先生は大きく脚を延ばした。そして、そのまま静かに脚をおろし、ブクブクと蓋を開け閉めして泡立っていた先生の口はそれっきり動かなくなった。



 これが、この世界に来た俺とエリー、スジ夫の3人が『初めて』この世界の『冒険者』となれた瞬間だ。


 俺がこの世界に来てから四十と数日。

 先生との最初の戦いからは約一月後の出来事であった。




   ⇒To Be Continued…



 ~人物(魔物?)紹介~


 骨皮スジ夫  元リア充


 名前不明の元地球人。オーマと同じく地球から飛ばされてきたが、城の領主のスキルチェックで生産スキルがなかったため、比較的悪い待遇を受けていた。そのまま労働奴隷として売られる予定だったものの、周囲の地球人をまとめて兵士と騒動を起こすなど、反抗的な態度が目につき、見せしめの意味で捨てられる。以後の運命は本編参照。

 茶髪に東洋人の外見だが、実は日本留学中の香港人。親が金持ちかつアスリートだったりする。非常に行動的で頭が良かったのだが、軽率な行動も多く、結果として死ぬことになってしまった。

 死後、エリーの屍役術で魂を戻されゾンビとして復活するが、肺や心臓などの内臓が軒並み腐っており、喋ることもできない。脳も大部分が死んだ状態のため、魂に刻まれた行動をなぞる事が限界らしく、意思疎通はできるものの、自発的な行動はほぼ不可能。





新しいサブ職業を手に入れました。

―川漁師―

・腕力↑体力↑器用さ↑


以下のサブ職業と管理情報で入れ替える事が出来ます


―変質者(痴漢)―

・体力↑精神↓魅力↓↓


―自宅警備員―


・腕力↓体力↓知力↑


ステータスが上昇しました


俺のステータス


【基本職】ニート 【サブ職業】変質者(痴漢)



腕力  28(弱い) ↑

体力  23(弱い) ↑

器用さ 11(貧弱) ↑

敏捷  12(貧弱) ↑

知力  65(やや高い) ↑

精神   9(虚弱) 

愛情  31(やや弱い) ↑

魅力  18(貧弱)

生命   9(不変)

運   ??(算定のための経験が不足しています)


スキル

【高等教育】Lv.26

【不快様相】Lv.1

【鈍器術】 Lv.8


持ち物

Eたぶん伝説のバールのようなもの(命名:エクスカリバール)

        …攻撃+95(使用者能力不足により過小評価です)

E強化した鍋の蓋…防御+28

Eスニーカー  …敏捷+3

E一般人の服一式…魅力+3・体力+3

拾った石2   …攻撃+21




ジーンズ   …スジ夫の装備になりました

革ジャン   …スジ夫の防具です

ボクサーパンツ…スジ夫のデカい物を隠してます

革ベルト   …スジ夫の装備兼かくし武器です。


アントンの干物…エリーの収入源になりました


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