始めに~プロローグ~
書き始めた当初とは違い、数年たって
今では無能が実は有能というのが流行りになってるらしいと聞いて
そういう作品ではないと説明を入れさせてもらいました。
〜世界のお話し〜
むかしむかし
ある所にハニャという女がおりました。
ハニャは生まれながらにして、神々から嫌われていました。
どれくらい嫌われているかと言うと、女性がゴキブリを嫌うレベルです。
ハニャがそんなに嫌われているのは、一族が他の神々との間で戦争を起こして壊滅した後に、自身も神の一員と知らずに人の中で育った、負け犬一家のさらに半端者だからでした。
そんなハニャを救ったのは、かつての一族の宿敵である同じ御三家のある女神様でした。
ハニャは神々に虐められ続ける自身の苦境に白馬の王子様の如く現れ親身になってくれた彼女とたちまちに恋に落ちました。神々の世界では、女性の方が神通力の源である生命エネルギーが高いため、女系社会となっており、レズは普遍的な嗜みなのです。
しかしながら、ハニャが夢中になった女神の目的はハニャ本人ではなくその血筋にありました。
言われるがままに子を作り、女神と他の神々の興味が自身から子に移ると、ハニャはハシゴを外された気分で疎外感を感じ、やがてヒステリーを起こしてレズの痴話喧嘩が勃発しました。
人の中で虐められて育ったハニャは情緒不安定な構って系クソレズだったのです。
ハニャは神々の注意を引くために、神界への嫌がらせを始めました。
それはクソレズ特有の実害を伴うはた迷惑なものであるのに、表立って批難し辛い方法ばかりで、ハニャのネチネチした性格が遺憾なく発揮されたものばかりでした。
彼女の嫌がらせのうち、人に係るもののみをいえば、手始めに自身の祖である古エルナ神が残した遺物から科学技術を復興し、人間社会にばら撒くことで、神々の恩寵である魔道具の価値を貶めたり、人間の技能を共通化し、スキルとして容易に技能を習得出来るようにして神々への依存を減らしたり、また、野心溢れる人間の後ろ盾となり、争いを起こし易いように仕向けました。
特にそれでハニャが得をする訳ではありません。嫌われてるのには変わりないのですから。でもクソレズは自身の大小さまざまな工作が成功し、世界が変質して神々が右往左往するのを見るのが楽しくて楽しくてしょうがありませんでした。
そんなふうに数百年を費やしたハニャの地道な努力が実を結び、今日も神界は大わらわです。
今日もまた、ハニャ様はどんなめんどくさい嫌がらせをしようかと、考えています。
それを防ごうと女神様は宥めたりすかしたりハニャ様のご機嫌取りをしています。
そんなふうに、いま世界は動いているのです。
~世の中のお話し~
さて、ハニャが人間に力を与えたことにより、世界を巻き込むレズの痴話喧嘩とは別の物語が始まりました。
それは、それまでなかった人と人との争いです。。
それまで神が介在する、お遊戯的な予定調和な争いはありましたが、純粋に人と人とが利害目的で争うというのは、自身が信仰する神々の恩寵を打ち捨てるという事であり、発生しえなかったのです。
しかし、人間が神の恩寵に依存しない科学技術やスキルを手に入れたことで、神に頼らずとも振るえる力を持った人間が多数生まれると、争いが発生しました。
その主体はスキルを多数身に着けたカリスマ的な指導者であったり、古くから人間の中に誕生する英雄と呼ばれる者たちであったり、神々の有力な信徒であったりと、いわゆる新旧の『持つ者』による戦いでした。
『持つ者』達は今日も互いに競い合って、世の中を変えていきます。
彼らにとっては民衆は自分たちに危害を加えることも文句を言うことも出来ない穀物や家畜と同じような存在です。
今日もまた、持つ者が自分の権益を求め、何をしようかと、考えています。
それをうっすら感じ取りながらも、民衆は日々の生活を営んでいます。
そんなふうに、いま世の中は動いているのです。
~この物語は~
この物語の主人公は、世界を救うことはありません。
世界はクソレズの嫌がらせで歪むのみであり、
神々の他に世界を変動させる力を持つ者は
ございません。
この物語の主人公は、世の中で活躍する者ではありません。
悲しい事に、持たざる者は世の中に影響を及ぼしません。
世の中は持つ者により動かされ
そのどの影響下にあるかで
持たざる者の運命は左右されます。
そんな天上の世界と世の中からこぼれ落とされる苦難の中でも
人は
泣いて、笑って、愛して、怒って
震えて、隠れて、耐えて、そして戦って
小さな喜びと憎しみを胸に
命の火を焼き尽くしていくのです。