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第4章 サイキック少年団〜⑥〜

「あぁ~、あのネタをココで出すか?」


 ニヤリと笑う今井裕太郎に、話題を振った佐藤義徳もニンマリとうなずく。


「なになに、何の話しよ?」


 あくどい笑みを浮かべる二人の話しに山口が食いついた。


「これは、オレと裕太郎が聴いてるラジオで話してたことなんやけど……」


 佐藤は、含みをもたすような口調で語り始める。


「去年さ、某ドーナツチェーンが、スクラッチカードの得点を集めてお弁当箱をもらえる恒例の企画をしてたやろ? その一環で、CMに出演してる《人気アイドルが手作りしたお弁当を抽選で一名にプレゼント》っていうキャンペーン企画があったのよ」


「ああ! 確かに、手作りマフィンとかお弁当箱とかCMしてたよな?」


「さすが、テレビっ子の山口ちゃん! そうそう! しかも、手作りしたお弁当は、当選者にアイドル本人が直接お届けしてくれるというオマケ付きだった訳よ」


 ここで、たっぷりと間を置いて佐藤は続ける。


「――――――で、このプレゼント、どんな人が当選したと思う?」


「そういう企画なら応募するのは、そのアイドルのファンやろうし、普通にファンが当選したんと違うの?」


 彼らの会話を聞いていた足立は、そう答える。


「と思うよな? ところが、このプレゼントに当選したのは、十四歳の女の子でした、というオチ」


 すると、今井裕太郎は、食べ終わった弁当箱を横にどけて、机をドンッ! と叩き、こう吠えた。


「ちょっと待て、と! こういう企画なら、応募者の九十九・九パーセントは、そのアイドルのファンやろう? なぁ、ヨシ坊?」


「そのとおりやな!」


 声を低くして、佐藤が言葉を続ける。


「『早く、アノ娘のおべんとうが食べたい~』って、妖怪人間みたいなファンが、ドーナツを大量にむさぼりながら、複数応募してたと、オレたちは想像するね」


「ミスドやし、普通に女の子が当選してもおかしくないんちゃう?」


 山口はそう答えたが、佐藤はこんな見解を述べる。


「いや、ファンが一人で大量に応募することを考えると、確率からして、無作為の抽選が行われたとは考えにくいんちゃう? 当選者の女の子がヤラせだったとまでは言わんけど、初めから当選するタイプは、こういうヒトって決まってたんちゃうか? と、思うねん」


 佐藤の言葉に、さらに、今井がたたみかける。


「あの人気アイドルが、どんな濃いファンと遭遇するんやろう……? って、期待してたのに! ホンマにドーナツチェーンには、ガッカリやわ!」


 そして、飲み終えた紙パックのドリンクを握りしめて主張する。


「アイドルファンが、どんな気持ちでドーナツを大量購入したのか、わかってるのか!? と、我々は関係者には問いたい! あのCM、『苦情は、高橋◯美子まで』って言うてたけど、ホンマに事務所に抗議するぞ! 『いいことあるぞ〜、ミ◯タードーナツ!』って、CMソングやけど、ファンにとっては全然いいことないやんけ!」


 今井の言葉を受けた佐藤はダメを押すようにこう決め打ちした。


「ドーナツ大量に食べて応募しても、この仕打ちやからね(笑)企業キャンペーンですら、オトコの夢は打ち砕かれるねん。なっ!? みんな、これでわかったやろ? かわいい女の子がアイドルファンになる様なオトコにお弁当を作ってくれるなんて、現実世界では有り得ないのよ! ここ、次の定期テストに出るから忘れたらアカンで」


 絶妙なコンビネーションで、ネタを披露する二人に、足立や他の生徒たちは、無言でうなずいて感心していた。

 一方、山口は思い出した様に付け加える。


「そう言えば、あのアイドルって、先月フジテレビのオークション番組にも出てなかった? 落札者と一緒にアイドルの主演映画を観るとか何とか」


「あったな~!『ハンマープラ○ス』! あのアイドルが主演した映画を彼女と二人で観る権利! 落札価格は、58万円やったっけ? ドーナツチェーンのお弁当キャンペーンとは違うかたちで、ファンのガチンコぶりが見れたな」


 佐藤が即座に反応し、今井も言葉を続ける。


「映画を観たあとは、手を繋いでくれるって、オプションもあったよな! アイドルとデートもどきのシチュエーションを体験しようと思ったら、お値段58万円か……切ないな~」


 後の世に、地下アイドルなどが行う握手会ビジネスにも通じる悲哀を感じさせる案件である。


「まあ、我々のように、将来的にアイドルをプロデュースする側ではなく、アイドルコンサートの客席に座ってる側の人間にとっては、《人気アイドル級の美少女と映画デートが出来るということには、それだけの価値がある》と考えるしかないかな? 個人的には、あの映画には、1ミリも興味ないけど(笑)。そういうことやろ、裕太郎?」


「まあ、映画の原作者である《《折原みと先生の大ファン》》であるオレからしたら、作品を揶揄するようなヤツらは許さへんけどな(笑)」


「ボケてるのか、マジなのかわからん内容で落とすのは止めてくれ。女子生徒に人気の今井くんが、実は少女小説の大先生のファンとか、色々と話が変わってくるで。キャラ設定と属性が天王山トンネル並みに渋滞おこしてるわ」


 佐藤が、そう言って会話を締めると同時に昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。


 このころ、佐藤自身は、高校時代を通じてずっと同じクラスになり、いまや親友と言っても良い間柄になった今井裕太郎とコンビを組んで、お笑い芸人を目指したいと本気で考え始めていた。

 

 高校3年生の四月中旬の穏やかな春の出来事である。

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