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第4章 サイキック少年団〜⑤〜

『サイキック青年団』という共通の話題で仲を深めた佐藤と今井の二人は、学校生活の普段の会話でも、映画、音楽、アニメ、芸能界の裏事情などを盛り込んだ内容を語りあうようになった。


 高校生となり、行動範囲が広がった彼らは、毎年のように、紀伊國屋書店梅田本店前のビッグマン前で行われる年末の公開収録や、京都の円山野外音楽堂(通称:円山野音)で行われる『サイキック・ミーティング』という野外トークイベントを観覧するようになっていた。


 彼らは、自分なりに語りたいことを楽しみながら会話を交わしていただけなのだが、そのトークの軽妙さは同じ学年でクラスの隅っこにいる男子生徒たちの琴線に触れたのか、佐藤たちが進級をはたした頃には、いつの間にか、昼休みにはクラスの枠を越えて、わざわざ二人の居る教室まで会話を聞きに来る生徒まであらわれる事態になっていた。


 たとえば、ある年の春先の会話は、こんな感じだ。

 この年、同じクラスになった足立と山口を交えながら、佐藤は、昼休みの会話をバラエティ番組の司会者の仕切っていく。


 この日は、家庭用ゲーム機で発売されていた競馬シミュレーションゲーム『ダービースタリオン』の影響で、競馬にハマっていたクラスメートとともに、次の日曜日に開催される中央競馬のメインレース、皐月賞についての予想を語りあっていた。


 足立:義徳、週末の皐月賞どうなると思う?

 

 佐藤:う~ん、フジキセキの離脱が残念やなぁ。山口ちゃんの見解は?

 

 山口:オイラは、むしろ人気薄の可能性が高まって嬉しい!

 

 今井:……………。


 四人の会話が始まると、


「おっ、皐月賞の検討会か?」


と、クラスの委員長に選ばれたばかりの山崎剛志(やまざきつよし)が加わってきた。


 佐藤:委員長は、どう思う? 今年の皐月賞は。

 

 山崎:そら、タヤスツヨシやろ。オレと同じ名前のツヨシやし!

 

 佐藤:そっか~。けど、タヤスツヨシは、去年のたんぱ杯を勝って以降、今年になってからは人気を裏切り続けてるのがなぁ……。

 

 足立:フジキセキが出てこないから、そもそも、一番人気がどの馬になるのかもわからんわ。


 今井:…………。

 

 佐藤:そのフジキセキの勝ち方からして、弥生賞2着のホッカイルソーか? まあ、このレースでは、フジキセキに五馬身ちぎられてるけど……。

 

 山崎:馬柱的に見れば、ダイタクテイオー、ナリタキングオー、ジェニュインも人気するやろ?

 

 足立:ダイタクテイオーはなぁ……毎日杯の勝ち馬が押し出されて人気する時って、典型的な危険な人気馬やろ?ナリタキングオーは、三年連続でナリタの馬が皐月賞馬になるほど上手く行くか? って、感じもするし……。


 佐藤:ジェニュインにしても、前走の若葉ステークスは結果的に1着やけど、降着したルイジアナボーイから五馬身も離されてるのがなぁ……。


 今井:……………。


 山口:よし、ここはイブキタモンヤグラやな!


 佐藤:山口ちゃん、イブキタモンヤグラ! って言いたいだけやろ(笑)!? あと、今年の有馬記念は、クリスマスイブ開催らしいから、()()()()()()のネタは、年末まで取っておきなさい。


 こうして勝手に盛り上がる四人にイラついたのか、はたまた競馬には詳しくないため、会話に加われないフラストレーションが溜まったのか、ここまで無言を貫いてきた今井裕太郎が声を挙げた!


「あぁ~、もう! 高校生が昼休みにする話しが競馬の話でイイんか!? 会社員のオッサンの昼飯やないねん! 高校生らしく、もっと、他に話すことがあるやろ!?」


 ここで、彼らの会話を楽しんでいた聴衆の生徒から、拍手が起こる。


「ゴメンゴメン! 優等生の今井クンに怒られたから帰るわ」


 笑いながら自席に退散する委員長の山崎。

 

 さらに、佐藤は自分たちの会話に聞き入る生徒たちの反応をうかがいつつ、今井の剣幕に、場を和ませようと、


「裕太郎さぁ……じゃあ、高校生らしい話題って、どんな話しよ?」


と笑いながらたずねる。


「それは……お昼の時間やし、彼女が出来たら、どんなお弁当を作って欲しいとか……色々あるやろ?」


 今井裕太郎が、ボソボソとした声で答えた瞬間、時が止まったかの様に空気が固まり、発言者をのぞいた佐藤、足立、山口の三人と会話を楽しんでいた生徒たちは、必死に笑いをこらえる。


「あのな、裕太郎。モテない高校生男子のために、お弁当を作ってくれる女の子なんて、『スレイヤーズ』とか『ロードス島戦記』に出てくるモンスターと同じで、空想上の生き物なんやで」


 笑いをかみ殺しながら、宇宙人の存在を信じる人間を諭す様に、優しく語りかける佐藤。

 彼は、さらに、


「これくらいは義務教育で習う常識やろ? 裕太郎の中学校では、そういう授業なかったんか?」


と、肩を震わせながら言葉を付け加えると、会話を交わしていた三人も、その様子を見守っていた生徒たちも一斉に笑い声があがる。


 この様に、出会ってから数年の期間で、佐藤と今井の会話には、明確な役割分担が出来ていた。


 間合いやタイミングを計りながら、周囲に話しを振る佐藤。

 振られた話題に天然ぶりを発揮して、場を盛り上げる今井。


 ここに、今井の天然ボケや時おり会話に加わってくる生徒たちのツッコミに、佐藤が火に油を注ぐが如く茶々を入れると、彼らの会話は永久機関の様に無限に拡がりをみせていくようになる……。


 そして、佐藤は、いつもと同じようにネタをさらに広げて、


「そうそう、お弁当と言えば、ドーナツチェーンのキャンペーンCM覚えてる?」


と新しい話題を提供した。

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