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第4章 サイキック少年団〜②〜

 宇宙人や未来人や異世界人や超能力者などが本当に存在しているかということは、特撮映画やSFコミックなどを好む者にとって、子どもの頃に良く自問することかもしれない。

 だが、佐藤義徳(さとうよしのり)に関して言えば、確信を持って言えるが、そんなものは、最初から信じていなかった。

 彼は、小学校高学年になって聴くようになった『サイキック青年団』の影響で、インチキUFO番組に出てくる謎のメキシコ人にはツッコミを入れていたし、ハンドパワーを操ると豪語する超魔術師には、はなはだウサン臭いものを感じとっていた。

 しかし、そんな賢しらぶった少年時代を過ごした佐藤だが、一方で、少年マンガにありがちな「毎日が文化祭的なドタバタ学園生活」のような日常が、現実には存在しないことに気付いたのは、かなり後になってからのことだ。


 しかし、現実というものは、いつも厳しい。

 実際のところ、毎朝お弁当を作って、部屋まで起こしに来てくれる「隣りに住む幼馴染み」や、周りの連中をアジって始終騒動を起こす「メガネ」がクラスにいるなんて事は、皆無だったし、何でも出来るのに好きな相手には素直になれない「美人の生徒会長」や頭のユルいマッドサイエンティストが作った「サイボーグ」などの友人に恵まれる事もなかった。

 

 日々つつがなく進行していく日常世界を過ごしながら、佐藤少年は、いつしかこれら少年マンガの様な夢想をすることもなくなっていた。


(そんな事あるワケないか、でも少しはあって欲しい……)


 などと、一般社会に迎合しつつ、ささやかに夢をみる、くらいにまで彼も成長していた。

 そんなことを頭の片隅でぼんやり考えながら、佐藤義徳は高校生になり、


(それなら、いっそうのこと、自分から何かを発信してみるか!?)


と余計なことを思い付いた。それは、県立高校の入学式が、つつがなく終了し、体育館から彼らのクラスである1年2組の教室に向かう途中のことだった。


 設立して十年程度のとなる新興の県立高校のクラスは、10クラスに別れていた。

 佐藤が配属された1年2組の担任で、大学卒業後に教職に就いた三年目の英語担当の女性教師は、


・個人の自由よりも、集団の規律を優先すること 

・学校での評価は、生徒の行う『結果』のみで決まること

・高校生活は、中学までの義務教育とは違うのだから、自覚して勉学と学生生活の向上に励むこと


など、生徒の立場からすると、甚だしく気力を削がれる訓示を述べたあと、『言うべきことリスト』が書かれていると思しきメモ帳をたたんだ。


(それは、教職員側の言い分であって、生徒のモチベーション向上には繋がらない内容なんじゃないですかね?)


 そんな風に佐藤が心の中で不遜なツッコミを入れていると、言っておくべきことを終えた英語教師は、こう続けた。


「じゃあ、各自に自己紹介をしてもらおうかな? 座席の順に今井から」


 担任教師の一言で、五十音の姓名順に並んだ座席の窓際最前列に座る生徒から自己紹介が始まる。

 出席番号8番の彼は、

 

「北中出身、佐藤義徳です」


と名前を告げたあと、一拍おいて


「趣味は、映画観賞、パ・リーグの野球観戦、深夜のラジオ番組を聴くこと。好きな芸能人は、北野誠。好きな映画作品は、ジョン・ヒューズ監督の学園モノ作品です。そんな訳で、このクラスに、映画、野球、ラジオ番組などに興味があるヒトがいたら、ボクのところに話しに来て下さい。以上……です!」


 そう言って、クラスメートからお約束の拍手を受けとると、席に着く。


(まあ、マンガのキャラみたいな友達は無理にしても、話しの合う人間の二~三人くらいは出来るやろ)


 こう考えていた佐藤だったが、ホームルームの時間が終わって休み時間が始まると、早速、隣の席の生徒が彼に声を掛けてきた。


「なあなあ、さっき好きな芸能人は北野誠って言うてたけど、なんでなん? 北野誠って、『探偵!ナイトスクープ』に出てるタレントやろ?」


 佐藤に話しかけてきたのは、このクラスの出席番号1番である今井裕太郎だ。彼の言うように、関西ローカルの深夜ラジオ番組である『サイキック青年団』は、リスナー以外の人間にとっては知る人ぞ知る存在でしかなく、()()()にとっての北野誠は、あくまで、テレビに出演している芸能人という存在であった。


 クラスメートの問いかけに、佐藤は正面から答えず、こんな言葉を返す。


「まあ、世の中には二種類の人間が存在するからな。北野誠と聞いて、ただのテレビタレントと考えるタイプと、あるラジオ番組を思い浮かべるタイプの二種類や。オレは、後者のタイプやからな」


 厨二病をこじらせたとしか思えない佐藤の言葉だが、意外にも、今井は、その言葉に食いついた。


「なんか、よくわからんけど面白そうやから、その話、詳しく聞かせてや」


 内心の喜びを隠しながら、


「なんや、気になるんか? 仕方ないなぁ」

 

と返答した佐藤は、謎の飲料メッコール、アイドル事務所の15歳の儀式、NHK教育テレビ(現Eテレ)やローカル局のサンテレビで放送されるマイナー番組の見どころなど、『サイキック青年団』を聞き始めて4年半で得た偏った知識を次々に披露する。

 すると、クラスメートは、


「なにそれ! めっちゃ面白いやん」


と言いながら、目を輝かせるのだった。

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