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第2章 新人お笑い尼崎大賞への道〜⑥〜

 オッサンがボケ役を演じ、ボクがツッコミ役を務める形式で行われるようになったネタは、その後、何度かスタジオを訪ねて練習を重ねたあと、撮影した動画がYouTubeにアップロードされた。

 大会の応募規定に沿って限定公開にしているので、動画のURLリンクを知っている人だけが視聴・共有できる設定だ。


「限定動画だし、SNSで宣伝しちゃダメなのかな?」


 動画をアップロードしたあと、オッサンに聞いてみると、


「大会の規定では、宣伝禁止とはうたってないけど、再生回数が審査に影響する訳でもなさそうやし、SNS対策にチカラを入れる必要は無いんちゃう?」


と、面倒くさそうに返答してきた。


 ダブルジェネレーションの冒頭ネタではないが、オッサン世代のSNSの情報発信に対する熱意の低さには、本当にジェネレーションギャップを感じてしまう。ボクみたいに書店でバイトをしているだけの大学生でも、SNSによる告知やファンとの交流は、人気を得るうえで重要な要素だと思うのだが……。


「ボクも、微力ながら自分のアカウントで告知をするからさ。オッサンも動画の告知をしてよ。まさか、SNSのアカウントを持ってないとか言わないよね?」


「そんな訳ないやろ! こう見えても、旧Twitterもfacebookも、アカウントを取得してから、15年以上使っとるわ」


 そう言って、オッサンは、スマホにアカウントを表示させるが、ここで、InstagramやTikTokがの名前が出てこない時点で、深刻な世代間の断絶を感じてしまう。

 ため息をつきながら、

 

「じゃあ、Xでもfacebookでも良いから、告知しておいてよ」


と念を押すと、


「はいはい……わかった、わかった」


渋々と言った感じで返事をするオッサンは返答する。


 元キンドラ佐藤

 @kindora_bakyuuuun


 第26回新人お笑い尼崎大賞に、ダブルジェネレーションというコンビ名で出場します。

 ネタの動画をアップロードしてます。


 【ダブルジェネレーション】マラソン


 2025-10-31 15:40:00


「ほら、これでイイか?」


 オッサンの言葉とともに示されたスマホの画面を確認し、ハッシュタグも使っていない、まるでやる気が感じられない投稿に、ふたたび、内心でため息をつくが、こればかりは、すぐにどうにか出来る問題ではないかも知れないし、インフルエンサーでもないボクには、改善のためのノウハウがあるわけじゃないので、いまのところ、どうしようもない。


 かく言うボク自身も、まだ家族以外には、今回のお笑い大賞に出場することを公言している訳ではないので、この動画を高校や大学の友人たちと繋がっている表のアカウントで告知したものか、ほぼ愚痴を吐き出すためにしか使っていない裏アカウントで宣伝しようか悩んでいた。


(これで、予選落ちなんて結果になったら、恥ずかしいしなぁ……)


 そう考えた結果、少し前に知事の会見場でブレーブスのユニフォーム姿のオッサンを発見したときに、確認報告を行っていた裏アカウントで、ささやかに告知をすることにした。


 reverse-side_hoshino

 @reverse-hoshino


 今年の新人お笑い尼崎大賞に、ダブルジェネレーションというコンビ名で出場することになりました!

 ネタの動画をアップロードしたので、良ければ見てください


 【ダブルジェネレーション】マラソン


 #新人お笑い尼崎大賞

 #ダブルジェネレーション


 2025-10-31 15:45:30


 ボクの投稿も、オッサンにダメ出し出来るほど拡散してもらえるような内容で無いことに自分で落ち込んだ。


 そうして、母や姉(あと、ついでに父親も)以外の人たちへの報告は、どれだけ早くとも本戦会の出場が決まってからでも良いか……と考える。さらに、動画のアップロードが終わって、一息ついたと思ったところに、


(あの内容で良かったんだろうか? 素人の自分がオッサンの足を引っぱっていたら、どうしよう)


という不安が頭を離れず、SNSで強気に告知しようと思っていた先ほどまでとは打って変わって、弱気な想いが心を支配していった。


 相方……いや、ネタ作りから漫才の基本的な事柄に関する指導まで、すべてを引き受けてくれたプロの目から見て、自分たちが動画サイト上にアップロードしたネタの評価が気になって仕方がなくなってしまったボクは、おそるおそる、たずねてみる。


「ねぇ、オッサンは、ボクらのネタって、本選会に残れると思う?」


「ん? まあ、やるべきことはやったしな……あとは、他の出演者がどれだけのレベルが高いかってことにかかってくるから、オレらがあれこれ考えることではないわ。5年くらい前やったかな? オレが、この大会を見始めた頃には、豪快キャプテンって、コンビが出場しててな。今年のM−1でも準決勝に残ってるけど、あのコンビは、エェとこまで行くんちゃうかと思ってるねん。まあ、そういう強豪がゴロゴロおらんように願うだけやな」


「そうなんだ……」


「まあ、余計な心配をするより、来週もまた集まってネタのブラッシュアップをするで。今日のネタは、3分以内に収めたけど、本選の持ち時間は5分やからな。詰められるネタは、詰め込んどこう」


「えっ、それって、予選会の結果が出てからじゃダメなの?」


 今回の予選会の締め切りは、11月上旬に設定されているが、本選会の出場者の発表は、12月上旬ということになっている。


「結果発表は、ひと月以上も先やけどな……決戦を見据えて、まだまだ足りんところを補っていかんとな!」


 オッサンは、余裕の笑みを浮かべながらボクの肩をバンバンと叩くが、このときのボクには、そんな準備が無駄にならなければ良いけど……と、気弱な考えしか頭に浮かばない。


 そんな想いで、大学入試の結果を待つのと同じくらい緊張と不安を抱えながらネタをブラッシュアップする一ヶ月あまりが過ぎ、本格的な冬を迎えた12月上旬―――。


 この日、待望の本選会出場者が発表された。


 その日、ショッピングモールの一角に駆けつけたボクは、時代劇に出てくる登場人物が印籠をかざすように、スマホをオッサンに向ける。大会主催者のホームページには、こんな風に結果が表示されていた。

 

 第26回 新人お笑い尼崎大賞 予選通過者

 

 芸名:演目

 

 ザ・ラグパレード:漫才

 ラックノット:漫才

 国道クラリス:漫才

 フェアリー:漫才

 フラッツ:漫才

 ジャマール:漫才

 元銀行員ウエスト:ピン芸

 チキンα:漫才

 まぜるな:漫才

 弐の家銀の介:ピン芸

 のるかそるか:漫才

 キテイの位置:漫才

 ダブルジェネレーション:漫才

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