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異世界×論理魔法 オートマティック・リドライブ〜神ロリAI様と同期して理不尽な現実を書き換えます〜  作者: 上城晄輝
第一章『雷槍の誓い』

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第7話:天羽鈴音とぼっち仲間(後編)

夕暮れの訓練場。木刀を振りながらも、俺の動きはどこか重かった。

頭の中には、昨日森で見た鈴音の姿が焼き付いて離れない。


剣を抜きすらせず、魔物の群れをあっさり叩き伏せた天才。

その背中に、どうしようもない孤独を見た気がしたけれど……同時に、「勝てるわけがない」っていう現実が、はっきりと突き付けられた。


「……どうしたの?」


みそぎちゃんで俺の木刀を受けた渚が、じっと俺を見つめてきた。


「今日の悠真くん、全然集中できてない」

「……いや、そんなことないと思うけど」

「嘘。顔に書いてあるよ」


渚は腕を組み、見透かすような視線を向けてきた。

観念した俺は、昨日のこと――森で鈴音に助けられた顛末をすべて話した。


「……そう、天羽さんに助けられたんだね」


短く言って、渚は黙り込む。

夕暮れの風が、訓練場の砂をさらっていった。

その沈黙に耐えきれなくなって、俺は言葉を吐き出した。


「やっぱ無駄だったんだよ」


渚の肩が、ぴくりと動く。


「俺が間違ってた。鈴音が正しかったんだ。凡人が足掻いたって、天才には敵わない。結局、俺のやってることって――」


言葉が止まらなかった。


「ただの自己満足だったんじゃないかって」


その瞬間。


「――ふざけないで!」


鋭い声が、訓練場に響いた。

思わず体が強張る。


渚は、出会ってから一度も見せたことのない強い感情を顔に浮かべていた。


「天羽さんに勝てないなんて、最初から分かってたはずでしょ!?」


怒りというより――

どこか、必死な響きだった。


「なのに、なんで今さらそんなこと言うの!」

「……ご、ごめん」


思わず謝るしかなかった。

渚は深く息を吸い、みそぎちゃんをゆっくり地面に立てた。


「前に言ってたよね。悠真くんは“無詠唱”できたって」

「ああ……でも、あれは俺の力じゃない。ニャルのおかげで……」

「私は」


その言葉で、俺は口を閉じた。

渚は夕焼けの空を一瞬だけ見上げてから、続ける。


「私は、ずっと論理と向き合ってきた」


静かな声だった。


「でも、一度もそんな奇跡みたいなこと、起こせたことないよ」


その横顔は、少し寂しそうで。


「だから――」


渚は俺をまっすぐ見た。


「悠真くんが羨ましい」


彼女の表情には、儚さと、届かないものへの飢えが滲んでいた。


「たまたま偶然、1回できただけだよ」

「わたしはその1回すら起きたことない」

「それは……」


思わず言葉に詰まる。

だとしても、それは俺が特別であるという証明にはならない。少なくとも、その1回しかできていないうちは。


「……自分でも気づかないうちに、雷を出すなんて。思っただけで出たんでしょ? それって、神意だよ」


神意。

以前渚が語っていたことからすると、それは演算や理屈を超えた“願いのかたち”。

でも、俺はただ思っただけ。

意味もわからず、偶然に。

渚は少し笑って続けた。


「昔ね、こんな話を聞いたことがあるんだ」


少し遠くを見る目だった。


「“神理が足りない”って言われた子がいたんだって。その子は、どれだけ頑張っても誰にも認められなかった。……かわいそう、だよね」


他人事を話す口ぶりだった。

でも。

どこか、自分のことを話しているみたいに聞こえた。


「その子にはお姉ちゃんがいてね。いとも簡単に論理に神を宿らせたんだって」

「鈴音みたいに?」


俺を助けてくれたときの鈴音の姿を思い出す。

たしかに、“神”が宿っているかのようにさえ思えた。


「うん、天羽さんは少し似たところあるかもね。それでね、その子は一生懸命お姉ちゃんの真似をしたんだけど――」


渚が儚げな笑顔を浮かべた。


「どこまでいってもただの模倣。しかも遥かに劣るおまけつき」


ああいった姿を、もっと近くで、ずっと見続けてきたとしたら。それが自分の身内だとしたら渚は――


「でもね、その子はある日、諦めない人と出会ったんだって。周りよりずっと遅れてて、どうしようもないくらい落ちこぼれてるのに、それでも足掻き続ける人と」


渚は俺をまっすぐ見つめた。

その視線が、俺の中にまっすぐ届く。


「だからその子、ちょっとだけ、本当にちょっとだけだけど、やる気を取り戻したんだって」


胸が熱くなる。

俺は拳を握った。

そして顔を上げる。


「……わかったよ、渚。その子に伝えといて」


俺は木刀を握り直した。


「俺は、最後まで諦めない。悪あがきしてやるって」


一瞬。

渚が、ほんの少しだけ目を見開いた。

そして――


「うん!」


いつもの柔らかな笑みを浮かべて頷いた。


「渚、悪いけど、もう少しだけ特訓付き合ってくれないか」

「もちろん!」


木刀を構える俺に、渚はいつものようにみそぎちゃんを持ち直して立ち向かう。


夕暮れの風が頬を撫でる。


『ゆーゆー、賭けは終わりじゃないよね?』


あのとき、鈴音が言った言葉が脳裏に蘇る。――安心しろ、鈴音。賭けはまだ、終わっていない。

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