運命の出会いな2人、かも
今日は地元の花火大会。
河原へ続く道にはたくさんの屋台が並んでいる。
頼まれた焼きそばと自分用の唐揚げを買い、ビール片手に歩いていたオレは背中に軽い衝撃を受けて振り返った。
そこには小学生らしき女の子が尻もちをついて転がっていた。
「大丈夫か?」
「だいじょ……」
浴衣を軽くはたきながら立ち上がるが、地面に落としたかき氷を見た途端、ポロポロと泣き出した。
(やれやれ)
かき氷を買いに近くの露店に連れて行くと、
「ここ、練乳が無い……」
その子は言った。
どうやら手にしていたのは練乳のかき氷だったらしい。この辺ではあまり見ないシロップだ。
何ヶ所か回りようやく練乳のかき氷を買うことが出来た。
「ありがとう、お兄ちゃん!!」
同時に花火大会の開始を告げる尺玉が上がり、彼女の笑顔を明るく照らした。
「あ、お父さん!」
人混みの中に父親の姿を見つけると、彼女は両手で大事そうにかき氷を抱えて駆け出した。
「またね、お兄ちゃん!」
「転ばないように気をつけろよ」
これがオレ達の最初の思い出…かもしれない。
「小説家になろうラジオ」の夏祭り企画(演日)に投稿したショートストーリーです。
不採用だったので供養します。
楽しんでいただけたら幸いです。