魔法人形と希望へ導く闇
主要登場人物
精霊都市 プレリュード
●ウル・フリューゲル
プレリュードの王女。光の魔力を持つ。少し弱気な性格の女の子。
●セレス・ウォーターベル
ウォーターベル家当主兼守護精霊統括。水と治癒の魔法を使うお姉さん気質の女性。
使用武器・・・水琉硝華という名の槍。
●ルージュ・スカーレット
スカーレット家当主、守護精霊の一人。火と身体強化の魔法を使う。
使用武器 ・・・焔と神楽、2本のレイピア。
●ヴェール・シルフィード
シルフィード家当主、守護精霊の一人。風の魔法を使う、誰に対しても喧嘩腰であるがウルに対しては甘々。
使用武器・・・深空霧塵、2本の短剣。
●シャル・クロノス、メア・クロノス
時の守護精霊、シャルが主に攻撃魔法を使い、メアが防御魔法を担当している。二人で守護精霊をしている。
●レイラ
宝物塔最上部に監禁されていた闇属性の魔力を持つもう一人の王女、ウルの姉にあたる。
●ミナト
時の神殿の守護を任されている魔法人形。レイラとは深い関係。謎が多い。
敵陣営
●ノエル
血と魂への干渉を行う魔法を使う上位の悪魔の一人。
●バルゴス
炎を扱う上位の悪魔の一人。
「私の名前はレイラ。物心ついた時に一人、この部屋で過ごしていたことに気付いた。時折お父様とお母様が部屋に来てくれて少し一緒にいてくれた。ある時からもう一人一緒に部屋に遊びに来てくれるようになった。それがミナト。お母様が言うにはミナトは魔法人形なのだという。信じられないと思ったがお父様とお母様が部屋から出たあとミナトだけ残り沢山のお話を聞かせてくれた。自分がとある人に創られた魔法人形だと。私には妹がいることを。そして何故ここに一人で過ごしている理由も。そんなこと話して怒られないの?って聞いても大丈夫ですよとだけ言う。もし妹がいるならお父様とお母様がここにいる間、妹は一人で寂しくないのかな?ちゃんと愛を貰っているのかな?そんな心配が勝つようになった。そしてある日を境にお父様もお母様も来なくなった。来なくなった前日にお母様がこんなことを言っていた。」
「レイラ、ごめんね。あなたにこんな役目を押し付けてしまって。何も出来ない母さんとお父さんでごめんなさい。でもこれはあなたにしかできないことなの。お願い、その時がきたらあの子たちを助けてあげて。愛してる、愛しているわレイラ。私の可愛い子。」
「その言葉の意味はその時は分からなかった。お父様やお母様それにミナトが来なくなってから数日後、窓を叩く音が聞こえ開けてみるとそこにミナトが居た。」
「レイラ様、申し訳ございません。来られなくて。これをお渡しするようにテトラ様から預かってきました。必ずレイラ様のお役にたちます。どうか私たちを信じてください。私はまた来られなくなりますが来たる最悪に備えて準備します。その時までどうか元気に過ごされますよう、精霊の祝福を。」
「待って!ミナト!!そう言い残し去ったミナトの後ろ姿を見つめながら手渡された手記を2つ抱えその日以降を過ごした。」
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時の神殿 内部
「ミナト、先にウルの武器を取りに行こう。」
「かしこまりました。まだ夜明けですので見つかる恐れはないと思われます。」
「最短ルートで行くよ。」
「了解しました。」
全力で走ること5分ほど。
「一体どこにあるのでしょうか?」
「ふふーん!私知ってるよ!お宝ってのはね上にありがちだけど、お父様が言ってたの隠すなら入口なんだよって。だから、正しきを誤らせろ!」
ガキィンと何かが外れ隠し通路が開く。
「これがアーサー様の?」
「そう、お父様の専用武器。高砂時雨、ウルも扱えるって昔話してたの。お母様は危ないからダメって怒ったらしいんだけどね。それより今はこれを持っていかないとだよね。っと」
手を伸ばした瞬間、バチッと電流が走る。
「レイラ様!?大丈夫ですか?」
「大丈夫、もう触れる。あ、あとこれもっと。行くよミナト。」
「はい。」
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時は戻り、南の門 外周区
「くそっ!数が多すぎる!!」
「いくら倒してもキリがない!!」
「体勢を崩すな!囲まれぬよう魔法部隊と連携を保て!」
「しつこいっすね、精霊の連中。」
「そうだな、だがあと少しだ。」
魔獣の中に人影があり、黒い水晶を持った人間が二人で話していた。
「くっ、あっ!いやだ!死にたくない!!」
「今助けに、、くそっ!邪魔だ!!」
「うわぁぁあ!!」
その瞬間、魔獣の身体が弾け飛ぶ。
「え?この槍はまさか、!」
「ごめんなさい!大丈夫!?」
「セレス様!!」
「安心して、もう大丈夫だから!私の仲間にこんなことするなんて許さない!!行きます。」
そう言ってセレスは地面に槍を突き立てる。
突き立てた地点から水がみるみる広がっていき魔獣の足元を濡らしていく。
「っ!!あれは!皆の者!逃げろ!高台に上がれ!!」
「え?あれって!?まさか!!」
「おい!逃げろ!!早く!!巻き込まれるぞ!!」
「水琉硝華、第一幕、水紋斬り。」
槍を横に一振。
「そんなとこで武器を振るっても当たりゃせんだr」
言い切る前に目の前にいた魔獣たちは真っ二つに切れる。
「次。」
次々と水の波紋が広がっていき、その場にいる魔獣たちは叩き切られていく。
「なんだあれは!?あの数を一瞬で!?」
「まさか、水に映ったのを対象に斬撃が。」
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人間の街 レプリカーレ とある一室
「あらあら、あれだけの数を任せたのに。この有様とは全く使えない連中ですわね。」
「ねぇ、やっぱりアルマが行くべきじゃない?」
「ダメよ、アルマは今回お留守番。いい?」
「はーい。でも今度の時はアルマが行っていい?」
「それは良いわよ。それにしてもあれだと落としきれそうにないわね。少し力を貸してあげましょうか。召喚、あとは銀の欄干」
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男たちの持つ水晶がパリッと割れた瞬間
周りに先程より多くの魔獣が現れる。
「おお!あの方がお力添えを!!」
「あの数はどういうこと!?それに強い魔力の反応!」
魔力を感じ上を向いた途端
バリバリバリと加護障壁が崩れる音が鳴る。
「加護障壁が!!逃げて!みんな!!」
「今だ!いけいけいけ!!」
「迎え撃て!!中に1匹も入れるな!!」
「だめよ!!氷柱槍撃!はぁっ!!」
「おっと、お前の相手は俺だぜ。」
「っ!!」
槍が人間の首元で止まる。
「ハハハハ!ホントだ!あいつが言ってた通りだぜ!オラッ!」
「きゃあっ!だ、だめ。みんな死なないで。」
加護障壁が消えたことにより、全面戦争となった南の門では精霊側が多大な犠牲を出す結果となり荒れる戦場でセレスは震え周りを見渡すばかりだった。
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西の門付近
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「クカカカカ!非力だな精霊よ。」
「黙れ!ふぅ。身体強化!」
激しく斬りつけるルージュだが
「硬いっ。なら、なにっ!?」
パリンッと後ろの加護障壁が砕ける。
「まずい!!」
「クカカカカカ!何だか分からんがお前たち門を攻めろ!」
「だめっ!行かせない!!」
「ルージュ様!ここは我々が!!」
「無茶はしないで!お前にはとっておきを見せてあげる。」
「ん?武器をしまってどうする?潔くやられることがとっておきか?クカカカカカ!ならば死ね!!」
「神楽、第一説。不知火!!」
居合のような動きでバルゴスにカウンターを放ち、初めて奴の身体に傷を残す。
「これなら通る!!」
「傷を受けたのは久方ぶりだぞ!精霊!!」
そこで兵士の一人から報告が入る。
「ルージュ様!魔物の中にドワーフがいます!どうなさいますか!?」
「出来る限り救いなさい!」
「はっ!!」
少ししてルージュはとんでもない光景を目にする。
「ぐあぁぁあ!貴様ら何故!」
助けたはずのドワーフが兵士たちを後方から襲い、挟み撃ち状態になっていた。
「ちょっ、何してるの!!」
「よそ見か?ふんっ!!」
「くあっ!!どうして、あの言葉は、、、嘘だと言うのですか?テトラさ、ま。」
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時の神殿 内部
「ミナト!!魔法陣の展開は!?」
「稼働可能です!」
「こちらから特定の魔法陣に人材を送り、再びこちらに転移することはできる??」
「可能です。一度限りなら。」
「わかったわ。それにしてもルージュもセレスも何故他種族を庇うの!?」
「いえ、分かりません。攻撃の直前に何かを思い出したかのように止まっていましたので誰かに何かを言われている可能性があります。」
「それを確認するのは後回し!今は救助優先!飛ばしてミナト!!」
「了解しました。接続!任せました。レイラ様。」
「ええ、任されたわ。母なる大地よ、聖善なる星々よ。今ここに集いて我が力となり、視界を遮断し五感を封じ込める漆黒の衣を纏え。」
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「クカカカカカ!さらばだ、弱き精霊よ!!!」
意識を失っているルージュに拳が振り下ろされる。
その時、ガキィンと高い音と共にバルゴスが後方へ吹き飛ばされる。
「漆黒纏布!」
「なんだ!?見えぬ!どこへ行った!!」
「行くよ、ルージュちゃん。ミナト!!」
「ふん!!!クソが!!!!次会うときは逃がさん!殺してやる!!お前ら!さっさと破壊して蹂躙せよ!!」
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「レイラ様。記憶を覗きますか?」
「今は治療優先!継続治癒」
「凄い、これなら私からの治療は必要なさそうです。」
「私は魔法石を通じて戦況を見てくる。」
「流石です。レイラ様、あの方が調整に調整を重ねたおかげでマルファンクションからの身体能力の限界突破に魔力量最大上昇の恩恵を見事にモノにしています。やはり、、、」
「ミナト!次は南よ!でもその前に。」
「はい、この気配は北に。」
「ええ、そちらを先に済ませるわ。」
「お気を付けて、レイラ様。」
ーーーーーー
「ウル!こっち!!はぁ、はぁ、お兄ちゃーん!!」
「っ!!やっと来たか!ライトニングレイ!」
「はぁ、はぁ、はぁ。これはどういうこと?シャル!」
「よく聞け、ウル!今ここプレリュードは攻撃を受けている。」
「それはメアに聞いて城と避難施設になりそうなとこは解放してもらうようにお願いしてきたよ。」
「それでいい、ウル。すまないがヴェールを探してきてくれアイツがいれば魔物の群れを突破するのに役立つはずだ。頼るのは癪だがな。」
「どうして?魔法石や念話で連絡できるはずじゃ、」
「先程、加護障壁の破損を確認した、それに攻めてきてる連中に魔力持ちが多い為、魔力の乱れが激しいから念話は使えない。障壁の破損により魔法石へのダメージがデカい。それから各守護精霊の魔力も乱れている一刻を争う、俺とメアは第二の避難先であるこの先にある神殿への唯一の道を守る為ここに残らざるおえない、今ヴェールを探しに行けるのはお前だけなんだウル。頼む!これはプレリュードの為だ!分かるだろ!!」
「お兄ちゃん!そんな言い方!!」
「いつまでもウジウジしているお姫様はやめて今できることをしろ!!」
「わかってる。分かってるけどどうしても足がすくむの。」
「お前には俺らがついてるだろ!俺たち守護精霊を信じてくれ!」
「っ!信じてない訳じゃないけど、、、。わかった、ヴェールを連れてきたらいいんだよね。行ってくる」
「ありがとう。気を付けて行け!メア!!」
「うん!!ウル姫様!街の中を通って東の門へ!」
「ありがとう、メア。叱ってくれてありがとうシャル。ここはあなた達に任せるわ!ヴェールのことは任せて!!」
そう言い残しウルは走り出す。
少し移動した時、声をかけられる。
「ウル姫様!」
「あなたは?」
「残された遺言を今果たしに来ました。これを。」
「これは弓?それもお父様の、」
「そうです。アーサー様が亡くなる前、もしもの時が起こればこれをウル姫様にと、ウルには弓の才があるだから必ずこれが役に立つと。」
「でも、弓なんて、それにこんな大切なものっ」
「ウル姫様、貴方様は誰よりも愛されてます。テトラ様やアーサー様、それに今各地で戦う守護精霊様たちに、だから自信を持ってください、きっとこの国を救う光となられる。私はそう信じてます。気を付けて行ってください。私は皆の避難誘導に戻ります。それではご武運を」
深くお辞儀をしウルとは逆方向に走り出すその人。
「お父様。ありがとうございます」
きゅっと弓を握りしめ駆け出していくウル。
「ウル、強く強くなって。あなたは希望の光。私の妹。私も愛しているわ!」
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北の門
「お兄ちゃん!道の防御は大丈夫!」
「あぁ!ちっ!数が減りやしない!」
「お兄ちゃん!あれ!!」
「エルフの少女?あ、待て!」
「おいで!こっちに!!大丈夫?」
「ごめんなさい、ごめんなさいお姉ちゃん。」
「えっ?」
抱きかかえたメアの腹から血が滲み流れ出す。
「メア!!!どけっ!!!」
「きゃっ。」
「貴様!何やってんだ!」
「ごめんなさい、でもやらないと郷のみんなが殺されちゃうから。」
すると木の上から甲高い声が響く。
「ねぇねぇ、バラしちゃったらダメなんだと思うんだけど、きゃははは!でもよくやったわエルフのくせにやるじゃない!約束通りお仲間は助けてあげる。でもバラしちゃったからお前の友達は醜い昆虫さんに変えてあげるね!きゃははは!」
「え、やだ!やだよ!!」
「そんな事のためにこんなことをしたのか。貴様らは俺たち精霊に守られてきたって言うのに!!許さねぇ。お前らは俺の大切なものに手を出した。全員殺してやる!!」
「お、おに、いちゃ、ん。わた、しはだい、じょうぶ。だから。」
「メア、お前はもう黙っておけ。」
「きゃははは!どうするの?この数の眷属たちを相手に独りで可哀想に。昔は一緒に戦った仲のエルフにもドワーフにも人間にも裏切られちゃって!お前たちはこれでおしまいなんだよ!!きゃははは!!」
「母なる大地よ、聖善なる星々よ今ここに集いて我が力となり眼前なる者共を灰へと化せ。煉獄の苦しみを、深淵の闇へと、貫かれる雷鳴よ、動けぬ身体で苦しみを味わう猛毒よ、その身を持って実感せよ!!」
「だ、め。おに、いちゃ、ん。まだエルフの子が。」
「俺はお前の為なら悪にだってなろう。メテオバースト。」
シャルを中心にカッと拡がる半円の光に飲まれるその場にいたもの達。
「にゃはっ!これはマズイかも!!」
木の上にいたものだけが全速力でその場を離れた。
光が徐々に収まりシャルとメア、エルフの子以外はその場に何も残っていなかった。
「あ、あ、あぁ。た、すけ、て。」
エルフの子は足元から石化が進み、口からは血反吐を吐く。
「メテオバースト、シャル様の魔法の極意。全ての状態異常を範囲内の相手に100%与える超広範囲の高い殺傷魔法。」
と魔法石を通じて様子を見ていたミナトが呟く。
「ミナト!2人を回収するわよ!」
「あ、はい!分かりました!!接続」
「メア。大丈夫だ、もう大丈夫だ。癒しを」
「この、魔法は。」
「ああ、セレスに教えてもらった。ごほっ、、」
「お兄ちゃん!毒が!」
「大丈夫だ、これくらい。ごほっごほっ。」
「大丈夫じゃないでしょ!状態回復バカ、無茶しないでよ。」
「すまない、魔力切れだ。少し、ねr」
メアの肩にぽすっと顔を埋め意識を飛ばすシャル。
そんな二人の下に魔法陣が浮かび上がりその場から姿を消す。
ーーーーーー
「ここは?」
「時の神殿でございます。メア様。」
「あなたは!!」
「話は後、今は二人の治療が優先よ。さ、早く。」
「あなたは一体だれ?」
「あ、そうだ。私達も聞きたいことがあるの。それからでもいいかしら?」
「え、あ、うん。大丈夫です。」
拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございます。
次回の展開もお楽しみ頂けるように頑張りますので
これからも応援のほどよろしくお願いします。




