東西に広がる闇
ウルたちが情報を共有し警戒のため警備を強化する話し合いをした数日後、東の森・西の坑道に異変が起きる。
東の森・エルフの郷
大きな木々に覆われ、大木の中を住処としているエルフの長の扉がコンコンコンと甲高いノック音が鳴る。
「誰じゃ。」
「はいはーい、こんにちはっ!ここがエルフの長老さんのお家で合ってる〜?」
「っ!!!!」
一目でわかるその異様な魔力を放つ少女が扉を開けて入ってくる。
「はいはい、何もしないでね〜。しても無駄だけどっ。」
「(くっ、見抜かれておるか。)何か用かの?お嬢さん。」
「きゃはははっ!単刀直入に言うね、オマエ達アタシの下僕になってくれない?」
「な、なにを!!<リオに若いのを連れてこの郷を離れるように伝えるんじゃ>」
そう念話にて隣の女エルフに指示を出す。
「<リオ様は今若い子たちを連れて巡回に出ているs>
」
そう言い切る前に女エルフの身体が突如血飛沫を撒き爆ぜる。
「ねぇ、バレてないとでも思ってるの?魔力の流れでバレバレなんだけど、余計なことしてタダで済むと思ってるってことはアタシのこと舐めてんでしょ?アンタ達に拒否権なんてないの、ただ首を縦に振るだけ、それだけしか出来ないってことを教えてあげようか?」
そしてその手をクイっとあげると爆ぜた血が手に集まり、その血をペロッと舐める。
「ん〜!やっぱり魔力の通った血は美味しいね!」
「貴様がその気ならこちらもそれ相応の対応をさせてもらおう!この儂が何十年も長としてここを治めて来たと思っておる!貴様ごとき悪魔なんぞに遅れを取ると思っておるのか!」
「ねぇ、族長さん。アタシねここに来る前にぜ〜んぶのお家回ってきたんだよね、この意味わかる?」
指と指を合わせた手をゆっくり挙げる。
「まさか!!!」
族長が外に出たと同時にパチンと指が鳴りそれと同時にそこらじゅうから悲鳴と血飛沫が上がる。
「きゃはははは!綺麗だったよねぇ。」
「な、なんて事だ。」
「大丈夫、安心して?全部は殺してないから。全部殺しちゃったら手駒が無くなっちゃうでしょ?それは困るもん。それでどうする?従う?まだ反抗する?」
「儂らは主にしたg」
「お爺様!これは一体何ようです!?」
「ん?」
「っ!!!貴様は悪魔か!貴様がこの事態を招いたのだな!許すまじ!!」
「よ、よせ!!」
「慈悲深き我に聖なる力が宿らん。切り裂く風」
鋭く光った風が少女の腕を抉る。
「ふーん。聖魔法。祈りの力を宿したって感じか。アタシの身体が傷付いたのなんてあの時以来かな。いいねぇ!アナタを見せしめにしてあげる!!ブラッティ・サクリファイス!」
「くあっ!!」
血が針の様に凝固し彼女の身体に刺さる。
「リップル!!」
「オマエは反抗し、多くの民を失った。そしてコイツはアタシを傷付けたから見せしめになった。傷を付けた褒美としてアタシの固有魔法を教えてあげる。アタシはね魂に干渉することが出来るの。それの派生として血液を操ることができる。そして今から面白いものを見せてあげるわ。魂に干渉するってことがどんなものなのかその目でとくと見ているがいい。」
倒れるリップルに手をかざす。すると身体が急に跳ねバキバキと音を鳴らし身体を変貌させていく。
少しすると人の形をした何かになった。
「ねぇ、気分はどう?」
「ア、アァァ、ウレシイデス。」
「おお!凄い!言葉が分かるんだ!初めてだよ!凄いね、きゃはははは!リップルって言うんだ、じゃあ名前は引き継いでリップルだね。」
「う、嘘だ。」
「ねぇ、族長さん。これはオマエの孫だったのかな?これで晴れてアタシの下僕になったんだよ。嬉しいでしょ?ちなみにさっき殺したやつらも作り変えてやったけど精々二足歩行にしかならなかったよ。眷属の補充も出来たし、オマエたちはどうする?」
「儂らはお主に従うとしよう。しかしなぜ儂らだったのか聞かせて欲しい。」
「理由?そんなの簡単だよ。少なからず精霊に恨みかあって使いやすそうだからだよ。ここは東の森の中でも端の方、森を管理しているのは精霊。オマエたちは領土拡大を目論んでいたそれにアタシが力を貸してあげただけだよ。」
「……。」
「そうだ、名前。忘れてたよ。アタシの名前は【ノエル】覚えておいてね。」
「かしこまりました。ノエル様。」
「きゃはははは!待っててね、精霊ちゃん。積年の恨みは必ず晴らしてやるから!!」
こうして、東の森ではエルフが血の悪魔ノエルの傘下に入り精霊に仇なす用意を始めるのであった。
西の坑道・ドワーフの街 坑道内
ガキィン、ガキィンと暗い洞窟内に金属音が鳴り響く。
「おい、ここの魔鉱石掘ってしまったらいよいよ底がつくぞ。」
「そうだけどよ、ここを掘らねぇと今日の稼ぎも出ねぇ。やっぱり精霊の持つ鉱石場を貰わねぇとどうにもなんねぇ!自分たちで魔力が使えるならこっちに寄越してくれてもいいのによ!!」
隣に置いてあったバケツを蹴飛ばすと壁に当たり、当たった場所がガラガラと崩れる。
「ん?こんなとこに横道があったのか!これは発見だ!王に知らせなければ!!お前行ってくれないか?」
「お、おう!任せとけ!!」
ーーー数十分後
「ここだな。行くぞっ!」
そう言い穴に入っていくのはドワーフの王 カイゼル・ドワルフとその配下たちのドワーフだった。
彼らはまだ知らなかった、そこに住まう悪の者たちの恐ろしさを。
「何もないではないか!飛んだ無駄足だったな!」
「そこに居るのはだれだ」
「む?声が聞こえる。どこからだ!!姿を見せろ!」
「クカカカ、小さき者よ。我の姿が見えんか?なら見せてやろう。」
震え上がるほどの魔力が流れた途端カイゼルの目に炎を纏った巨躯が映った。
「あ、あ、お前はなんだ!」
「声が震えておるぞ、小さき者よ。まぁよい、我は【バルゴス】貴様らの声聞こえておったぞ、採掘場なら我が確保してやろう。」
「そ、それは誠か!」
「あぁ、ただ条件がある。」
「条件だと!?申してみせよ!」
「確保する代わりに我に力を貸して欲しいのだ、精霊にはちょっとばかり因縁があってな。共に想いを果たそうではないか?」
「それくらいなら構わん。ならば契約しよう!我らはバルゴス殿に力を貸しバルゴス殿は我々に採掘場を明け渡す!それでよいか!」
「お、王様!ホントによろしいのですか?相手は得体の知れないものですぞ! 」
「この私が構わんと言っておるのだ!口答えするでないわ!」
「話が早くて結構!では契約成立だ。」
握手を交わすとカイゼルとその場にいるドワーフにも刻印が付き、バルゴスの口元が笑いに変わる。
「クカカカカ!バカにも程があろうて、小さき者よ!相手をよく見て見よ、我は邪炎の悪魔、バルゴスなり!」
「なっ!?悪魔だと!?契約は終わりだ!こんなのはなしだ!」
「クカカカカ!今更気付いても遅いわ!魔力もろくに扱えんとは片腹痛いのぉ、契約破棄の代償は貴様ら全ての命だ!種族を枯らしたくないのであれば黙って我に従え!!貴様らはもう従うしかないのだ諦めろ。」
「くっ!!」
「クカカカカ!これで準備は整った!精霊共よあの時の怨み我が主の積年の恨みを果たす!その時を待っておれ!!」
東の森
「きゃはははは!眷属もたーくさん手に入ったしあとは南のあの方が動くだけかな。西でもなんか動きがあったみたいだしとりあえず合図でも打ち上げておこうかな!!」
森から黒い光が上空に打ち上げられる。
南の人族の街
「■■■様、ノエル様の魔力です。あちらも動くみたいです。」
「そう、それならこちらも仕上げと行きましょうか。進軍なさい!!ロザリエ貴女は手筈通りに事を進めなさい。」
「分かりました。」
宝物塔最上部
「あれは、もうその時が来るのね。なら私もそろそろ動かないとまずそうね。」
拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございます。
次回の展開もお楽しみ頂けるように頑張りますので
これからも応援のほどよろしくお願いします。




